パナマ文書、 | ロンドンつれづれ

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ICIJが、パナマ文書の残りの情報を10日未明に公開した。



ICIJのホームページはこちら。

https://panamapapers.icij.org/blog/20160509-offshore-database-release.html


日本の企業の名前も多くリストアップされているようで、今後国税局が調査に乗り出すことは必至だ。

今回の流出資料に載っていたからといって、即「脱税」とは決め難く、法に則ってタックスヘイヴンに口座を開いたり、会社設立をしたりしている場合もあるだろう。

しかし国税庁としては、グレーゾーンや明らかな脱税の証拠を集めて、こういう人たちを追い詰めるための大きな資料となることは間違いない。

世界中の国税庁が、のどから手が出るほどほしい資料が大量に公開されたのである。


世界は、The Haves (持てるもの)と、The Havenots(持たざるもの)とに分かれている。たくさんのものを持っている人たちが、その財産をどこかに預けて税金逃れをするようなことが合法だということ自体、そもそも必要なのであろうか?


世界の経済や政治を動かしているリッチでパワフルな人たちが、自分たちに都合のいいルールをつくり、脱税を合法化している、と思われてもしかたがないのではないだろうか。



私たちは、資本主義の中に生まれ、育ち、資本主義の考え方に慣れすぎてしまった。

金持ちで力を持っている人は、その人が優秀で努力をしたから、あたりまえだ。

貧乏人で社会の底辺で困っている人は、努力をしない怠け者だから、そんな人生を送っても当たり前だ。

どこかでそう思っていないだろうか。

勝ち組、負け組などというラベリングもそのいい例だろう。



だれだって1日に24時間しか無い。その時間で人間にできることは限られている。膨大な収入の差を説明できるほど、仕事の質、量、そして能力に差があるのだろうか。


こちらの人が年収120万円で朝から晩まで肉体労働をしているのと、あちらの人が株をちょっと動かして年収何億円も得ているのを、「あいつは要領が悪いから、俺は頭がいいんだからしかたがない」と説明できるだろうか。

どこかで誰かが、他の誰かの労働や時間や幸せをすりとって搾取してはいないだろうか。



幸せな人生を送っている人は、確かにそれを得るための努力もしているだろう。

私だって、頑張って40歳を超えて大学院で勉強したから、今の仕事に就いていられるのだ。努力しなければ、今の仕事も生活も手に入れることはできなかっただろう。

でも、そうできるためには、その前にしっかりした親から教育が大事だということを教えてもらっている。また、学費を支払うことのできる経済力もあったのだ。



生まれ落ちた環境が劣悪であれば、スタートラインでのハンデは大きすぎるだろう。そして、人生の途中で軌道修正をすることも、なかなかできないだろう。人の不幸は、個人の責任だけにおしつけることはできないのである。


今、幸せな人生を送っている人は、そうでない人もいることを忘れてはいけない。そして、余力があるのであれば、それを社会に還元することを考えることだ。



資本主義のいいところはもちろんあるだろう。


しかし、社会の弱い部分を切り捨てること無く、力を持つ人達が、資産を持つ人達が、その余力を自分のためだけにとっておくことのないようにすることが、きっとより住みやすい世界を作っていくのではないか。



その意味でも、パナマ文書の公開は、「あっぱれ」といいたい。


たとえ合法といえども、自国での税金を逃れるためにタックスヘイヴンに預けたまま忘れているようなお金があるならば、もっと役に立つことにつかったらどうか。宝は天に積んではどうだろうか。



パナマ文書の公開は、世界各地のジャーナリストが力を集めて実現したのである。お金はもたないが、良識と正義感を持つ人たちの勝利だ。


資本主義の蔓延したこの世界の病んだ部分を切り開いてみせた、ジャーナリストの矜持を感じるのである・・・。