アシュリー・ワグナーの告白 | ロンドンつれづれ

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8月1日に、アシュリー・ワグナーさんがショッキングな告白をした。

 

「私は性暴力を受けた」というものである。

 

 

アシュリーから告発されているのは、ジョン・コフリン氏、他の女性からも性暴力で訴えられ、1月に自殺をした元ペアスケーターでコーチでもある人物である。 

 

アシュリーは「このことを公にするのは大変に迷った。 しかし、前回の全米選手権で、13歳のアリッサ・ルウが優勝したのを見て、決心したの。 フィギュアスケートはこういった若い選手にとって安全なスポーツであるべきだ、と。」

 

I know that there will be people who pick this apart, who criticize me and question me. At the end of the day, however, I had to make a choice: to stay quiet or to push forward and demand change in a sport that I love. When I looked at it that way, the decision became crystal clear. 「人は色々言うでしょうし、私を批判するだろうことは分かっているわ。でも結局、私は自分で決断するしかない、ということなの。沈黙を守り続けるか、それとも前に進んで、私の愛するスポーツを変えようとするか。 そう思った時に、自分が何をすべきかは、クリスタルよりも透明にはっきりと見えたんです。」

 

 

以下、アシュリーの告発を簡単に訳してみました。(US Todayより抜粋)

 

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2008年の6月、私は17歳で、コロラドスプリングスでスケートのキャンプに参加していました。地元の選手がホームパーティを開いていたので、参加をしたのです。知っている人ばかりだったし、みんなで飲んだりしたので、だれも私をホテルに送ってくれなかったので、他の数人の女子と一緒にそこに泊まることにしました。

 
深夜、私が眠っていると、誰かがベッドに忍び込んできました。とっさに意味が分からず、誰かが眠る場所を探しているのかと思いました。しかし彼は私の首にキスをし始めました。私は眠っているふりをして、彼が止めてくれることを祈りました。次に彼は私の身体を触り始めました。私は寝返りを打って、彼が止めることを期待しましたが、ダメでした。
 
彼は当時22歳、もう大人で慣れた手つきでした。でも私はほんの子供だったのです。彼が触るのを止めないので怖くなったのです。彼は私より体も大きく、押しのけることもできそうにありませんでした。眠ったふりをして彼が飽きてどこかへ行ってくれることを願うだけでした。 しかし、彼が止めないので、私は泣き始めました。もう決断するしかありません。私は目を開いて、首にキスしている男から離れ、彼の手をつかんで止めるように言いました。 やっと彼は止めてくれました。 私をしばらく見つめ、それから静かに部屋を出て行きました。 おそらく、ほんの5分ぐらいのことだったでしょう。 でもこの短い出来事が、それから私の人生をずーっと悩ませてきたのです。
 
翌朝、彼は何事もなかったようにふるまいました。そして私も…。 私はもしかしたら、私がなにか誤解したのかもしれない、と思ったりもしました。 2008年には、私には知識も、そして今の#Me Too運動のようなエンパワメントもなかったのです…。 誰も私に「合意」のことなんか教えてくれませんでした。 当時、何だったのかわからなかったことも、今ははっきりわかるようになったのです。
 
I was sexually assaulted.
私は、性的暴行を受けたのです。

その後、私は近しい二人の人に、このことを話しました。 しかし他には何も行動を取らなかったのです。ただ忘れたかった。 私は軍に勤める家庭に生まれ、逆境にあっても黙って前に進むことを教えられていました。また、親に話せば、パーティに行ったことを叱られるとも思ったので黙っていたのです。
 
また、当時私は採点競技であるフィギュアスケートの中で、頭角を現し始めていた若いスケーターでした。 面倒は起こしたくなかった。自分のキャリアに傷がつくことを恐れました。トラブルメイカーだと思われたくなかったのです。 それに誰も私の話を真剣に聴くとも思えませんでした。 誰もがこの男性を気に入っていたのです。私さえも、彼を嫌いではありませんでした。
 
 
こんなに人気のある人物が、そんな悪いことをするわけがないでしょう? 思い返してみると、これが一番大切な部分です。 良い人々も、あなたを傷つけることができる、ということです。 誰かが好人物だからといって、誰かがいつも正しいことをしているからと言って、誰かがいつも面白いことを言っているからと言って、その人があなたを傷つけたり虐待したりしないとは限らないって言う事。 どんな人だって、完璧にいい人だったり、完全に悪人だったりするわけじゃない。 でも、いい人だからって、誰かを傷つけることを正当化はできないはず…。
 
