★1977年 ポルシェ928 テレホンダイヤル 悲運の旗艦 ~ 自動車カタログ棚から 250 | ポルシェ356Aカレラ

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昨日、今日と東京は寒いです。漸く本格的な冬がやって来たようです。
さて、今回は自動車カタログ棚シリーズの記念すべき?250回目。2012年6月から2年半余りに亘って続けてきたこのシリーズ、今回を最終回とするのか果たして251回以降も続けるかは今のところ未定です。今後は玩具・模型カタログの記事をメインにしていくかもしれません。
250回分の記事というと、紙媒体にすれば1記事1頁として250頁、1記事見開き2頁として500頁の立派な本が出来る計算になります。もっともWeb上でいつでも自由に無料で閲覧出来る内容をわざわざ書籍化しても需要は殆どないかもしれません。記事にしていない車種・カタログは勿論まだまだ沢山ありますが、実はどうしてもアップしておきたい車種は段々減ってきています。
今回は節目の250回目ということで、例によって私の一番好きなメイクスであるポルシェをピックアップします☆
 



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★1977年(昭和52年)3月10日、ジュネーブショーで世界中の自動車関係者注目の元にポルシェ928はデビューした(デリバリーは1977年秋より)。1964年に生産が開始され既に生産14年目となっていた911に代わる、来たるべき新しい時代のポルシェの旗艦となるべく928はデビューした。928は、356および911で築きあげた伝統の空冷リアエンジンではなく、一足早く前年1976年にデビューしたエントリーモデル・ポルシェ924と同様に水冷フロントエンジン方式が採られた。結局、928が911のユーザーを取り込むことは出来ないまま長期に亘る生産を終了し、911の世代交代がその後も続けられたことは周知のとおりである。


★ポルシェ928の開発が開始されたのは911の販売が北米を中心に右肩上がりに伸びていた1971年(昭和46年)末であった。
928の開発に当って新しい時代のスポーツカー像として、単に高性能であるだけでなく高い安全性と快適性をも兼ね備えることがテーマとされた。更に当時世界中で実施されつつあった排ガスを含む様々な規制をクリアすることも絶対条件とされた。高性能でありながら同時に多くのハードルをクリアするため、ポルシェ技術陣は新開発の4.5L水冷V8エンジンの採用、そして、エンジンおよびクラッチをフロント、トランスミッションとデフをリアにレイアウトするトランスアクスル方式を選択した。水冷エンジンは911のような空冷エンジンに比べて遥かに静粛性に優れエアコンの効果も楽に得ることが出来る上、大排気量とした場合でもエンジン本体を小さくコンパクトに製造できるといった利点を持っていた。また、エンジンをフロントに配置することは事故時の耐衝撃性の面でも有利であった。そして、前後の重量配分を理想的な50対50に出来るトランスアクスル方式では、リアエンジン車以上に優れた操縦性を生み出すことも出来た。


★ポルシェ928の技術的なトピックとしては、リアサスペンションのロアアームの取り付け方に工夫をこらした「バイザッハ・アクスル」を採用したことが挙げられる。
通常、コーナリング中に急にアクセルを放すとテールスライドを起こしスピンに至ることもあるが、「バイザッハ・アクスル」ではコーナリング中のアクセル操作による操縦性の変化を微妙に修正し安全にコーナーを回りきることが出来た。アクセルを放しても全く軌跡に変化が起きないのでは逆に危険なため、人が制御しやすい程度のレベルに設定されていた。また、北米安全基準を満たしたボディ一体型のバンパーは、時速20kmのスピードで衝突してもその力を吸収して車体を傷めないばかりか、元通りに復元する機能を併せ持っていた。更に、エンジンを始めエンジンフードや左右ドア、フェンダーにはアルミニウムや軽合金がふんだんに使われ、車体の軽量化に貢献すると共に車体の高い防錆性をも併せ持っていた。
そして、928の最大の美点はデビューから37年を経た2014年現在の目で見てもけっして古臭くなく十分に美しいボディデザインにあった。全体に丸味を帯び、卵型のスムースな曲面で構成された空力的にも優れたボディデザインである。ぬめっとしてナマズのようで薄らデカいというイメージのあった928だが、車体が大型化した現代の標準では特別大きなクルマでもなくなった。928の全長4445㎜は現行の911(991型)の4500mmより55mm小さく、全幅は大差ない1836㎜(現行911は1810㎜)である。


