英国のBBCやタイムズ紙が、ロシアのワリエワ選手からは、56種の薬が検出されていた、と報道した。
Kamila Valieva was plied with 56 medicines aged 13 to 15 (thetimes.co.uk)
BBCやタイムズ紙によると、ワリエワは満13-15歳の時に56種類の薬物を投与されていたとスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定の書類に書かれていたという。これはロシアのチームドクター、Dr Adamov, Dr Shumakov and Dr Shvetskiyにより処方されていたものだという。
ワリエワは、禁止薬物のトリメタジシンの検出で北京オリンピックの団体金メダルをはく奪されたが、チームドクターやコーチらが、その他にも心臓薬、筋肉増強剤、合法的な競技力向上薬を混ぜて服用させていたという。
ロシアのアンチドーピングRUSADAは「ワリエワに落ち度はない」としているが、WADAは、「子どもを薬漬けにすることは許されない」としている。
(2021年、フィンランディア杯にて。夫撮影)
ロシアのチームドクター3人がワリエワに服用させた薬物のリストにはトリメタジジンの他に禁止されていない55種類の薬物など、一部の研究者がWADAの禁止薬物リストへの記載を求めているステロイドホルモンのエクジステロン、心臓疾患の治療薬で一部アスリートがドーピング規定に違反せず競技力向上のため服用するハイフォクセンとLカルニチン、鎮痛剤、下痢止め、風邪薬、インフルエンザ治療薬、クレアチンなど複数のアミノ酸製剤、エネルギーブースターなどがあった、という。
チームドクターらは「ワリエワは14歳の時にスポーツ心臓(過度な運動による心臓肥大)の診断を受けたため心臓薬の投与を受けていた」と主張しているが、WADAはこれらの薬物について「多くの練習量と回復を促すためロシアで選手らに与えられている典型的な薬物」と指摘。
米国アンチドーピング機構(USADA)のトレビス・タイガード会長はワリエワに投与された薬物の数について「ぞっとする」と述べ、ワリエワ周辺の人物に対する処分を求めたが、ワリエワのチームドクター3人とコーチのエテリ・トゥトベリゼ氏は現時点で何の処分も受けていない。
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13才の子どもに56種類もの薬物やサプリメントを与え続けていたというニュースは、あまりにも恐ろしい。
いくらリストにない禁止薬物とは言え、体に不必要な薬を長期間投与し続けることによる薬害の恐れは必ずあるのだ。
「薬を飲んだからって、急に4回転ジャンプが跳べるわけじゃない」とメドヴェデワ氏は擁護していたが、薬物の効用は、長時間の練習を可能にしたり不自然に疲労を回復したりすることだろう。それによって、他の人が達成できない短期間で、難しい技を若くして習得することができるようになるからだ。
先日、NHKの番組でワリエワ選手の特集を行っていたが、もはやジャンプは跳べなくなっており、体もかなり重くなっている。18歳の彼女が今も薬物を使っているのか、それは定かではないが15歳をピークにした「オリンピック金メダリスト製造装置」であるロシアのエリートスクールで訓練を受けている子どもたちは、今でもワリエワと同じような扱いを受けているに違いない。
国家の威信を示すために、子どもを薬漬けにすることは許されない。金メダルさえとれば、一生国家が面倒を見てくれる、そういう思いが子どもやその親の口を封じるのだ。
ワリエワは使い捨てにされ、今はもうロシアの代表チームには入っていない。 ドーピングの汚名があるから、国外のアイスショーにも招かれないだろう。
薬などなくても、確実にメダルが取れるだけの才能のある選手だった。残念でならない。