2/23(金・祝)キタキタ秋田になんで来た?! 1日目〜その7~ | ちいたろうのお出かけ日記

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 男鹿からは国道101号線で秋田市内に向かいます。トンネルの入り口になまはげがペイントされた生鼻崎トンネルをくぐると、男鹿とはお別れ。来るときは赤いなまはげでしたが、帰りは青いなまはげです。つくづく、男鹿はなまはげ推しなのだということがわかります。
 林の中をまっすぐに伸びる県道56号線を走っていると、等間隔にずらりと並ぶ風車が夕日に照らされてオレンジ色に輝いていました。人間が作ったものと自然の光が合わさって、なかなか不思議な光景です。今ある風景は、いつまでも同じではありません。新しいものが作られたり、古いものが壊されたりします。けれども、自然の風景はいつまでも美しくあってほしいと思うのは、人間のわがままかもしれません。
 来たときと同じ道を走るのはもったいないので、帰りは国道7号線には入らず、そのまままっすぐ県道56号線で秋田市内に入ります。
「どこかにトイレはないだろうか」
 街中を走るこの通りなら、途中にコンビニもガソリンスタンドもあるはずです。そういえば、カーシェアを利用している間に給油をすれば、特典として利用料金を節約できます。さらに、次のこの車を使う人も燃料の心配をしないで済む。まさに一石二鳥、いや、一石三鳥なのです。
 県道から竿燈大通りに曲がり、旭川を渡った突き当たりを旭川に沿って南へ下ります。
「この辺から入っていけば、ステーションのあたりに出るんじゃないか?」
と思い、小さな交差点を曲がってまっすぐ行くと、ちょうどステーションの前に出ました。先ほどのなまはげ館に行くときは、勘が鈍ってしまったと思っていたのですが、まだまだ自分はいけるんじゃないかと、自信を取り戻します。
 17:44、ステーションに車を返却。総走行距離は130km。実際に走っていたのは3時間ほどなので、平均40km/h以上で走ったことになります。首都圏近郊ではありえない、なかなかいいハイペースで走ることができました。
 午前中は通り過ぎただけの川反へ行こうかと思っていたのですが、どうやらこのあたりにも店はありそうです。それこそ勘を頼りに店を探してみます。
 すると、ステーションのすぐ近くに、雰囲気のよさそうな「ふくじゅ」さんという飲み屋さんを見つけました。明かりもついているので、営業しているようです。


「こんにちは」
と声をかけて入ってみますが、返事がありません。カウンターには常連さんらしい男性が座っていて、奥の厨房には人の気配がします。
 どうしたものかと思案していると、
「飲みに来たんでしょ?」
と男性に言われ、待っているよう勧められました。
 カウンターだけのこのお店は、ご主人が1人で切り盛りしているようです。しばらく立ったまま待っていると、男性に出す料理を持ってご主人が現れました。


 カウンター席の奥に座らせてもらい、まずはずっと食べてみたかったしょっつる鍋を注文します。


「お酒もいろいろありますよ」
 日本酒は、地元秋田の酒をいろいろ揃えているようなのですが、大好きなのは普通の熱燗。2合頼んで、お通しと一緒にいただきます。
「鍋ができるまで、えぶりがっこはどうですか?」
 これから鍋を作るのですから、多少時間がかかるのは覚悟の上。何を食べようかと思っていたところへ、ご主人からの助け舟が出ました。今でこそ、いぶりがっこは首都圏の飲み屋さんでも珍しくありませんが、秋田で名物のえぶりがっこをいただくのは悪くありません。


 お通しとえぶりがっこだけでずいぶんお酒が進みます。でも、まだしょっつる鍋が来ていません。少しセーブしながら、しょっつる鍋に備えます。
 やってきたしょっつる鍋は、普通の鍋のように透き通った汁。魚醤というから茶色い汁を想像していたのですが、見た目は特別なところはありません。しかし、その透明な汁にしっかりと味がついているのです。

 それは、豊かな魚の風味と塩味。そして、その味が染み込んだ白菜やネギの味わいがたまりません。
 中に入っているハタハタはたまごつき。

「ブリコにしといたから」
とご主人が言いました。焼いたハタハタを食べたことは何度もありますが、鍋に入ったハタハタもまた、実に美味しい。これはお酒も進みます。さっき、熱燗を追加しておいて正解でした。
 しょっつる鍋を頼んだとき、ご主人に、
「そのメニューの値段じゃなくて、ホワイトボードの値段ね」
と言われたのですが、ホワイトボードに書かれているのはテーブルに置かれたメニューと同じ値段。いったい、いくらなのでしょう。けれど、これだけ満足させていただいたのですから、不満はありません。


 さっきまでいた常連さんが帰り、夫婦らしい中年の二人組と若い男性、それから私で、店内は3組4人となりました。そこへ一人、お客が入って来たのですが、ご主人は「いっぱいです」と言って断ります。椅子の数だけならあと6席あるのですが、ワンオペなのでそろそろ手いっぱいというところでしょう。なんとも商売っけがありません。それでも、今いるお客さんを大切にしようと感じられて、すこぶる気持ちがよいのです。
 意外なところで素敵なお店に出会えました。
「さあ、ホテルへ向かおう」
 車を返却するときに、チェックインが遅れることを電話で伝えておいたので、酔いざましに歩けばちょうどいいだろうと思い、ホテルまで歩いてみたのですが、これがまた遠い。こんなことならタクシーでも拾えばよかったと思うのですが、そう思う頃にはだいぶホテルに近づいています。
「もう少し、もう少しだ。頑張れ、私」
 自分を励ましながら、雪の降る寒い夜道を歩きます。そしてすっかり体も冷え切った頃、どうにか今回の宿舎、アキタパークホテルに辿り着いたのでした。