★1949年 日野-東芝 トロリーバス 東京都営トロバス物語 ~ 自動車カタログ棚から 105 | ポルシェ356Aカレラ

ポルシェ356Aカレラ

★20世紀の自動車カタログ、鉄道車輛カタログ、玩具・模型カタログ、ビートルズ、ショパン、ヴィンテージ・ポルシェ、草軽電鉄 etc


トロリーバス (trolley bus) は無軌条電車と呼ばれ日本の法律上は鉄道事業法が適用される鉄道車両とされている。構造的には電車のように架線から電力を取り出しモーターを回して動くが、ゴムタイヤにより線路ではなく一般道路を走行し外観上も自動車であるバスと基本的に変わらない。構造的にはバスと電車の中間の合いの子とも言えるが、姿形は電車よりも遥かにバスに近い。そこで、今回の自動車カタログ棚からはトロリーバスのお話。

★トロリーバスの歴史 は古く、世界最初のトロリーバスは1882年(明治15年)4月29日にドイツの発明家ヴェルナー・フォン・シーメンス(Ernst Werner von Siemens;1816年12月13日–1892年12月6日)がベルリン市内の540mの区間で試験運転したものとされる。その後、20世紀初頭に仏・米・英の順で営業運転が開始され、日本では約100年前の1912年(明治45年)に東京市電気局(現・東京都交通局)が製作費1500円で試作したのが始まりとされ、営業運転は1928年(昭和3年)に日本無軌道電車株式会社が阪急宝塚線の花屋敷駅から花屋敷遊園地の約2キロの区間での運行が最初とされる。都市交通としてのトロリーバスは1932年(昭和7年)に開業した京都市が最初で、次いで1943年(昭和18年)の名古屋市、戦後に入るとGHQのトロリーバス推奨の方針とガソリン不足の時代状況もあり1951年(昭和26年)川崎市、1952年(昭和27年)東京都、1953年(昭和28年)大阪市、1959年(昭和34年)横浜市と全て公営事業者による都市交通としてのトロリーバスの運行が相次いで開始された。

★東京のトロリーバス は前述の通り明治末には試作されていたものの紆余曲折を経て戦後1952年(昭和27年)5月20日に上野公園~今井間15.537kmの101系統より運行が開始された。その後、池袋駅前~品川駅前の102系統、池袋駅前~上野駅前の103系統、池袋駅前~浅草雷門の104系統が相次いで開業し、総営業キロ数51kmの日本最大のトロリーバス路線網が完成した。都営トロリーバスは、当時の絵本、玩具等のテーマとしても多数登場し、都市内交通の花形的な存在でもあった。
都営トロリーバスのうち、103系統と104系統には国鉄山手貨物線・東武伊勢崎線・京成押上線・東武亀戸線の電化鉄道線との平面交差が4箇所あり、当初は都電との交差箇所と同様に交差用金具による簡略な処理を検討していたが各鉄道側から危険であると猛反対され、苦肉の策として踏切を渡る時にだけトロリーポールを降ろし自走するための補助ディーゼルエンジン搭載のトロリーバス車両を運用した。都営トロリーバスの車両には50形・100形・200形・250形・300形・350形の6形式が存在したうち、この踏切通過用の補助ディーゼルエンジン付の300形と350形の2種はキャブオーバーバスのようにフロントにラジエターグリルを付けていることで一目で識別出来る。

★現在のハイブリッド化を先取り したような無公害・無騒音のメリットを持っていたにもかかわらず、1960年代後半に入ると道路状況と財政状況の悪化による路面電車の廃止と相前後して全国の都市型トロリーバスは姿を消していった。都営トロリーバスもその例に漏れず、銀座通りから都電が消えた1967年(昭和42年)12月9日にまず102系統の品川駅前~渋谷駅前が廃止、翌1968年(昭和43年)3月30日に102系統の渋谷駅前~池袋駅前と103系統・104系統が廃止、そして同年9月28日に最後まで残っていた101系統が廃止されて東京都営トロリーバスは開業から僅か16年で全廃された。今年で東京からトロバスが消えて丸45年、世代交代と共にトロバスが走った東京は人々の記憶から薄れ、やがては消えてゆくことだろう。

●光文社の動く絵本「とかいののりもの」 (1959年発行) から
絵・上田三郎画伯。都営トロリーバスは同時代の絵本によく登場した。これは頁を開くとトロリーバスがせり出してきて、プップーとクラクション音を鳴らす飛び出す仕掛け付の絵本。右を走るのは三井精機工業のオリエント三輪トラック。池袋駅前~上野駅前間の103系統を走る補助エンジン付き300形都営トロバスが描かれている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-絵本

●こち亀 第114巻収載「トロバス物語」
都営トロリーバスを題材とした両さんの昭和30年代/少年時代シリーズの傑作のひとつ。アニメ版でも放送された。
$1959PORSCHE356Aのブログ-こち亀

●1952年5月20日付 都営トロリーバス開業を報じる記事写真(朝日新聞)
$1959PORSCHE356Aのブログ-朝日新聞

●1949年 日野‐東芝 トロリーバス カタログ (B5判・2つ折)
限られた事業者のみが対象のトロリーバスのカタログが果たしてどれだけ発行されているか不明。
トレーラー式トロリーバスは名古屋市で実際に運行された車両。
$1959PORSCHE356Aのブログ-1949年表紙

