★1961年スバル360コマーシャル 富士重工初の四輪商用車 ~ 自動車カタログ棚から 141 | ポルシェ356Aカレラ

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★日本車史上に永遠に残るであろう名車スバル360のうち、フロントバンパーが2分割だった初期のスバル360については2012年9月15日のこの自動車カタログ棚シリーズ54回目でご紹介しているのですが、今回はスバル360のモデルライフ初期に登場したバリエーションの中で最もレアと言える「スバル360コマーシャル」(商用登録車)を御紹介します。

★今を遡ること55年前の1958年(昭和33年)3月3日に発表され、同年5月に発売されたスバル360は旧中島飛行機の技術者達が航空機と同レベルの注意を払って重量の低減と限られたスペースの最大利用を実現した世界に誇る軽自動車の傑作。デビュー翌年の1959年(昭和34年)8月にバリエーションとしてルーフ全体を開閉式のキャンバストップとしたコンバーチブルがデビューしたあと、同年10月の第6回東京モーターショーに後席シートを取り払い荷物置き場としてルーフ後半のみを開閉式キャンバストップとした貨客両用のコマーシャルが展示され同年1959年12月より正式なバリエーションとして販売が開始された。
コマーシャルで特筆すべきは荷物の出し入れの便のため、左右のリアサイドウインドを窓枠パネルごと外側へ可倒式としたこと。ルーフを閉じて外側に倒したリアサイドウインドを元に戻せば、基本的なプロポーションは普通のスバル360と変わらない。リアルーフが開くため天地方向に限りなく嵩張る荷物も積めるということをウリとして、カタログでは表紙などにルーフより高くダンボールを山積みした写真が使われている。しかし、これでは雨の日など荷物は濡れるし、トラックと違い荷物置き場との仕切りがないので前席にも雨が入ってしまい商用車としての実用性は低かっただろう。また、リアサイドウインドが可倒式とはいえ、荷室の後ろにはエンジンもあり荷物の積み下ろしは決して楽ではなく、最大積載量も150kgと少なかった。コマーシャルは、スバル360のボディを使用して市場拡大のために少々安易に急造された折衷型商用車と言えた。

★スバル360のような軽であっても、まだまだ庶民には自動車が高嶺の花だった時代のこと、普段は商用に使うとしても休日には家族を乗せてドライブに行きたくなるのが人情というもの。2人乗りで後席には人が乗れないのでは子供を乗せて一家でドライブということも出来ないため、コマーシャルはマイカーとしても不向きだった。1961年(昭和36年)2月に初代スバル・サンバー(K151型:この自動車カタログ棚シリーズ90回目でご紹介)がデビューすると荷物積載を重視する商用車としての需要はサンバーに移行し、1963年(昭和38年)8月にスバル360を本格的なバンボディに変更した「カスタム」がデビューすると共にコマーシャルの生産は中止された。生産されたコマーシャルの大半はヘッドライトが所謂デメキンと言われる初期タイプで、1962年(昭和37年)9月以降の最終1963年型のみノーマルのスバル360同様にヘッドライトが庇(ひさし)付の近代的な顔つきとなった。商業的に失敗したコマーシャルは元々の生産台数が少なく、現存車両も数台程度で稀に旧車市場に出ると超高値で取引きされている。


●1962年9月発行 スバル360カタログのコマーシャル掲載部分
ヘッドライトに庇が付いたコマーシャルの最終型。ルーフを開いて天地方向に嵩張る荷物が積めても、これでは雨の日の配達などには使えなかったはず。
1959PORSCHE356Aのブログ-62年(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-62年(3)ボケ走行写真
リアシートを取り払って生まれた荷物スペース
$1959PORSCHE356Aのブログ-62年(2)荷室写真


