大好きなマカオの街を歩き回ります。狭いところにギュウギュウに詰め込んだ感じがお気に入りです。
こちらの方が香港に比べて、まだ物価が安いような気がします。お昼ごはんを食べるなら、マカオにいる今がチャンスです。
しかも、マカオはポークチョップの街。豬扒包(ポークチョップバーガー)が有名ですが、ごはんと一緒に出すお店もよく見かけます。
「お昼ごはんにポークチョップが食べたいなぁ」
と思いながら店を探していたのですが、ここで問題が一つありました。
それは、マカオ・パタカを持っていないこと。
高級なレストランなら間違いなくクレジットカードが使えると思うのですが、私が行きたいのはそんな店ではなく、地元の小さなお店。クレジットカードが使えそうにはありません。つまり、店に入ったら「香港ドルで払ってもよいか?」と聞かなければならないのです。
香港よりも英語が通じにくい印象のマカオ。英語も廣東語ができない私には、ちょっとハードルが上がります。
蓮峰體育中心近くで、金海馬美食というお店を見つけました。とりあえず、お店に入って、「香港ドルで払えるか?」と英語で店員に聞いてみたのですが、どうやら通じないようです。
「ダメだったか……」
と思っていると、私が話しかけた女性店員は、すぐに英語が話せる人を呼んでくれました。
やってきたのは、マカオあたりの人よりももうちょっと外国人っぽい顔立ちの女性。香港ドルで支払いたい旨伝えると、快くオーケーしてもらえました。
私の英語力は、中学・高校と散々苦しんだレベルです。TOEICはおろか、英検さえ受けたことがない私ですら英語が話せる人だと扱われるのですから、日本の英語教育というのもまんざら捨てたものではないということでしょう。
まず最初に奶茶が運ばれてきました。香港でよく見る縁が厚めのカップではなく、金属でできた容器に入っています。名古屋あたりの喫茶店でアイスコーヒーを頼むと、こんな入れ物で提供されるような気がしますが、中身はちゃんと熱奶茶。こちらの流儀で砂糖をドンと入れていただきます。
それから、楽しみにしていた黑椒豬扒飯。コショウがたくさんかかっているのかと思っていたら、見た目は今まで見てきた豬扒飯とそこまで大きな違いはありません。せいぜい、色が黒っぽいなと思う程度。
しかし、食べてみるとこれが大違い。胡椒の辛さがガツンときます。色は違いますが、味についてはほぼカレーだと言っても差し支えないでしょう。
そして、うまい。
このソースだけで、白ごはんが何杯でも食べられそうです。
夢中になって食べていると、さきほどの店員さんが、
「どこから来たの?」
と話しかけてきてくれました。JAPANと答えますが、日本人はなかなか来ないのでしょうか。確かに、ここはマカオの観光名所からは少し離れています。それに、英語も書かれていないような地元の店にわざわざ来る物好きは珍しいのかもしれません。
入口の黒板には42MOPと書かれていましたが、会計は39MOPと言われました。42MOPは冷たい飲み物を頼んだときの値段だったのかもしれません。
しかし、これは大きな誤算でした。お釣りが8MOPなら、そこからバス代を払うことができますが、11MOPとなると、10MOP札が混ざってしまいます。マカオのバスは日本のバスのように、機械から釣り銭が出るようなことはありません。
「この札を両替してほしい」
レジで頼んでみると、最初は断られたのですが、バスに乗りたいと言うと5MOP硬貨2枚と交換してくれました。
言葉の壁というのは、確かにあります。けれど、一番大切なのは気持ちを伝え合うこと。お互いのことがわかれば解決することというのは、世の中にたくさんあるのです。
バス停の表示を見ると、101Xのバスはしばらく来そうになかったので、ぐるりとあたりを回ってから再びバス停へ。そんな小さな散歩もまた、旅の楽しみの一つです。
12:21、港珠澳大橋澳門口岸に到着。わずか3時間ちょっとの滞在でしたが、海外に来た気分をしっかりと味わうことができました。
香港に戻るバスも2階の最前席。そして、しばらくは最前席からの眺めを楽しんだのですが、その後はやはり夢の中。気がつくと、機場のすぐ手前まで来ていました。
13:22、香港口岸に到着。パスポートを持ってe-道のゲートへ向かおうすると、イミグレーションの入り口の係員の女性に呼び止められました。入境のためのイミグレーションカードを書くように言われます。
「e-channelを使う」
と言ったのですが、女性は私にパスポートを見せるように言い、チラリとパスポートを見ると、
「シールがないからe-channelは使えない。カードを書いて、カウンターの列に並べ」
と言うのです。
英語で、なかなか厳しい口調で言われたので、思わずカチッとスイッチが入った私。
「今朝、空港でe-channelの申請をした。トライさせてくれ」
と言いきってゲートへ行き、パスポートをかざすと、当然のことながら入境することができました。
バスが到着してから建物を出るまでの所要時間、約5分。この女性とのやり取りがなければ、もっと早く通過できていたかもしれません。やれやれ、e-道というのも楽ではないのです。