★928は1977年秋から1995年にかけて生産販売され、ポルシェ356の1948年~1965年とほぼ同じ18年という長寿車であった。
928、924、944、968といったフロントエンジン・ポルシェは一般に人気がなく、928の場合では新車価格の10分の1以下、年式と程度によっては50万円を切るようなケースもあるようだ。2014年現在、928は最も新しくても約20年落ちということになるが、もし安価で購入したとしても購入金額以上の整備費用がかかるのが普通だと言われる。もし928が激安で手に入るなら走らせなくても庭などにオブジェとして置いて楽しむのもいいような気もする。まあ、しかし、クルマは走らせてこそ価値があるものでオブジェにしてしまってはクルマが可哀想だ。928でもモデル末期のパワフルで熟成された1990年代前半の928GTSで走行距離が少なく状態の良いワンオーナー車といった掘り出し物も中にはあるらしい。外観的にはテレホンダイヤルホイールを履きリアスポイラーの付かない初期の928が一番好きなのだけれど初期車両はクォリティが低くトラブルが頻発したと言われることもあり、現代の路上で実際に乗るならばモデル末期のパワフルな928GTSがベストであることは間違いなさそうだ。


【ポルシェ928の主な変遷】
1977年3月 ジュネーブ・ショーにてデビュー
1977年秋 デリバリー開始
1979年秋 928S(300ps)
1984年 928S2(リアスポイラー装着)
1985年 928S DOHC化・排気量アップ(4957cc・292ps)
1987年 928S4(320ps)
1989年 928S4GT
1990年 928GT(330ps)
1992年 928GTS(5397cc・340ps)・全幅45mm拡大
1995年 生産終了


【主要スペック】 1978年 ポルシェ928  (1978 porsche 928)
全長4,445mm・全幅1,835mm・全高1,315mm・ホイールベース2,500mm・車重1540kg・FR・水冷90°V型8気筒SOHC4474cc・最高出力230HP/5200rpm(DIN)・最大トルク35.0 mkg/3600rpm(DIN)・圧縮比8.5:1。変速機3速フロアAT・乗車定員4名(2+2)・最小回転半径5.5m(車体)・実用燃費4.35km/L・定速燃費100lm/h時8.26lm/L燃料タンク容量86L・0‐400m:15.4秒・0-100km/h:8.27秒・最高速度230km/h・三和自動車輸入販売価格1230万円(5速MT1210万円)  ※一部、カーグラフィック誌1978年5月号掲載ロードテスト・データ



●カーグラフィック誌 1978年5月号 表紙
日本に上陸したばかりの928(ATおよび5速MT)のロードテスト掲載。このあたりの年代以降のカーグラは分厚く嵩張って手放す人が多いのか市場在庫が多く中古ショップや古書店では100円均一コーナーにあることも多い。
カーグラ



●ポルシェ広報誌「クリストフォーラス」(christophorus)1980年6月号
表紙・裏表紙は前年秋デビューの928S
クリストフォーラス表紙

中頁より: 928+テニス
クリストフォーラス・テニス



●1992年2月 ポルシェ928GTS 展示会案内葉書
1992年2月11日(祝)に行なわれた最後の928たる928GTSのミツワ目黒ショールームでの展示会の案内葉書。5396cc・350ps・最高速度275km・車両本体価格1430万円。この末期の熟成された928GTSが現在中古で購入するならベスト・チョイスとなるだろう。
各自動車メーカーのディーラーから届くこの手のダイレトメールや葉書の類を以前は何でも全て保存/保管していたのですが、文字通り紙屑の山のようになって収拾がつかなくなってきたため、TVの紙屑王決定戦などに出場したい気持ちがある訳でもないので、最近はポルシェのモノだけを保存し他のメーカーのものは処分することにしています。
GTS葉書



●1973年11月 928デザイン・スケッチ3案
1971年暮れの開発開始から2年後の73年秋時点では928にはこの3種類(上クーペ・中ワゴン・下ノッチバック)のデザイン案があり、最終的にクーペボディ案が採用されて3年半後の77年3月のジュネーブ・ショーでデビューした。
デザイン3案



