本の捉え方は幾通りもありますが、私にとって、この本の一貫したテーマは「やさしさ」である、こう思います。著者の人生は普通の人の何倍もの苦労や壁があることが本に描かれていました。それらにぶつかり、乗り越えてことで、人としてのやさしさを獲得していきます。そのやさしさが新たな壁や悲しみを乗り越える原動力となります。
日本人や在日朝鮮人など関係なく指導した阪井先生の生き方は、人としてどうあるべきかを私に訴えかけました。人が自立して生きていけるように正面から指導すること、教育者として芯が通っています。そしてその芯をもつ人こそが、真のやさしさを併せ持つのであるということを教えてくれました。
だから、最後に著者は、生きることの意味は、人のやさしさを探求していく歩みだったと述べています。この言葉は私の心に深く残りました。著者の述べるやさしさは、著者の父がもっていたものだと気付かされます。その父は1945年8月16日も何事もなかったかのように、仕事に出かけます。あの戦争を誰よりも憎んでいた父の内面の勝利です。やさしさの勝利です。
やさしさは何者にも代えがたい強さを持っていると感じさせる一冊です。