★1950年 日野ボンネットバスBH10型 剣道の面 ~ 自動車カタログ棚から 211 | ポルシェ356Aカレラ

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★★★今日からもう3月。早いですね。昨夜のエリック・クラプトン来日公演の続編はYoutubeアップに手間取っているのでもう暫くお待ちいただくことにして、今夜は自動車カタログ棚シリーズです。
幼い頃はバスもトラックもスポーツカーも何でも分け隔てなく好きだったのに大人になってバスやトラックは興味の対象外となってしまった、なんてクルマ好きの方もいるかもしれません。今回の記事は、そんな人にまたバスに興味を持っていただくきっかけになればと思います。




★現在、トヨタグループ16社の1つである日野自動車のルーツは、1910年(明治43年)の東京瓦斯工業株式会社の設立にまで遡る。
東京瓦斯工業は1913年(大正2年)には東京瓦斯電気工業株式会社(通称:瓦斯電=ガスデン)と改称し、瓦斯電は明治末から大正にかけて社名の通りガス・電気器具を中心に生産し、1918年(大正7年)には黎明期の国産自動車(軍用四トントラック)も生産した。1928年(昭和3年)には初の国産航空エンジン「神風(しんぷう)」(空冷星型7シリンダーエンジン)の開発も行った。1930年代に入り、1937年(昭和12年)には瓦斯電の自動車部は自動車工業株式会社および共同国産自動車株式会社と合併し東京自動車工業株式会社となり軍事向けに大型車両生産能力を強化しようとする国策により大型車の生産を始めた。この東京自動車工業は太平洋戦争勃発の1941年(昭和16年)には、ヂーゼル自動車工業(現・いすゞ自動車)と改称され、更に翌1942年(昭和17年)にはヂーゼル自動車工業の中の日野製造所(旧瓦斯電自動車部)が分離されて「日野重工業株式会社」が設立され軍用車を中心に製造した。
このヂーゼル自動車から日野重工業に分離した時点が現在の日野自動車の直接のルーツとも言えるが、日野製造所は瓦斯電出身の技術者を中心としていたことから日野自動車では瓦斯電を自社のルーツとしている。何れにしても現在のいすゞ自動車と日野自動車の2社は全く同じ企業であった時期があり、歴史を紐解けばルーツは同じとも言える。


★戦後、1946年(昭和21年)には 日野重工業は日野産業に改称され、軍需から民需へ転換をしてディーゼルエンジンおよび終戦直後の日本の風物詩とも言えるトレーラー式の大型バス/トラックの生産を開始した。
1948(昭和23年)には、日野ヂーゼル工業株式会社に改称し、同時に販売部門を独立させ「日野ヂーゼル販売」を設立した。そして、終戦から5年目の1950年(昭和25年)に戦後の日野大型車のベストセラーとなった今回ご紹介する単体のBH型ボンネットバス(およびTH型ボンネットトラック)を発売した。その後、1964年(昭和39年)まで15年間に亘り製造されたBH型ボンネットバスはその個性的な剣道の面を彷彿とさせるフロントデザインにより多くの人の記憶に残るバスの1台となった。


★ライセンス生産された日野ルノー(第153回記事参照)がPA55・PA56・PA57~と年式毎に改良を重ね型式名称を変えたのと同様に日野BH型ボンネットバスも1950年(昭和25年)にデビューしたホイールベース5000mm・全長9400mmの最初のBH10型(新設計DS10型110psエンジン搭載)に始まり、翌1951年(昭和26年)にはホイールベース4500mm・全長9100mmに縮めた短尺のBA10型、1952年(昭和27年)にリアオーバーハングを延長し全長9900mmとしたBH11型、1955年(昭和30年)にDS12型125psエンジンを搭載したBH12型、1956年(昭和31年)には全長9950mm・DS30型150psエンジン搭載のBH13型、1957年(昭和32年)に小改良したBH14型、1960年秋にはDS50型155psエンジンを搭載した最後のBH15型と改良を重ね型式名称を変えて15年間製造された。
なお、ショートホイールベースの日野BA型ボンネットバスは、いすゞBX型のショートホイールベース車に市場で太刀打ち出来ず、日野のボンネットバスの販売の主流は堂々とした大型車BH型であった。



【現存車両】
廃車体を除く日野ボンネットバスの現存車両は以下4台の模様。

(1)福山自動車時計博物館 1958年日野BA14型 短尺車
東浦自動車工業製ボディ。元土佐電気鉄道の廃車体をレストアした車両。2006年にレストア完成後、吉田拓郎 嬬恋コンサートPR用?のカラーリングにされた(特注ミニカーも発売)。

(2)福山自動車時計博物館 1961年日野BH15型
帝国自動車工業製ボディ。元羽後交通の車両を2010年にレストア。

(3)NPOバス保存会岩手県交通 1964年日野BH15型
金沢産業製ボディ。元岩手県交通の車両。「弁慶号」として復活するも2007年3月にナンバーが切れ現在はNPOバス保存会が保存。

(4)日野オートプラザ 1966年日野BH15型
帝国自動車工業製ボディ。元上毛電鉄の車両を日野自動車が引き取り保存。上毛電鉄への納車は1966年とされているが、日野BHの生産は1964年に終了したことになっているのでシャーシ製造の2年後に前後2ドア付ワンマンボディを上毛電鉄向けに架装か。上毛電鉄が1988~93年に復活運転した後、現在はカタログカラーに塗られて保存。