●1977年 ポルシェ928 カタログ (縦28×横25cm・英文16頁)
末尾に1977の印字がある初期のカタログ。1977年3月のジュネーブショー・デビューから同年秋にデリバリーされるまでの期間に配布されたプレ・カタログかもしれない。
プレ表紙

【中頁から】
フロントV8エンジン
プレ(1)エンジン

プレ(2)フロント

928はリアビューが美しい。
プレ(3)リア

メーター周りとハンドルのチルト機構を備えた運転席周り。デザインは後の日本車にも影響を与えた。
プレ(4)全体がチルト運転席

透視図
プレ(5)透視図

スペック
プレ(6)スペック

裏表紙はリアビュー
プレ(7)裏表紙



●1977年 ポルシェ928 カタログ その2 (縦28×横25cm・英文16頁)
上掲のカタログと一見同じだが、表紙から「Introducing a redefinition of the sports car.」の文字が消え、中頁の文章も何故か大幅に差替えられている。どちらが先に発行されたものか不明。
プレ2表紙セカンド



●1977年 ポルシェ 総合カタログ (縦28×横25cm・英文8頁)
ポルシェの新しい旗艦として総合カタログ表紙の中央に登場した928。
77総合表紙

【中頁から】
77総合中頁



●1978年 ポルシェ928 本カタログ (縦28×横25cm・独文36頁+スペック4頁)
最初の928の本カタログ。表紙はテレホンダイヤル型ホイールのクローズアップ。
78表紙テレホンダイヤル



●1979年 ポルシェ928 本カタログ (縦28×横25cm・英文36頁+スペック・色見本6頁)
上掲の1978年版と殆ど同じ構成の本カタログ。カタログ付属のボディ色見本にはスタンダードカラーが赤・黄・白・黒・緑・青・茶・ベージュ・ガンメタ・薄紫の10色、更にスペシャルカラーが10色も出ている。
79表紙

【中頁から】
79中頁



●1981年 ポルシェ928・928S 本カタログ (縦28×横25cm・英文36頁)
4664cc300psの928Sを追加。
81英表紙

【中頁から】
81英(1)リアカップル

透視図
81英(2)透視図



●1981年 ポルシェ928・928S 本カタログ (縦28×横25cm・日本語20頁)
英文カタログを抜粋して作成された三和自動車発行の日本語版。
81日本語表紙

【中頁から】
928でスキー
81日本語中スキー



●1985年 ポルシェ928S 本カタログ (縦28×横25cm・日本語40頁)
三和自動車発行の日本語版。DOHC4957cc・292psに変更。最終頁には小さな各色の紙を貼りつけたボディ色見本が綴じ込まれたコストのかかったカタログ。
85表紙

【中頁から】
ワインレッドが美しい。
85(1)ワインレッド上下

85(2)リア



●1986年 ポルシェ928S 本カタログ (縦28×横25cm・日本語54頁)
三和自動車発行の日本語版。このカタログも小さな各色の紙を貼りつけたボディ色見本が綴じ込まれたコストのかかったカタログ。
86表紙

【中頁から】
86(1)中前俯瞰

86(2)リア

オプションのスキーキャリア
86(3)スキーキャリア・オプション



●1988年 ポルシェ928S4 本カタログ (縦28×横25cm・日本語32頁)
三和自動車発行の日本語版。320ps・最高速度270km/hにアップ。
88S4表紙

【中頁から】
88S4(1)フロント俯瞰

88S4(2)リア俯瞰

ライト・アップした928の表情
88S4(3)ライトアップ顔



●1990年 ポルシェ928S4/928GT 本カタログ (縦28×横25cm・日本語32頁)
三和自動車発行の日本語版。330ps・5速MTの928GTを追加。
90表紙

【中頁から】
5速MTの928GT
90(1)フロントGT

90(2)リアGT



●1992年 ポルシェ928GTS 本カタログ (A4判・日本語34頁)
三和自動車発行の日本語版。5397cc・340ps ・最高巡航速度275km/hとなった最終型。
92GTS表紙

