数日前のことである。
調理のためにキッチンに立っていたら、みぞおちの上あたり、真ん中から左にかけて苦しいというか痛いというか、不快感が始まった。
しばらくそのまま続けていたけれど、ちょっと座りたいぐらい痛くなってきたので、腰を下ろして様子を見ていたら、息子が「お母さんどうしたの?」と部屋に入って来たので、「ちょっと胸が苦しい」というと、すぐに血圧計を持ってきた。
測ってみると、上が158ぐらい、下が100を超すぐらいである。 私の通常血圧は70-120ぐらい。なんなら、69-110ぐらいという時も半分ぐらいの低血圧である。
158と言うのは通常よりも40近く高い。
息子、そこからネットで色々検索し、「いつもより30以上血圧が高くて胸が痛い場合、すぐに医療機関に診てもらった方がいいらしい。心筋梗塞などの恐れがあるって」と言うのである。
ということで、息子、まずはレンタカーをおさえ、次に家の近辺の循環器系のある病院に何件か電話をしてみたところ、すべてのところから「救急車を呼んでください」と言われた。
救急車を呼ぶというのは、なかなかハードルが高い。
昏倒して意識が無いとかいう際には遠慮している場合ではないが、普通に話ができている状態で、救急車なんて…という気持ちが強い人が多いだろう。
しかし、3-4か所連絡した病院はすべて、「救急車を呼べ」という態度だったので、次に息子は救急車を呼んでも良いかどうか相談できる組織に連絡をした。
「70歳の母親で、血圧が160前後、胸の痛みを訴えています」というと、「すぐに救急車を呼んでください」ということだった。
ということで、人生で2度目の救急車に乗ることになった。(一度目は妊娠中に脱水症による急性の腹痛の時で、点滴で助けてもらった)
ものの5分で救急車は到着、私たちは外に出て待っていたので、すぐに車に乗せられた。車内のストレッチャーで、氏名や生年月日を聞かれる。その他にも既往症や、飲んでいる薬などを質問されたが、横になっているうちに、なんだか意識がフワフワしてきた。救急隊が血圧を測って、「ああ、220ありますね。きわめて高いです」と息子と話している声が聞こえた。
「220?血圧ってそんなに高くなるものなの?」と驚きながら、5分ほどしたら病院に着いた。案外近くに大きな救急病院があったようである。
そこからストレッチャーで救急患者の入る部屋に入れられ、4-5人の看護師さんと医師があっというまにバイタル機器をつけ、心電図をつけ、そして血圧を測る。「220ですね」と言っている。やっぱり血圧はうんと高いらしい…。 なんだろう、どうしてだろう? 血圧のせいか、首や肩のあたりがすごく張っているというか、凝っている…。
そして色んな質問に答える。「最近、胸を打ったりする外傷はありませんでしたか? 高血圧の薬は飲んでますか? 夜は眠れていますか?食事は?」と矢継ぎ早である。
ちょっと体はフワフワ、頭はモヤモヤしているが、意識はある。胸の痛みは、最高の時を10とすると、病院に入ったころは2-3ぐらい。横になっていると楽だった…。
それからエコー・スキャンをしたり、MRIをとったり、レントゲンも撮った。
要するに、心筋梗塞を強く疑ったということだろう。
結論を言うと、心筋梗塞でも大動脈解離でもなく、なぜそこまで血圧が一気に上がったのかはわからない、ということだった。
しかし、レントゲンの結果、肺に影があるので、それがちょっと心配ということで、なにかオソロシイ病気が隠れているかもしれないので今週は安静にしていてください、レントゲンを専門医が見てから連絡をくれる、ということだった。
病院を出る時の血圧が、176。「まだ高いですね。自宅でも、毎日血圧をチェックしておいてください。何か異変がでたら、すぐに連絡ください」ということだった。
で、ここ2-3日の血圧は、78-125ぐらいである。 正常値に戻っている。
昼間、特にストレスも無く、過激な運動をしたわけでもなく、なぜ急に血圧がそこまで上がったのか、理由がまったくわからないのだ。血液検査の結果は「びっくりするぐらいクリーンで、すべての数値が正常です」と言われた。
本当にいったい何だったのだろうか…。 突然の高血圧の原因は、全く思い当たらない。
しかし、人間の身体は不思議がいっぱい。
今朝まで健康でぴんぴんしていた人が、夕方にはコロっと死んでしまうこともあるのだ。
今回のことで、「息子、たよりになるな」というのと、「日本の救急隊や医療者はプロだな」と感心した。
英国は医療は無料だが、医師はともかく、その他の医療従事者の質は日本の方がずーっと上だと思う。
日本の救急隊は安心して任せていられる質の高さと労働倫理感があると思う。看護師さんも医師も、てきぱきしていて落ち着いている。その専門性と勤務姿勢に信頼がおけるのだ。
「救急車なんて…」と遠慮したが、70歳という年齢と救急隊の連絡した220という高い血圧値は、医師から見るとやはり「危険」と見るに足る情報だったようで、自分で勝手に判断しない方が良いのだな、と思った。
息子も、「俺は高い税金を払い続けているんだから、こんな時ぐらい救急車を使わせてもらっても文句は言われないだろう」と言ったが、救急車を呼ぶだけで何十万円も取られるアメリカなどに比べると、日本のシステムは本当にありがたいと思うのである。
とりあえず、今週のスケートレッスンはキャンセルして、家でおとなしくしている私なのである…。
そして、人間はいつコロっと逝くかわからないので、やりたいことはできるうちにやっておこう、と改めて思ったことであった。