★1966年 130セドリックバン救急車  謎の緊急車両 ~ 自動車カタログ棚から 158 | ポルシェ356Aカレラ

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★堂々とした風格を持ったアメリカンスタイルの初代セドリックは5年半に亘り生産された後、1965年(昭和40年)10月にピニンファリーナ・デザインの130系2代目セドリックにフルモデルチェンジした。
フローイングラインと呼ばれた2代目410系ブルーバードとも似た前後に下降するラインや、サイドのキャラクターラインなどピニンファリーナのイタリアンデザインは奇をてらわずオーソドックスであることが売りとなる国産高級車としては個性的に過ぎたためセールス的には苦戦を強いられ、モデルライフ中はオリジナルデザインの個性を排除するようなマイナーチェンジを繰り返した。1968年(昭和43年)9月のビッグマイナーチェンジに至っては初期型とは最早別のクルマに見える程の変貌を遂げた。


★今回ご紹介するカタログは130系2代目セドリックのセダンではなくライトバン、それも救急車のもの。
1965年10月にデビューした初期の130系バンはセダンのスタンダードに準じたフロントグリルに大き目の正方形テールライトを持ち、リアゲート開口部はテールライトの為に狭められているのが特徴だった。1966年(昭和41年)10月のマイナーチェンジでフロントグリルがセダンの新しいスタンダードに準じたものに変更され、リアゲート開口部を拡げるためテールライトは左右幅を狭くして左右方向に若干小型化された。しかし、この救急車ではフロントグリルは1966年10月マイナー後のバンと同じものにも係わらずテールライトは初期型バンのままでテールゲートの開口部も狭くなっており、初期型テールとマイナー後のフロントという年式違いを取り混ぜたような不思議なディテールを持っています。このフロントグリルとテールの年式的ミスマッチはカタログ掲載の写真のみならず掲載された図面まで同じディテールなので、過渡期的なクルマなのか果たしてどういう経緯でこのクルマが生まれたのかは謎です。


★自動車カタログを集めている人は少なく見ても日本全国に数千人、新車購入時に比較検討のため貰ったカタログを長年捨てずに持っているような人まで含めればちょっと想像がつかないくらいの人数になるはず。
自動車カタログの中で入手に苦労するのは、パトカー、救急車、消防車、タクシー、教習車といった一般人を対象には売られていない特殊なクルマのもの。こういった車種は元々、ディーラーでは一般に殆ど配布されておらず、パトカーなどになると現行のカタログでさえ入手は絶望的に困難です。それが、30年、40年、50年と時を経ると現存しているものは好きな人の手元に納まってしまい、これまた入手は輪をかけて難しくなります。普通に考えると戦前など古い時代のものほどカタログの入手が難しいと思われがちですが、確かに一般に古いものほど残っているモノの数は少ないのですが、年代的な人気ということでは戦前より1950年代や1960年代、最近では1970年代あたりのモノの方が遥かに人気があります。人気=市場価値となり、戦前の物凄く古いカタログだから市場価値も高いということには必ずしもならないのです。
そんな自動車カタログコレクションを取り巻く状況の中で、今回ご紹介する130系2代目セドリックバン救急車のカタログは1枚物のペラペラのカタログですが、元々一般に配布されたカタログではないため、恐らく現在あまり残っていない貴重品の部類に入るだろうと思います。


★本シリーズ71回目(2012年10月14日)の初代プレジデントの記事の中で触れた、私が子供の頃に毎朝初代プレジテントが迎えに来ていた近所の国鉄の工事局長をされていた大きな御屋敷の御主人が亡くなり、お子さん達は独立して各々別に家を持っているので遺産相続のため土地が売却されて御屋敷が先日取り壊されたのです。
御主人の書斎には物凄い量の鉄道関係書籍と資料、特に国鉄車輌や関係施設の図面類などが山のようにあるという話を聞いていたので一度拝見したいと思っていました。それが、何とほんの3日位で大きな家も庭も跡形もなく取り壊されて更地となり、家の中の本や書類はどうされたのでしょうかと聞いたら何と重機で家の中のモノも全て一気に取り壊して家財もろともゴミとしてダンプに積んで持っていったよと言うではありませんか。御家族は皆鉄道には全く関心がなく御主人の持ち物の価値はまるで判らなかったのです
家族がいてもそんなことになるのに私は家族もいない独り身ですので、現在持っているカタログやモデルカーも私が死んだら重機が来て家ごと取り壊してゴミとなる運命かもしれません。というより、人見知りで友達が少なく近所付き合いも殆どありませんので、私が死んでも半年とか1年とか長期に亘って発見もされずミイラ化した遺体で発見されるといった可能性も大いにあるでしょう。そうならないためには、私の頭がしっかりしている内に大切にしてくださる方やトヨタ博物館のような恒久的な施設に持ち物をお譲りするしかないかなと思っています。自動車歴史研究の第一人者だった五十嵐平達氏は氏自身が顧問を務めたトヨタ博物館に全ての自動車関連の持ちモノを寄贈されたことは有名です。何れにしてもモノは人より遥かに長生きしますから、モノの命まで私の命と一緒に奪い去りたくはないのです。。