【中頁から】
92(1)フロント

92(2)リア

V8・32バルブ5400cc340psエンジン
92(3)V8・32Vエンジン





★オマケ(その1): ダイヤペットG-88番 1/30スケール ポルシェ928
全長14.5cm。当時定価1600円。ダイキャスト製。スーパーカーブームとも重なりテレホンダイヤル・ホイール時代のポルシェ928の日本製モデルは多数ありましたが、その中で一番気に入っているのがこのダイヤペット。ボンネット・リアハッチ・ドアが全て開閉しヘッドライト上下可動とリアラゲッジスペースには赤い絨毯が敷かれドア内貼りも再現されています。大スケール故にダイキャストの重みもズッシリです。カラーは赤・シルバー・黒など。
ダイヤペット(1)

ダイヤペット(2)

フル開閉アクション
ダイヤペット(3)全開閉

ダイヤペット(4)



★オマケ(その2): 永大グリップテクニカ54番 1/28スケール ポルシェ928
全長15.5cm。当時定価1800円。ダイキャスト製。リアゲート以外全て開閉。上下するヘッドライト・レンズには1960年代のミニカーのようなダイヤカットガラスが奢られている。テレホンダイヤル・ホイールの表現はダイヤペットよりこちらの方がリアル。赤・シルバーの色違いの他、ノーマルの箱に「SKICAR」(スキーカー)のシールを箱に貼ってスキーをルーフに載せた仕様も少数市場に出た。
エーダイ(1)

エーダイ(2)

スキー積み仕様は箱右下に「SKICAR」のシール付
エーダイ(3)スキーカーシール貼



★オマケ(その3): トミカF53-1 1/63スケール ポルシェ928
全長7cm。当時定価240円。ダイキャスト製。CANON特注の白/赤、チューインガム入りトミニカ専用のシルバーなどもあった。
トミカ(1)

トミカ(2)

1978年9月発売のG-46グランプリ・スピードシューターセット(8台入り)に入っていた928ADAC仕様(右上のオレンジ色)。長年箱から出さずにダンボール箱の底に仕舞っておいたところ、何とADACの紺のタンポが箱の透明シートに転写されて薄れてきてしまった。
トミカ(3)ADAC右上



★オマケ(その4): トミカダンディ F16  1/43スケール ポルシェ928
全長10.2cm。当時定価850円。ダイキャスト製。ボンネット・リアハッチ・ドア開閉。
ダンディ(1)

ダンディ(2)

ダンディ(3)



★オマケ(その5): サクラ スーパーカーNo.15 1/43ポルシェ928警視庁パトカー
全長10.2cm。当時定価950円。ダイキャスト製。ボンネット・ドア開閉+ヘッドライト昇降アクション付。ノーマルの赤と黄色も発売された。このシリーズ、ソリッドに範をとったと言われるミウラなど傑作も多いが928はポッテリとし過ぎて出来はイマイチ。この928警視庁パトカーのような実車では存在しない色物は何故か妙にそそられます。
サクラ(1)

サクラ(2)

サクラ(3)



★オマケ(その6): 仏solido No.49 1/43 ポルシェ928
全長10cm。国内販売価格1500円。ダイキャスト製。このミニカーは大量に輸入されたせいか現在の絶版相場は1000円以下のようです。カラーバリエーションはシルバー、金茶等。
ソリド(1)

ソリド(2)

ソリド(3)



★オマケ(その7): ホットウィール&マッチボックス 1/60程度 ポルシェ928
どちらも全長7.2cm位の小スケールミニカー。HWはブリスター未開封だが台紙裏に1982の印字があり、何故か実車には存在しないターボのタンポ入り。マッチボックスは1980年代前半ジャパン・マッチボックス時代の日本語箱入りバージョン。どちらもバリエーションが沢山ありそうです。
HW&マッチ(1)

HW&マッチ(2)ターボ



★オマケ(その8): 田宮模型 1/20スケール ポルシェ928 プラモデル
当時定価1200円。1/20グランプリコレクションNo.3。キットNo.GC2003。モーターライズ・キット(FA-130モーター使用)。
タミヤ



★オマケ(その9): バンダイ 1/20スケール ポルシェ928 プラモデル
当時定価1000円。1/20スケール・スーパースポーツカーシリーズNo.1。キットNo.8019。これも時代を感じさせるモーターライズ・キット(RE-14モーター使用)。バンダイ製はムギ球でライト点灯のギミック付。
バンダイ



★オマケ(その10): ポルシェ928 テレビCM集
1980年代、北米のテレビCM集。アウディと提携していた時代のため、928以外にアウディも登場。