ヘルシンキGPS雑感 | ロンドンつれづれ

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フィンランドも秋の色が美しかった。 ヘルシンキのアイスリンクの周りのメープルも黄色く色づいていた。

 

 

下は、日本のお客さんが通勤電車のように毎日使ってリンクに通っていた市電。 私たちはホテルまで毎日30分歩いたけれど、もっと遠いところからきている人たちもいたようです。

 

 

前にマルセイユのファイナルに行った時には、リンクのある場所が辺鄙なところで、まわりにレストランすらなく、夜遅くに歩いて帰るのが怖いようだったが、ヘルシンキはどこも清潔で安全。 そして公共交通がしっかりしているので、観客のリンクまでの往復が安心です。

 

リンク内も清潔で、椅子もちゃんとクッションのついた布地製。これがただのプラスチックだと、1日座っているとお尻が痛くなる。 (夫によるとロンバルディアのイタリアのリンクは背もたれもない木のベンチだったというから、さらに厳しい。) そして前の座席からかなり高い位置にあるので、座高の高い人が座っても気にならない。 これは、快適な観戦には案外大きな要素である。 私たちは、リンク周りのブロックの一番後ろの席に座っていたけれど、十分に楽しめたのである。前から15列目ぐらいかな? 室内の気温もちょうどよく、寒すぎず、選手にとっては暑すぎず。 氷も、水浸しのところがあるというようなことはなく、ザンボーニも手際よくかけて、だいたい15分ほどですませていた。

 

そして、トイレ! これはすごく大事な要素であるが、パリのリンクのように便座がないという野蛮なトイレではなく、清潔な上、しっかりと便座のあるトイレで、しかも長蛇の列にならなかった。 日本人のご婦人が4000人近く来ていたとなれば、「でないけど、一応行っておこう、トイレ・・・」という人が長蛇の列をなすはずであるが、実際どうやってマネージしたのか、トイレで5分以上並ぶことはなかった。 もちろん、私たち夫婦が毎年でかけるフィンランディア杯も、いつもとても快適なのである。

 

また、サンドイッチやバーガー、パニーニやソフトクリームなど、食べ物のお店がたくさん出ていたので、これも長蛇の列にならずに食べ物を手に入れることができたのである。 お土産屋さんもあちらこちらにでていたので、これも日本人客がなにか買い占めてしまう、ということはなかった。プログラムはなかったけれど・・・。 それとも、私たちの目に入る前に無くなってしまったか?

 

そして、今回は前のフィンランディア杯のように現地の人は多くなかったが(何しろ1/3は日本人だという)北欧の人々はそもそもとても大人で礼儀正しいので、雰囲気がいいのである。 あ、そういえば私たちのすぐ後ろで、ブブセラみたいのを鳴らして大騒ぎしていたイタリア人観客は、係の人にすぐ注意されていた・・・。 演技中は、出入りできないように係の人がちゃんと見張っていてくれるから、人様の座席の前を横切って歩く人もいなかった。

 

そして感心したのは男子、女子、アイスダンスと、イベントごとに建物の外に追い出さないことで、リンクの座席を空ければ、館内に滞在できて、待っている間飲んだり食べたり、トイレに行ったりしていられることであった。たいへんに常識的かつ人道的なはからいである。 フランスでは寒い中、全員を外に追い出し(これに時間がかかる)さらに雨の降る中を外に長時間並ばせられて、再度セキュリティチェックをやったりするので、長蛇の列のまま次の試合が始まってしまい、最初の方を見ることができなかった人たちもいた。 こんなことをする必要があるのか、という感想を持った。

 

今回、ヘルシンキの市長が挨拶をして、「長いこと、我々はGPSをヘルシンキに招こうと努力してきましたが、今回嬉しいことにこうやって開催の運びになり、喜びに堪えません。 急な申し出で、2か月半で急ピッチで準備をしましたが、皆様に楽しんでいただけたら幸甚です」ということだった。 準備はどれほどたいへんだっただろうか。それを感じさせないオーガナイズであった。

 

 

羽生選手もインタビューで以下のように答えていた。

 

――GPシリーズ今季初戦に臨む心境は?
 「もう、楽しみです。(例年は中国開催で)フィンランドでGPが開催される予定はなかったと思うので、スタッフのみなさんを始め、本当に大変だったと思うんです。けど、そういう中でも試合ができるので、本当に感謝しながら滑りたいなと思います」


――フィンランドには良いイメージがある
 「自分にとっては、初めての国際試合がフィンランドでした。ある意味、また新たなスタートがきれたらいいなと思います」

 

 

 

急な申し出を快く引き受け、リンクをおさえてボランティアを集め、準備をしっかり間に合わせた上に、遠くから大挙してやってくる日本人のお客様にも快適に過ごせるよう、男子トイレも女子トイレに急遽変えて(しかも日本語の表示まで)対応してくれるというフレキシビリティ。

 

スタッフの客あしらいも、ボランティアの笑顔も、大変に心地よいのがフィンランドでの試合である。 そして、羽生選手も、GPS初戦を優勝というジンクス破りで、新ルールの下「新たなスタート」がきれたのではないだろうか。 羽生選手をフィンランドの現地観戦で4回見たが、必ず優勝しているのである。 

 

 

(街中のあちこちで見かけたヘルシンキGPSの電光掲示板)

 

 

ヘルシンキは日本からも一番来やすいヨーロッパだという。 フィンエアもとても安全なエアラインだし、ホテルは清潔で感じが良い。 夫など、「ホテルのフロントに帰りのエアチケットのプリントをメールで頼んでおいたら、こちらが言い出す前にぱっと出してくれた。素晴らしい!英国じゃ考えられない!」と大感激だった。 どこで何を食べても新鮮でおいしいし、おなかをこわしたこともない。

 

さすが「国民が幸せだと感じる国トップ10」にいつも入ってくる北欧の国である。 

 

これなら、選手の宿泊も、食事も、そして何かあった時の医療処置も、送迎も、なにからなにまで安心である。 空港からスーパーマーケット、タクシーの運転手さんに至るまで、だれでも英語を理解してはなしてくれるし。 人々の平均的教養レベルが高いのである。 

 

フィン人の友人によると、ソチに試合を見に行った時、メーターもないタクシーに乗るたびに料金をぼられ、すごく怖かったそうである。ホテルも髪の毛が落ちていたり、公共交通がいい加減で、夜ホテルに帰れるかどうかも不安だったということである。 私はそんなところに観戦に行きたくはないのである。

 

今後もGPSの試合をヘルシンキが望むのであれば、ぜひぜひヘルシンキをレギュラーな開催地にしてもらいたい、と強く思ったのである。 選手の待遇もだが、観客が安心して泊まったり、移動したりできる安全な街で試合は開催してもらいたい。 そして、リンク内では1日10時間座っていても、お尻がカチカチにならない椅子を用意してもらいたい。 トイレの長蛇の列も、なんとかしてくれ(これは日本でも)。

 

 

そんなこんなで、ヘルシンキ雑感としては、ぜひここでこれからGPSを定期的に開催してください!と強い希望をISUに出したいところなのである・・・。

 

それに、フィンランドは羽生選手にとって、絶対負けない、たいへんに演技の良い土地柄でもあるし・・・。 

これから羽生君のGPSはNHK杯とフィンランドで決まりだ!