香港の民主化と人権問題 | ロンドンつれづれ

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12月に、元香港の学生活動家、アグネス・チョウさんの記事をこのブログで書いた。

 

 

香港の民主化運動の女神、と呼ばれた若き活動家である。

 

彼女は香港で中国政府の方針に逆らう学生運動をしていたといって、2020年の6月にできた新たな「香港国家安全法」によって逮捕され、10か月の禁固刑を受けていた。 その後、2021年に出所したのちは沈黙を保っていた。 しかし、昨年の12月にカナダ留学中だということをSNSで報告、その中で「香港にはもう帰らない」と、事実上の亡命を告げた。彼女に対して香港警察は世界のどこにいても生涯逮捕するとしている。

 

彼女と、ネイサン・ロウ氏、そしてジョシュア・ウオン氏の3人が、香港の民主運動を主導した「デモシスト」の創立者である。学生たちの運動の始まりは、2012年に香港政府が「道徳・国民教育科」の一環として、中国一党支配を称揚する教科書を配ろうとしたことだった。それに反対する学生たちがいくつかの学生運動のグループをつくったのである。彼らはそれらのリーダーだった。

 

デモシストは民主派の政党として2017年、ネイサン・ロウ氏が5万票を集めて史上最年少の議員となったが、資格をはく奪された。2020年、国家安全法の施行ののち、党は事実上解散した。

 

 

香港のハンドオーバーは、1997年の7月1日に行われたが、1984年のサッチャー時代に英中両国が署名した共同声明が発表され、返還後は香港は中華人民共和国の特別行政区として50年間は一国二制度をもとに、社会主義政策を2047年まで香港で実施しないことを約束した。しかし、それを待たずに中国共産党は香港への支配を強めたのである。

 

当時、香港の人々も、イギリス政府も、50年の後には香港は中国を民主国家に導く立場になっているという楽天的な考えがあったようである。しかし習近平国家主席が総書記に就任し、独裁的な体制を作ってから、そんな空気はおろか言論弾圧などは一段と厳しくなりつつあるのである。

 

ジョシュア・ウオン氏はいまだに香港で服役中、ネイサン・ロウ氏は、2020年の7月にロンドンに逃避、政治的亡命者としてイギリス政府に保護されているが、香港警察は賞金までかけて彼を指名手配している。

 

中国政府は、「我々は海外にいる自国人を逮捕することができる」としているが、中国公安部が海外に「出先機関の警察」を設置することは、それぞれの国の政府が許してはいないはずだ。ある人権団体によると、海外に在住する中国人を中国警察当局が監視、または強制帰国させるため、日本を含む欧米諸国など53カ国102カ所に非公式警察の拠点を設置しているという。

 

習近平氏が始めた「キツネ狩り作戦」では海外に住む中国人を強制的に帰国させたり、脅迫を行ってきているようで、この非公式警察はホテルや飲食店などに偽装し、その実態把握が非常に困難であり、中国大使館や領事館を中心とした人・情報のネットワークを在外中国人の間に構築し、政権批判などを行った在外中国人約1万人をこれまで強制的な手段で帰国させ、対象となる中国人を脅迫するほか、対象中国人の家族等に対し中国国内で嫌がらせを行っているとされている。(Diamond online)  これは、国際法の原則に違反し、第三国の主権を侵害している行為である。

 

BBCによると、イギリス国内でもロンドンに2か所、グラスゴーに1か所、そういった不法な拠点があるという。

China accused of illegal police stations in the Netherlands - BBC News

 

 

日本国内でも中国の公安が活動をしているとしたら日本の主権侵害にあたる。そして中国に駐在している日本人をスパイ扱いした人権侵害もある。

 

香港や台湾の問題を他人事として傍観していて良いのだろうか。国際社会の一員として、民主主義を掲げる日本の立ち位置は…。

 

 

4月4日(木)、英国時間12:00、日本時間の20:00、夜8時から、デモシストの元リーダーの一人、ネイサン・ロウ氏をスピーカーの一人に、香港の民主運動と国家安全法, そして国家による人権侵害についての講演を、ロンドンからズームミーティングで行う。

 

政治的亡命として英国政府に認められたとはいえ、香港警察からは指名手配がでているのに、このセミナーで話をすることを引き受けてくれたネイサンの勇気には、尊敬しかない。今は当局の弾圧が怖くてまったく静まってしまった香港の民主化運動は、このまま立ち消えてしまうのだろうか。

 

言論の自由があたりまえという日本にいると想像もできないことだが、20年前、英国の大学で日本語を教えていた時の学生たちに香港の子たちが大勢いて、優秀かつ社交的でリーダーシップの取れる人材が多かったことを思い出して、胸が痛むのだ…。

 

 

元デモシスト主導者、Nathan Law氏

ひと:羅冠聡さん=香港民主化運動の経験を日本で出版 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

 

 

ロンドン大学キングスカレッジの法科の教授、Prof. Eva Pils

 

日本の立命館大学教授、Prof. Masato Kamikubo

 

もとエコノミスト誌編集者、Bill Emmott(司会)

 

 

日本時間で4月4日、午後8時より開始。

セミナー参加は無料。講義は英語で行われる。

 

興味のある方は、以下のウェブページからbookingをクリックし、必要事項を記入の上お申し込みください。セミナーを視聴できるリンクをお送りいたします。

 

https://dajf.org.uk/event/democracy-and-human-rights-in-hong-kong