うちの施設チョウ。年齢は少なくとも10歳以上。メス尻尾が長いので柴とコーギーのミックスだろうと思う。
2011年9月、福島の保護センターから連れて来た。震災後、赤ちゃんを産み育てるために野山をかけめぐり、虫やネズミなどを必死にとらえて食べた。その頃の癖がどうしても抜けきれなくて、セミの抜け殻くらいは私もカンボジアでタランチェランの唐揚げを食ったので、「おいしそうじゃん!」と思えるが、この写真を撮った直ぐ後に白い蝶々が飛んできて、こちらは「メルヘンチックだなあ!」と思ったのに、こいつ目だけで追っていたと思えば、さっと宙を飛んで。蝶々は口の端でバタバタと断末魔のあがき…。
今ではおやつを投げても百発百中、落下する。おばあちゃんになった。そんなチョウちゃんは、全く仕事人で甘えもしないし、吠えることもない。自分の役目を瞬時に悟って、じいちゃんたちの見守りをしてくれる。仮放免で私が保証人になった難民を夜勤として手伝わせた時に、一人のじいちゃんがベッドから滑り落ちた。気が付いたのはチョウちゃんだけで、仮眠ベッドで寝ている夜勤者を「ワンワン!」とゆすって起こすのだが、全く起きない。仕方なく、各部屋をまわって元気そうなじいちゃんを起こして、3人がかりでベッドに戻したのだそうだ。その時の夜勤者は精神科に通っており、睡眠薬を飲んで寝ていた。チョウちゃんと違って仕事人の自覚はなかった。
またある時は小さな犬を連れて来たスタッフがいたが、その犬があまりにもよく吠えるので「チョウちゃん、こいつを躾けろ!」と怒鳴ったら、なんとチョウちゃんは自分のおやつをくわえてその子の前にポンと置く。「チョウちゃん、何してるの。あんたのだよ、」と拾ってチョウちゃんに渡すと、「余計な事すな。」とにらまれて。ああ、チョウは躾けするにはまず手なずけないとって、餌付けしてるんだなって、やっと気が付いた。
「ごめんくださーい。」って訪問者がくると、「ハイハイ。」てな感じで真っ先に玄関にでる。足の臭いをかいでこいつはいいやつだ。となると口角をあげてお愛想笑いをする。変な奴がくると、吠えたこともないのが、「うう…。」と威嚇する。ホームレスか只の酔っぱらいか、ホームレスでも保護して医療に繋げた方がいいか、ほおっておいた方がいいかすらもチョウちゃんはわかる。直ちに保護が必要とチョウちゃんが判断すれば、いくらリードを引っ張ってもその人の前に座って動かない。その判断に外れはない。
犬は元来仕事師である。兵庫で捜索中に現場を離れて、行方不明になった警察犬が再び仕事に戻れるかどうか難しいという。ネットでは普通の家庭犬に戻してやれと言う意見が多い。こればかりは本人(?)に聞いてみなければわからない。うちのチョウちゃんは甘えることは好きではない。仕事をして褒められることが何より大好物である。
だから、毎日うちの施設チョウは8時半ぴったりに出社して、寮全体の見回りをしないと気が済まない。ただ、ゴキブリを見つけるとパッと飛びついて食べるのだけはいい加減やめてほしい。