2/23(金・祝)キタキタ秋田になんで来た?! 1日目〜その6~ | ちいたろうのお出かけ日記

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 なまはげは観衆のところにもやってきます。子どもたちに「ちゃんと勉強してるか?」と声をかけると、どの子も「はい」と返事をしていました。子どもだけではありません。大人にも「しっかりやってるか?」「仕事してるか?」と語りかけていきます。なまはげは得体の知れないお化けではありません。自分の近くにいて自分のことを気にかけてくれる存在なのです。


 なまはげに会いに来て、本当によかったと思います。あの独特のビジュアルはもちろん知っていましたし、大晦日の夜にやってくるということも知っていました。しかし、知っているのと体験しているのはまったく違いました。
 子どもたちにとって、なまはげは恐怖の対象でしょう。節分の鬼でさえ怖がる子がいるのに、なまはげは自分のところにやってきて、しかも自分のことを知っているのです。こんなに恐ろしいことはありません。
 伝承館ではもちろん、そこまでのリアリティはありません。それでも、連れてこられた子どもたちはなまはげを前にしたとき、自分のことを振り返っていました。「悪い子はいねぇが?」と問われて、自分が悪い子かどうか、客観的に見つめようとするのです。
 また、本当のなまはげが家にやって来たなら、自分が家族から大切にされていることも感じることでしょう。家の主人となまはげとの問答の中で自分のことをかばってもらったり、連れていかれそうになったときに引き止めたりしてもらえたりする。本当に悪い子であれば、なまはげに差し出されてしまうであろうことは子どもでもわかるはずです。しかし、そんなことはありません。
 そこで子どもたちが感じることは何でしょう。自分が大切にされているかということを、無意識のうちに感じるのではないでしょうか。
 民俗行事としてのなまはげの素晴らしさは、今さら私が語るまでもありません。ユネスコの無形文化遺産に登録されたことからもわかる通り、その価値は誰もが認めることでしょう。それももちろんなのですが、子どもを育てるという観点からも、なまはげというものが素晴らしい文化であると思いました。単に子どもを怖がらせるのではなく、家族や地域が子どもたちへ注ぐ愛情が感じられるのです。
 そしてその思いは、将来子どもたちが大きくなり、なまはげの側になった時に受け継がれるのでしょう。子どもの自分がどれだけ大事にされていたか。そのことを改めて感じるに違いありません。
 ひと通りなまはげの実演が終わり、主人役の方から説明がありました。中でも興味深かったのは、なまはげは訪れた家々で酒の接待を受けるのですが、数軒まわるとお酒がまわり、酔っ払ってしまうので、交代しながら家々を訪ねるのだということです。
「なんだか人間らしいところがあるんだな」
 神さまの遣いであっても、それを受け継ぐのは地域の人たちです。そして、人と人との温かいつながりの中で、なまはげは今も生き続けているのです。
 この真山地区には、55軒の家があるとのこと。過疎化の問題は避けては通れないと思うのですが、末永くこの文化が受け継がれていってほしいと思うのでした。


 15:51、大満足で伝承館を出発。雪も少しおさまってきたようです。こうなると、来た道をまた戻るのも面白くありません。
「よし。海沿いを走ろう」
 かなり距離が延びますが、車の返却には間に合いそうです。
 なまはげ館から山を下り、なまはげラインとの交差点を来たときとは逆方向に曲がります。図らずも、男鹿半島ドライブの始まりです。
 県道に出て山を下ると、戸賀湾に出ます。海が見えると、気分も盛り上がります。


 さらに能登半島の海岸線に沿って南下していきます。時折雪は強くなるものの、天気が悪いというほどでもなく、むしろ海上の空には明るいところも見えてきました。
 遠くに何も見えない、どこまでも続く広い海。そんな海を見ながら走る気分は格別です。道路が海辺近くまで下りてくると、海には平らな岩場が続いていることに気がつきました。岩場というと、ゴツゴツとした荒々しい場所を想像するのですが、こちらの岩場はそうではありません。


「あれはいったい何だろう?」
 鵜ノ崎海岸公園というところで車を停めて、海まで歩いてみます。遠くまで浅瀬が広がっていて、波の模様のような岩場が続いています。

 調べてみると、潮が大きく引いたときには曲がりくねった地層からなる海底が姿を現すのだとありました。約1,000万年前の海底にあった地層が隆起し、波の侵食を受けて柔らかい地層が削られ硬い地層が残ったため、現在の姿になったとのこと。それならもっとじっくり近くで観察するべきでした。
 この日は大潮で、男鹿の満潮は18:10。写真を撮ったのは16:30なので、潮が満ちてきている時間です。それでも浅い海が遠くまで続く、不思議な光景が広がっていました。それが見られただけでも、男鹿という土地の風景が気に入ってしまったのです。
 あまりにも行き当たりばったりでなまはげに会いに来て、思いつきで男鹿半島の海岸線を走ってみたのですが、ここは見どころがたくさんありそうです。
「今度ゆっくり来てみたいなぁ」
 今回は時間の都合もあり、ガイドブックにも載っている有名な入道崎には行きませんでした。さらに、海岸沿いを走ったにもかかわらず、ゴジラ岩やキングコング岩など、いろいろな形をした岩も素通りしてしまっています。温泉もあるようですし、何より美味しいものを一つも食べていません。自分の中の、ぜひまた行ってみたい場所リストに男鹿半島を加えることにしたのでした。