10/2(土) 3回目のお遍路 四国八十八ヶ所完全制覇の旅 2日目~その1~ | ちいたろうのお出かけ日記

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 旅に出ても、いつも通りの時間に目を覚ましました。まだ朝も早いのですが、朝風呂をいただきに下に下りると、ちゃんと入れるように準備されていました。どうやら昨夜の客は私だけだったらしく、私の後に他の人が風呂を使った形跡がありません。それなのに、広々とした湯船からは道後の湯が溢れています。なんとぜいたくなことでしょう。

 ひと風呂浴びたら、部屋で納め札を書きます。自宅を出発する前に、今回巡る予定の最後の札所の分まで書いておいたのですが、それをごっそりと忘れてきてしまったのです。けれど、後悔しても仕方ありません。納め札くらいの忘れ物でよかったではありませんか。住所と名前を書けば、それで済むのです。

 7時すぎ。チェックアウトのために帳場へ行くと、宿のおばちゃんに、

「お風呂入った? 入るかと思って、開けとったんよ」

と言われました。お風呂ももちろんですが、宿のもてなしに大満足したことを伝えると、ぱっと笑顔になって、

「今までは暇やったんやけどねぇ。ぼちぼち戻ってきよるよ。Go Toも始まるよ」

と、声を弾ませました。やはり、宿や観光地はお客さんが来てこそ。まだまだ人出が戻ってきているとは言えませんが、明るいニュースはやはり、嬉しいものです。

 Go To関連の政策には公平性などの面から課題はあると思うのですが、このおばちゃんにように、それによって幸せになれる人がいたという点では効果があったのかもしれません。国民を幸せにすることは、政治の大きな役割の一つです。それがある特定の人たちだけでなく、誰もがこの国で暮らしていて幸せだと感じる。そんな政治を目指す人が現れることを期待してやみません。

「石手寺さんに行きたいのですが、車を止めさせてもらえませんか?」

と申し出ると、

「空いとるから、ええよ」

と快諾してもらえました。宿から51番石手寺まで、朝の散歩を楽しむことにします。

 まぶしい朝の光の中、水路沿いに石手寺に向かいます。昼間は暑さを感じるものの、朝の空気はさわやかです。

 石手寺に着くと、仁王門の前に野良猫がいました。よくよく見ると、境内や寺の裏山を歩いている野良猫がたくさんいるのに気がつきます。このお遍路の旅で一番たくさん猫を見た寺かもしれません。

 スピーカーからずっとお経が流れているのは、朝のお勤めでしょうか。大きなお堂と相まって、なんとも力強さを感じさせます。

 大師堂へ向かうと、先にお詣りをしていた白装束のお遍路さんに、

「お線香、中ですよ」

と声を掛けられました。香炉は外にもあったので、中にも線香を立てられるという意味だったのでしょうか。それでも、見ず知らずの人とそんな風に声を掛け合えるというのは、ありがたいことです。ほんの一瞬ではありますが、札所をまわることでこんなご縁をいくつもいただいています。

 納経所へ行くと、たくさんの納経帳を出していた男性がいました。きっと団体さんのものでしょう。彼は私が来たことに気がつくと、順番を譲ってくれました。すごく特別なことではないのだけれど、誰かの小さな親切に触れることで幸せを感じられるということは、なんともありがたいことです。

 石手寺の参道には、木造の屋根がついています。和風アーケードとでも呼ぶべきでしょうか。そして、こちらでも猫の姿がたくさん見られました。もっとも、餌をやらぬように呼び掛ける張り紙もあちこちに貼られていましたが。

 名物の焼き餅が食べたいと思い、8:00オープンという五十一番食堂の前で待っていたのですが、時間になっても開店する気配がありません。

「またにすればいいか」

 これもまた、ご縁です。松山にはきっと、そのうちまた来ることでしょう。焼き餅はその時の楽しみにとっておくことにします。

 寺の前の駐車場には、大型バスが止まっていました。さっき納経所で見かけた納経帳の団体でしょうか。夏の札所巡りではほとんど見かけなかった団体さんですが、これから先、涼しくなると増えてくるのかもしれません。

 歩いて宿に戻ると、玄関も帳場も電気を落としていました。こういう風に、お互いに気を遣わないで済むようにするのもまた、素敵な心配りだと思うのです。いい宿に出会えた幸せを噛みしめながら、エンジンをかけて出発します。

 50番繁多寺は、車でしばらく走ったところにあります。住宅地を抜けて駐車場に着くと、さっき石手寺で見かけたのと同じ大型バスがここにも停まっていました。

「そうか、逆打ちか!」

 団体さんは51番から52番の寺へ行く順打ちだと思ったら、そうではなかったようです。このまま行くと、しばらく一緒にまわることになってしまいます。

「どこかで順番を変えるか、タイミングをずらさないと大変かもしれないなぁ……」

 そう思いながら、本堂へ向かいます。ついつい、本堂のガラスを覗いて、山門のあたりが見えないかと思ってしまうところが、水曜どうでしょうファンなのです。

 もちろん、山門でいくら待っても、リーダーが駆けてくる気配はありません。それでも、四国を巡るきっかけになった寺の一つをこうして訪れたことに、小さな達成感を感じずにはいられないのでした。