【主要スペック】 1950年 日野ボンネットバス (BH10型)
全長9400mm・全幅2400mm・全高2760mm・ホイールベース5000mm・車重6100kg・DS10型水冷4サイクル6気筒7014cc(428cu.in)・最高出力110ps/2200rpm・最大トルク39kgm/1200rpm・変速機4速フロアMT・乗車定員ロマンスシート53名(ロングシート65名)・電装系12V・推奨標準速度36km/h・最高速度70km/h 



●1950年日野BH10型ボンネットバス 「東京都交通局」 (富士重工業保存写真)
富士重工都営写真


●1950年日野ヂーゼル工業 総合カタログ (縦21×横14cm・3つ折6面)
表紙はデビューしたばかりのBH10型ボンネットバス
小判表紙
右上にBH10型バス、右下にトレーラー式トロリーバス、左側にはトレーラーバス/トラックも掲載されている。
小判中(1)トレーラー他
新設計のDS10型110psエンジン
小判中(2)エンジン
裏面: 1950年 日野各車両のスペック
小判中(3)スペック


●1950年日野デーゼルトラック&バス カタログ (縦28×横19.5cm・3つ折6面)
絵本「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」を彷彿させる非常に魅力的な表紙画。
50年カラー表紙
中頁から
50年カラー(1)中サイドビュー
シャーシ
50年カラー(2)シャーシ
スペック&図面 (BH10型)
50年カラー(3)スペック1
図面の上に改訂されたスペック(全長が9300mmから9400mmに車重が6000kgから6100kgにエンジン出力が105psから110ps等へ修正)が貼ってある。
50年カラー(4)スペック2


●1952年? 日野BH11型・BH21型バス 英文カタログ (A4判・2つ折4面)
池上駅行の表紙のBHは都営バスのようだ。
53年英文コピー表紙


●1953年? 日野総合英文カタログ (A4判・24頁)
中頁にはBH11型ボンネットバスと併せて6本髭の最初期の日野ルノー4CVが掲載されているので1953年の発行と思われる。
54年英文表紙
中頁から: BH11型
54年英文(2)中スペック
54年英文(1)中写真



●1955年 日野BH12型ボンネットバス 専用カタログ・・・・・残念ながら手元のカタログ棚にありませんでした。

 
●1956年 日野BH13型ボンネットバス 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
56年表紙
中頁から
56年1中
56年2中
図面(BH13型)
56年3中図面
裏面スペック: このBH13型ではDS30型150psエンジンに換装された。)
56年4中スペック


●1958年?日野BH14型ボンネットバス 専用カタログ (縦30×横23.5cm・2つ折4面)
裏面に日野ヂーゼル工業の印字があるので1957年ないし1958年の発行。この頃から日野の大型車のカタログには左側に「HINO DIESEL」(1959年以降はHINO MOTORS)の印字の入った耳が付くようになった。
58年表紙
中頁から
58年1中
58年2中
ダッシュボードはセンターメーター
58年3中センターメーター
客室(ロマンスシート)
58年4中客席
図面(BH14型)
58年5中図面
スペック (BH14型)
58年6中スペック


1959年8月 日野BH14型ボンネットバス 専用カタログ (縦30×横23cm・2つ折4面)
日野ヂーゼル工業は1959年(昭和34年)に日野自動車と改称され、このカタログでは裏面の印字が日野自動車に変わっている。
59年表紙
表紙と裏表紙とで1台のBH14が現れる。
59年表紙・裏表紙
中頁から
59年中頁


●1960年11月 日野BH15型ボンネットバス 専用カタログ (縦30×横22cm・2つ折4面)
日野ボンネットバスの最終BH15型
60年表紙
中頁から
60年中(1)
裏面スペック (BH15型)
60年中(2)裏スペック





★オマケ(その1): 京商1/80スケール 1959年 日野BH14型ディーゼルバス
2000年発売製品。コールドキャスト製。当時定価:税抜3800円。日本型HOゲージ16番の鉄道模型レイアウトに使えるサイズ。
京商(1)
京商(2)
京商(3)


★オマケ(その2): 富士急行特注 1/80 1961年 日野BH15型ボンネットバス
2003年富士急特注製品。コールドキャスト製。アドウィング製造。当時定価:税込5500円。「富士宮駅」の行き先表示がそそります。
富士急(1)
富士急(2)
富士急(3)


★オマケ(その3): アシェットコレクション 1/72スケール 1966年日野BH15型ボンネットバス「上毛電鉄」
書店売りの「日本のバスコレクション」第3弾の2012年11月21日号。定価1990円。オマケ1・2と異なり室内まで造り込まれた、日野BHのミニカーの決定版と言えるモデル。出来の良さを考慮すれば2000円を切る価格はバーゲンプライスでは。
上毛電鉄(1)
上毛電鉄(2)
上毛電鉄(3)
上毛電鉄(4)


★オマケ(その4): 福山自動車時計博物館 1961年式日野BH15型ボンネットバス試乗会 動画
バスが生き物のように見える動画です。