靴箱を整理していたら、自分で作ったパンプスが出てきた。 もう10年以上前に作ったものである。
これは仕事を変える前、つまり残業残業の仕事人間になる前に、5時半には仕事を終え、その後ファッションカレッジなどのイブニングコースに通っては、洋裁や帽子つくりを楽しんでいたころの趣味の一つとして参加した「1週間のシュー・メイキングコース」だったのである。
参加費は結構高かったのを覚えている。 実は、友人が申し込んだのに急に行けなくなったから、500ポンドでいいから代わりに行ってくれ、と言われたのだ。 そう、元値は800ポンド支払ったようである。 当時はポンドも今より高く、おそらく15万円ぐらいにはなったのではないか。 私も500ポンド払うと、10万円近いな…と思いながら支払ったのを覚えている。
しかし、月曜から金曜日まで5日間、朝10時から午後5時まで、じっくり教えてもらい、結構楽しかったことを覚えている。
材料費も込みで、教わる人は4人ぐらいしかいなかったから、個人教授みたいなものである。 高いことは高かったが、なかなか面白い経験をしたので、ぜひご紹介したい。
デザインや素材は、自分で選べる。 ブーツを作っていた人もいたが、私は、布で作ったパンプスを作ることにしました。 なぜなら、先に自分でリントン・ツイード(シャネル御用達のツイード)を使って、スーツと、コートを作っていたからである。 ぜひ、そのスーツに合わせた靴を作りたいと思ったのだ。 下が、そのスーツ。 この時は普通の白い靴を履いています。 これはノースリーブのシフトドレスの上にジャケット、というデザインです。
こちらがそのツイード生地です。 パリのプレミア・ヴィジョンにでかけて、サンプルヤードを10メートル買ったものです。
そしてこちらが、私のデザインのパンプスのパターン(型紙)です。 自分の足のサイズや形に合わせ、これは先生がかなり手伝ってくれて作ります。
私のデザインは、つま先のところに白い皮をあしらったもの。 それがこちらです。 皮の裏に専用の布をはりつけ、さらに皮の結合部を削って、薄くしています。 この後、ツイード布に縫い付けます。
型紙に合わせて切った布地や皮部分を、靴専用のミシンで縫い合わせます。それを、木型にかぶせていよいよ、釘で靴底につけていきます。
靴の木型に皮や布を固定していくのに使う、専用の釘がこちら。
これをハンマーで打ち込んでいくんですが、釘が小さいので指を打ってしまって、痛い! 靴底の部分は、ばねのついた型をあてて、そこに釘で止めていきます。
ペンチでぐいぐい引っ張って、釘を打っていきます。 布なので引っ張りすぎるとさけてしまいますから、そのあんばいがむずかしい。
かかと部分がこちら。 足に当たる部分のライニングの皮と、靴の形をしっかりさせるための素材と、外側のツイードと、3層になっているのが見えますね。 木型にピタッとするように、うんと引っ張って伸ばします。
今度は外側をめくって、ライナーになる皮だけを固定していきます。
靴底の部分に皮を糊付けします。この糊がいったん手に着くとすごいことになるぐらいすごい接着力! 余分な部分は削り取ります。これはヒール部分です。
さて、つま先はこんな具合に。 一番目立つ部分なので、釘も細かく打って、表から見た時にしわなどが寄らないよう、しっかり引っ張って固定します。 釘打ちのハンマーが見えるでしょうか。 引っ張ってすぐに打てるように、ペンチとハンマーが一つになってます。
靴が地面に当たる前の部分に、クッションのように、粉砕されたコルクと糊を混ぜたものを塗りつけます。
まだかかとはついていませんが、横にもう作ったものが置いてあるのが見えるでしょうか。
下は、まだ靴の中敷きを入れるまえの様子です。
ヒールを取り付けた後、ここに、ピンクの部分と同じ形の中敷きと、土踏まずを支える部分を作って入れます。
出来上がったものが、こちらです。 ちょっと、土踏まずのサポート部分が大きすぎましたが、履いたとき、楽なように…。
ここまで写真を見ながら読むと、あっというまに出来上がったような印象ですが、いやいや、毎日6時間ずつ働いて、5日かかったんですから、30時間かかってます。 そして、10万円近いという…。
こんな高い靴、他に持ってませんよ!
久しぶりに出してみた、ということは、使ってないってことです。
もったいないからって?
違いますよ・・・。
痛くてはけないんです。 わはははは。
なかなか、素敵なデザインでしょ? おそろいのスーツと合わせたら、本当にいいと思います。
しかし、高い授業料を支払い、1週間も仕事を休んで参加したシュー・メイキングのクラスで得た結論は、「靴は買うもの。 作るもんじゃない」ということでした。
大使館でおよばれした「天皇誕生日レセプション」で1回、このアンサンブルと靴のセットで参加しましたが、(そして靴は会場に到着してから履き替えましたが)、1時間もすると痛くて痛くて、この靴を履いていたことを後悔しましたね。
靴は、なによりも「履きやすくて疲れないモノ」が一番です。 痛い靴なんか履いていたら、お食事はおいしくないし、お話にも集中できません。
もう最近では、ほとんどどこに行くのもスニーカー、バッグはとにかく「軽くて疲れないモノ」に限っております…。
こうなってくるから、どんどん「オバサン化」が進んでしまうんですよね。
タンスやワードローブを整理して、なんと大きな袋に4つも、チャリティショップに持っていきました。 好きだったドレスもスーツも思い切ってお別れした、その一番大きな理由は「ウェストがもう入らない」というものでした。
まあ、コロナのせいにばっかりはできないけれど、仕事を辞めて、リラックスした人生を送り始めてみたら、胴回りもしっかりリラックスしてしまった、ということでした。
スカートが緩すぎて、着ることが少なかったスーツなど、久しぶりにだしてみたら、なんとぴったり。というより、少しきついかも。 つまり、ウェストが10センチ以上、広がっちゃった、ってことですよ。
もうヒールのあるパンプスや、ほっそいドレスなんか一生着ないのかな~~~。
もうちょっと頑張ってスケートに通って、またスタイリッシュなお洋服を着られるようになるかな。
外出もほとんどしないから、もうモチベーションも下がってるな~。
コロナめ~~~。
いや、違うか、自分のせいか・・・。