あの夜、私は自分は安全だと思い込んで眠りについた、そして、彼がその安全を侵した、ということは今の私にはわかります。 友達と楽しむためにあの家に行き、彼がそれを台無しにした。 女の子がパーティに行ったことは、男にその子の身体を触ってよいということにはならない。私は彼に一言も、それを許すような言葉を言っていません。 私がパーティにいたことは、すなわち「合意」ではないのです。 それをもっと早くわかりたかった。 あの出来事に関して、私が何年も感じ続けていた罪悪感は、彼こそが感じるべきことだったのです。
 
I was sexually assaulted by John Coughlin.
私は、ジョン・コフリンによって、性的暴行を受けました。
 
過去数か月で、私はこのことを公に話すことに決めました。 ジョンの名前を出すかどうか、とても苦しみました。彼は、とても有名なフィギュアスケーターで、1月に自殺をした人です。彼の名前を出すことがどういう意味か、十分に理解しているつもりです。 しかし、名前を出すことで、私の話がどう受け止められるかが決まってくるでしょう。 それなしには、人々は私の話を信じない事でしょう。
 
しかし、これは「名前」に関する話ではありません。 これは、そういった行動を許す「環境」についての話なのです。 私はこの問題を人々に現実として感じてほしいのです。 私の愛するスポーツが今日まで引きずっている、居心地の悪い権力のバランス、その精神力学について理解してほしいのです。
 
エリートレベルのアスリートは、その才能や能力を讃えられてきました。私自身もそのレベルで13歳から27歳まで15年も競技をしてきました。才能と能力、年齢ではなく、があなたの地位を決定します。 ふつう、子供やティーンエイジャーが大人と同じ社会環境の中にいることは稀です。 しかしフィギュアスケートではそれが常態です。同じホテルに泊まり、食事を共にします。
 
今年私は若いスーパースターを見ました。アリッサ・ルウです。彼女が全米チャンピオンになりました。その瞬間、私は、こういう子供たちのためにこのスポーツをもっと安全にしなくては、私は話さなくてはいけない、と決断しました。私はUSスケート協会に行き、アスリート教育と若いスケーターの安全と健康管理の改善を提案しました。
 
ボトムラインは、人々はもっとこういう問題を話せるようにならなければ、ということです。17歳のスケーターであった私の世界はとても狭いものだった。20代の成人スケーターとしての彼の世界もまた小さいもので、主に10代の若者が競技生活をしているスポーツです。 まるで煮詰まっている圧力鍋のような環境で、どうにかしなければいつまでたっても居心地の悪い不適切で危険な職場と言えるでしょう。
 
このスポーツの中で、子供たちには子供たちらしくいられるようにしたい。 (子供たちを守る)境界線を作ることを話し合うべきです。 自分を被害者だとは思いませんし、だれにもそう思ってほしいとは思いません。2008年のあの嫌な夜の出来事の後、私は自分の人生をしっかり歩いてきました。でも、いつも彼のことを考えると混乱したのです。 彼は一回も私に謝罪をしませんでしたし、私もそれを要求しませんでした。 両者とも先に進んだのです。彼が私にしたことを、認めないまま…。
 
このことを公表することは、簡単なチョイスではありませんでした。人は色々言うでしょうし、私を批判するだろうことは分かっています。でも結局、私は自分で決断するしかない、ということなのです。沈黙を守り続けるか、それとも前に進んで、私の愛するスポーツを変えようとするか。 そう思った時に、自分が何をすべきかは、クリスタルよりも透明にはっきりと見えたんです。」

I chose to speak up.
きちんと話すことが、私のすることだ、と。
 
 
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アシュリーは数時間前に、インスタグラムにもこの話を載せ、多くのファンからのコメントがついている。 彼女の勇気をたたえるものが多い。
 
 
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USA TODAY Sports' Christine Brennan worked with Wagner on the writing of this article.
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If you are a survivor of sexual assault, you can call the National Sexual Assault Hotline at 800.656.HOPE (4673) or visit hotline.rainn.org/online and receive confidential support.

 

https://www.usatoday.com/story/sports/olympics/2019/08/01/ashley-wagner-figure-skating-sexual-assault-john-coughlin/1876419001/