※中頁
$1959PORSCHE356Aのブログ-1949年中面

【主要スペック】 1949年 日野‐東芝 トロリーバス ※( )内はトレーラー式
全長9970mm(13770mm)・全幅2400mm(同)・全高2620mm(3050㎜)・ホイールベース5000mm(トラクター:3450mm)・電動機直流複巻式140馬力600V(同)・車重6900kg(不明)・乗車定員74名(96名)・最高速50km/h(45km/h)

●1953年日野トラック・バス総合カタログより (B6判・蛇腹5つ折)
$1959PORSCHE356Aのブログ-1953年日野総合

●泰平電鉄機械株式会社 1955年?電装品カタログ
表紙は新宿伊勢丹前の明治通りを走る都営トロリーバス102系統218号車。内容はパンタグラフ、トロリーポール等のパーツカタログ。泰平電機はバスや電車の戸閉機製造メーカーとして現存。
私はこの写真の伊勢丹前から池袋まで親にせがんで廃止直前(恐らく1968年3月)に一度トロリーバスに乗せてもらった思い出がある。どうしても乗りたいとダダをこねられて、親にしてみれば用事もないのに仕方なくトロリーバスに乗ったそうだ。この新宿伊勢丹の建物は現在も変わらない。
$1959PORSCHE356Aのブログ-泰製品表紙

※中頁
$1959PORSCHE356Aのブログ-泰製品中面



★オマケ(その1): 東京都営トロリーバス記念乗車券3種
上から1952年5月20日トロリーバス開通記念、1952年10月1日都民の日制定記念、1952年11月10日奉祝立太子礼記念(現天皇が正式に皇太子となった記念)。運賃は15円。都民の日制定記念券には背後に勝鬨橋・国会議事堂・皇居二重橋等が描かれている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-乗車券1(開業)
$1959PORSCHE356Aのブログ-乗車券2(立太子)
$1959PORSCHE356Aのブログ-乗車券3(都民の日)


★オマケ(その2): マルサン商店 1/24スケール程度 東京都営トロリーバス(大サイズ)
当時定価全国420円・品番104。製造は林製作所。行先表示が「東京」とプリントされているが、実際の都営トロリーバスには東京駅を通る路線はなかった。
当時物のトロリーバスのモデルは大半がこの都営カラーを模した色で造られ、フロントには東京都交通局の紋章がプリントされている(オマケ3~6参照)。
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン大(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン大(2)
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン大(3)


★オマケ(その3): マルサン商店 1/32スケール程度 東京都営トロリーバス(小サイズ)
当時定価全国240円・品番123・浅草雷門行104系統のフロントグリルを付けた補助エンジン付車両をモデルとしている。客席最前列にはオモチャのピストル?を持ったカウボーイハットを被った外国人のような少年が座っている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン小(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン大(2)
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン小(3)


★オマケ(その4): 増田屋斎藤貿易 1/28スケール程度 東京都営トロリーバス
当時定価都内250円、地方270円・品番3229。「動物園ゆき」の行先表示は、上野公園発の101系統を意識したプリントだろう。これは私が子供の頃に買ってもらって遊んだ思い出のモデル。
$1959PORSCHE356Aのブログ-増田屋(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-増田屋(2)
$1959PORSCHE356Aのブログ-増田屋(3)


★オマケ(その5): 三浦トーイ 1/28スケール程度 東京都営トロリーバス
当時定価230円・地方250円。これも行先表示は101系統を意識した「動物園行」。
$1959PORSCHE356Aのブログ-三浦トーイ(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-三浦トーイ(2)


★オマケ(その6): エーワン浅草玩具 1/24スケール程度 東京都営トロリーバス
行先表示は104系統の浅草雷門。このモデルの近代的なボディスタイルは東京都でのトロバス全廃から4年後の1972年3月まで運行された横浜市営トロリーバス末期のワンマン仕様に近い。
$1959PORSCHE356Aのブログ-浅草玩具(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-浅草玩具(2)


★オマケ(その7): ケンクラフト 1/43スケール 東京都営トロリーバス200形
これは当時物ではなく1999年(平成11年)製品。限定100台。初期ロットのみ銅製、すぐにレジン製に切り替わった。画像は初期ロットの銅製にエナメル塗装を施したモデル。製造は「st.ピータースパーグ・トラムコレクション」(ロシア)。室内の吊革まで造り込まれた恐ろしく出来の良い博物館レベルのモデルで東京都も購入し江戸東京博物館にも展示されていた。補助エンジン付きの300形も100台、川崎市営トロリーバス仕様も限定50台が市場に出ている。当時定価:税抜き35000円。トロリーポール、ミラー、ウインカー、方向幕文字は、ユーザーが取り付ける。ケンクラフトが製作したバス停パーツも付属。元箱は単なるダンボールで印字等もない保護材であるため、元箱自体は元々ないに等しい。
都営トロリーバスのボディカラーは極く初期を除きこの塗り分けのまま、都電・都バスが肌色に赤帯となった1959年にも変更されずに1968年の全廃まで変わらなかった。
$1959PORSCHE356Aのブログ-ケンクラフト(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ケンクラフト(2)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ケンクラフト(3)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ケンクラフト(4)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ケンクラフト(5)