先日、日本の考古学についてのお話を聞いた。
スピーカーは、イギリスやスコットランドの博物館の学芸員と、九州大学の教授、溝口孝司さんであった。
彼は、アジア人で初の、世界考古学会議の会長に選ばれたばかり。ケンブリッジ大学に留学経験のある、英語の流暢な方だった。
実は日本は考古学では、世界の評価が大変に高いらしい。私も考古学と言えばイギリスなどの方が進んでいるのではないかと思ったが、つい最近日本の発掘現場や博物館の展示室を訪れたばかりの4名の英国の学芸員は、次々と日本の考古学を褒め称えた。
博物館での展示の方法、地域への教育的イベント、子供たちが触れたり、創ったりできる学習コーナー、文化財の保存方法など、「羨ましいほど素晴らしい」と口を揃える。大都市だけではなく、地方にも立派な博物館があり、その土地の考古学的価値のある文化財をしっかり守っている。
そして、いかに英国では国が考古学の分野に予算をケチるか、いかに日本では考古学に対して国や地方自治体が敬意をはらって予算を組んでいるかを力説していた。
日本の発掘現場では、考古学者でなくとも参加して発掘することができる。実は私も、高校生の時に発掘に参加し、3ヶ月ほど楽しんだ。もちろん最初に掘り出したものを勝手に持って帰ってはいけませんとか、シャベルで乱暴にほじってはいけませんとか、ちゃんと教育を受ける。しかも、日給まででるのだ。
イギリスでは、今はこういうことはありえないらしい。考古学者や、考古学を勉強している学生、それも学士の資格以上でないと、現場に踏み込ませてもらえないという。「日本の素晴らしいところは、一般の人に発掘現場をオープンにするところです!」と力説していた。
すると、スコットランドの学者が「いや、反対意見を言わせてもらう。私は発掘現場から素人を追い出す運動をしてきて、それが成功したことに満足している!」と言い出した。「重要文化財を、しろうとの労働者に扱わせるわけにはいかない!専門家の集団が責任をもってあたるべきだ!」と。
イギリスでセミナーなどに行くと、こうやって意見が真っ向からぶつかることが良くある。聞いているとハラハラするのだが、お互いに理論武装して、いかに自分の主張が正しいかを楽しんでいるかにみえる。うまく舵をとる司会も腕の見せ所だ。険悪になってきたら、ジョークでまとめることが多い。
私が手をあげて「でも私の友人のうち二人は発掘現場でアルバイトをして興味を持ち、そこを担当していた明治大学の考古学部に入学しましたよ」というと、大学の先生である司会が嬉しそうに、 Oh, well, perhaps that settles the debate....! などと言って、お開きにした。
以下は、毎日新聞の滝口教授の記事
http://mainichi.jp/opinion/news/20130221k0000m070110000c.html