【主要スペック】 1961年スバル360コマーシャル (K141型)
全長2995㎜・全幅1300㎜・全高1370㎜・ホイールベース1800㎜・車重402kg・RR・強制空冷2サイクル直列2気筒356cc・最高出力18ps/4700rpm・最大トルク3.2kgm/3200rpm・変速機3速MT・電装系12V・乗車定員2名・最大積載量150kg・燃費27km/L・最高速85km/h・販売価格35万円



●1959年12月発行スバル360コマーシャル 専用カタログ (縦21×横16cm・2つ折4頁)
フロントバンパー2分割時代の最初期型コマーシャル
$1959PORSCHE356Aのブログ-59年表紙
中頁より
$1959PORSCHE356Aのブログ-59年1中
$1959PORSCHE356Aのブログ-59年2中
$1959PORSCHE356Aのブログ-59年3中
裏面スペック
$1959PORSCHE356Aのブログ-59年4中スペック(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-59年5中スペック(2)


●1960年10月発行 スバル360コマーシャル 専用カタログ(縦20×横22cm・2つ折4頁)
フロントバンパーが2分割から1本に変更されたコマーシャル
$1959PORSCHE356Aのブログ-60年表紙
中頁より
$1959PORSCHE356Aのブログ-60年1中
$1959PORSCHE356Aのブログ-60年2中
$1959PORSCHE356Aのブログ-60年3中
$1959PORSCHE356Aのブログ-60年4中
裏面スペック
$1959PORSCHE356Aのブログ-60年5中スペック


●1961年3月発行 スバル360 総合カタログより
$1959PORSCHE356Aのブログ-61年(1)抜粋
標準ボディカラーはスノーグリーン1色のみ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-61年(2)抜粋


★オマケ(その1): ハセガワ製プラモデル改造 1/24スケール 1961年スバル360コマーシャル
全長約12cm。モデル製作:プロモデラー山崎和男氏。
静岡県焼津市の長谷川製作所(現ハセガワ)製のプラモデルを元に大変な手間をかけて初期型コマーシャルの富士重工広報車両に改造した作品。左右のリアサイドウインドをヒンジを付けて実車同様に可倒式に製作してあるのが驚異的。博物館の展示模型のような佇まい。これはネコ・パブリッシングの雑誌モデル・カーズNo.45(1999年4月号)にも掲載された作品で縁あって私の手元に来た。頑丈なダイキャストミニカーとは違って繊細な造りのプラモデル作品は落とすとバラバラに分解してしまうので保存には細心の注意を要するのが難点。製作から既に14年程経過しているが経年劣化は見られない。私が生きている間に壊さないように丁寧に保管して後世に引き継ぎたい逸品。この作品の欠点というとリア左下の積載量を表した実車同様のシールの文字が実車の150kgでなく250kgと誤記されていることくらいだろうか。
$1959PORSCHE356Aのブログ-長谷川(1)
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左右リアタイヤハウス上のパネルにある小さな黒点は汚れではなく、リアサイドウインドを外側に倒した際にボディを傷つけないためのゴム性緩衝材
$1959PORSCHE356Aのブログ-長谷川(4)
$1959PORSCHE356Aのブログ-長谷川(5)
リアサイドの三角のエアダクトは実車同様、ノーマルとは異なるコマーシャル特有のメッシュ柄が再現されている
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シンプルな運転席周りも忠実に再現されている
$1959PORSCHE356Aのブログ-長谷川(8)



★オマケ(その2): 1968年スバル360北米テレビCM集 (Subaru360 of America US Market Commercials)
動画がないのはちょっと寂しいのでコマーシャルではないですが、スバル360モデル末期の輸出用左ハンドル車のレアな北米向けテレビCM集。CMにもバリエーションがあり、北米では結構本気で販売していたことが伺えます。



※後で気づいたのですが、この自動車カタログ棚シリーズはこれが141回、取り上げた車種スバル360コマーシャルの富士重工・車両形式がK141で、全くの偶然なのですが141で一致していました。偶然にしては出来過ぎの感じです。何かいいことあるのかな。