【主要スペック】 1966年ニッサン セドリック B級救急自動車 (型式VP130)
全長4690mm・全幅1690mm・全高1640mm(赤色灯含む1870mm)・ホイールベース2690mm・車重1530kg・FR・J20型水冷6気筒4サイクルOHV1973cc・最高出力100ps/5200rpm・最大トルク15.5kgm/3600rpm・変速機4速コラムMT・乗車定員5名・最高速145km/h・主要付属品:人口蘇生器(ミニットマン)、担架、消火器、サーチライト・販売価格:不明


●1966年 ニッサン セドリックVP130 B級救急自動車 カタログ(A4判・両面1枚)
フロントグリルは1966年10月マイナーチェンジ後のスタンダードのもの。赤色等を除く全高がノーマルのバンより17cm高められた救急車専用ボディ。初代クラウンベースのマスターラインの時代からライトバンタイプの救急車のシェアはトヨタが圧倒的だったので、この130セドリックバンベースの救急車の実車は非常に少なかったと思われます(実働中の写真が発見出来ません)。
$1959PORSCHE356Aのブログ-救急車(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-救急車(2)全景
フロントグリルはマイナー後なのに後部はテールライトが大きくテールゲートの開口部が狭い1965年10月デビュー時の初期タイプ。リクライニングする左側リアシートは「軽症患者用」と記載されている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-救急車(3)リアゲート軽傷患者
2000cc/100psエンジン
$1959PORSCHE356Aのブログ-救急車(4)エンジン
奇妙なディテールを持つ図面
$1959PORSCHE356Aのブログ-救急車(5)図面
スペック掲載箇所。右下に日産自動車株式会社直納部と印字があるので通常の日産ディーラーを介しての販売はされなかったようだ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-救急車(6)スペック


●1965年10月 ニッサン セドリックバン 本カタログ(A4判・8頁)
最初の130バンは初期セダンのスタンダードと同じこのフロントグリル
$1959PORSCHE356Aのブログ-65バン表紙
初期型は内側に丸いリフレクターが付いた大きなテールライトでテールゲートの開口部が狭い。
$1959PORSCHE356Aのブログ-65バンリア(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-65バンリア(2)


●1965年10月 ニッサン セドリックワゴン 本カタログ(A4判・8頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-65ワゴン表紙
最初の130ワゴン(5ナンバー車)はセダンのカスタム6と同じこのフロントグリル
$1959PORSCHE356Aのブログ-65ワゴン1中フロントグリル
バン同様にワゴンもテールゲート開口部が狭い
$1959PORSCHE356Aのブログ-65ワゴン2中テールゲート


●1966年10月 ニッサン セドリックバン 簡易カタログ(縦22.5×横22.5cm・3つ折)
$1959PORSCHE356Aのブログ-66バン表紙
フロントグリルは初めのマイチェン後のセダン・スタンダードと同じもの
$1959PORSCHE356Aのブログ-66バン1中フロントグリル
テールライトは丸いリフレクターの位置が内側から外側に変わりライト自体が左右に狭められ、テールゲートの開口部が拡げられた(1965年10月の初期型と比べるとリアウインド左右のハメ殺しの覗き窓が細くなっていることで違いがよく判ります)。
$1959PORSCHE356Aのブログ-66バン2中リアゲート1
$1959PORSCHE356Aのブログ-66バン3中リアゲート2


●1966年10月 ダットサン2000ワゴン(ニッサン セドリックワゴン)輸出向けカタログ (A4判・蘭語2つ折)
これは左ハンドル輸出向けのカタログだが国内向けワゴンもフロントグリルはこれと同じマイチェン後のセダン・カスタム6のものに替えられた。
$1959PORSCHE356Aのブログ-67オランダ語



★オマケ(その1): アンチモニーコレクション 1/43スケール 1966年ニッサン セドリックバン日本赤十字社
定価税込11550円。東銀座のアイアイアド・カンパニー発売。最近の製品。シリーズ名が示す通りアンチモニー製。2代目130セドリックのセダンは当時モノから最近のものまで山のようにミニカー等のモデルカーが出ているが、バンはこれが唯一という貴重な存在。日赤仕様は第5回ノスタルジック2デイズ限定品。箱には1966年と表記されているが1966年10月にマイナーチェンジされた年式的に言うと1967年型モデル。マイチェンでフロントグリルが変わりテールゲートが拡げられたディテールも表現されている。カタログの救急車はノーマルのバンよりルーフが17cm高くされているが、このミニカーはノーマルの130初期型バンに赤色灯を付けただけのモデル。患者輸送用ではなく血液輸送などに使用された車両だろう。よく見るとリアのラゲッジスペースには血液等を入れる赤十字マークの付いた箱が載せられている。
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★オマケ(その2): アンチモニーコレクション 1/43スケール 1965年ニッサンセドリックバン日産サービスカー
定価税込11550円。アンチモニー製。1965年10月デビュー130初期型バンベースの日産ロードサービスカー。これも箱には1965年と表記があるが年式的には1966年型。日産のトリコロールカラーが美しくイケてます。
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・1966年式「日産サービスカー」と1967年式「日本赤十字社」の前後ディテール比較
よく見るとミニカーでも目の粗い初期型と目の細かいマイチェン後のフロントグリルおよびテールライトの大きさやリアゲート開口部の広さが変えられている。
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