【タイトル】
ノック・オフ(原題:Knock Off)
【概要】
1998年のアメリカ/香港/アルバ合作映画
上映時間は91分
【あらすじ】
ブランドもののジーンズの模造品を香港で売っていたマーカスは、ある日そのジーンズに小型爆弾を仕込んだという犯行声明を受け取る。
【スタッフ】
監督はツイ・ハーク
音楽はロン・メイル/ラッセル・メイル
撮影はマクシー・チン
【キャスト】
ジャン=クロード・ヴァン・ダム(マーカス・レイ)
ロブ・シュナイダー(トミー)
レラ・ローコン(カレン)
ポール・ソルヴィノ(ハリー)
【感想】
「ダブル・チーム(1997)」に続く、ツイ・ハーク監督とジャン=クロード・ヴァン・ダムのタッグ作。ツイ・ハーク監督はアメリカでの仕事に満足できずに、たった2作品でハリウッドを去ることになった。
レイの仲間であるトミーは割と序盤で「実はCIAのエージェントでした」と身を明かし、女社長のカレンが悪役と思いきや「私も実はCIAのエージェントでした」と身を明かし、トミーらと共に捜査していたCIAのハリーが「実は黒幕でした」と身を明かしていく。この90分程度の短い映画の中にこんなプロット必要かね。しかも伏線らしいものは何もない。仲間に裏切られたレイがCIAと共に敵と戦うとかそんなシンプルなプロットで良かったと思うわ。なぜトミーとカレンというCIA同士の二人が一時的にではあるが戦ってしまうことになるのか。いくら何でもアホすぎるだろう。それから、序盤で登場した香港の女刑事はどう見ても後に絡んできそうな扱いだったのに出番は序盤だけというのもしっくりこない。
そんなシンプルではないプロットを用意したもんだから、CIAのハリーがわざわざ組織を裏切ってまでやろうとしていることがちょっと見えてこない。もっとシンプルな「悪の組織」で良かったと思う。そうなったせいもあって肝心の悪役の側に印象的なキャラクターが全く存在しないという事態になってしまっている。黒幕ハリーを演じたポール・ソルヴィノがアクション出来ないとしたら、彼の二番手的なポジションにヴァン・ダムと対等に渡り合えるような俳優を持ってくるべきだった。
それからアクションシーンの見せ方もあまりうまくいっていない。時折変なインサートがあったり、残像が見える演出をしたり、中途半端なスローモーションを入れたりと、見ていて気になる箇所が多い。こんな映画と言ったら失礼かもしれないが、B級アクション映画に奇をてらった演出なんていらない。基本はシンプルが一番だと思う。
ヴァン・ダムのアクションシーンも見せ場はいくつも用意されている。中盤前の一対大勢のシーンはカメラが寄り過ぎたりカットを割り過ぎたりしている影響か、何をしているのか分かりづらい感じになっている。ヴァン・ダムらしいアクションも見られる個所はあるがちょっと少ない。本作のようなチンピラという設定でも、ヴァン・ダムなら「蹴り」をいかにカッコよく、美しく見せるかが大事。その点、本作はうまくいっていない。
そんな主人公も所詮は模造品を売る小悪党である。そんな彼がちょっと正義に目覚めるような感じになるのも微妙なライン。模造品を作っていた主人公の履いているジーンズにも小型爆弾が仕掛けられそのジーンズだけでなく服を脱いでいくレイ。まさに裸になるわけだ。この辺りに本作なりのドラマを描けたんじゃないだろうか。別に本格的に描かなくとも設定とかで少し感じさせるとかはできたはず。
ヴァン・ダムのアクション映画のストーリーなんてあってないようなもので十分だと思う。いかにアクションをカッコよく見せるか。その点、一時はともに「男たちの挽歌(1986)」などで共闘したジョン・ウーは「ハード・ターゲット(1993)」でヴァン・ダムをカッコよく見せることに成功している。
ちなみに余談だが、本作の製作国に名を連ねているアルバはオランダがカリブ海に領土を持つ国の一つである(ほかにはキュラソーとシント・マールテン)。どういう経緯でアルバが製作国に名を連ねたのかまでは分かりかねるが、何かしらの形でアルバにある製作会社が携わることになったのだろう。IMDbでアルバが製作国に入っている映画は40本しかなく、本作はそのうちの1本だ(ほかにはセガール主演の「沈黙の標的(2003)」など)。本当に余談でした。
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