【作品#0893】愛と憎しみの伝説(1982) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

愛と憎しみの伝説(原題:Mommie Dearest)

 

【概要】

 

1981年のアメリカ映画

上映時間は129分

 

【あらすじ】

 

ハリウッドで活躍した女優ジョーン・クロフォードがクリスティーナを養女として迎えてからの生涯を描く。

 

【スタッフ】

 

監督はフランク・ペリー

音楽はヘンリー・マンシーニ

撮影はポール・ローマン

 

【キャスト】

 

フェイ・ダナウェイ(ジョーン・クロフォード)

ダイアナ・スカーウィッド(クリスティーナ・クロフォード)

 

【感想】

 

女優ジョーン・クロフォードの養女クリティーナが出版した暴露本「親愛なるマミー」を原作にした作品。当初はフランコ・ゼフィレッリ監督、アン・バンクロフト、ミア・ファロー出演で話が進んでいたがいずれも降板している。終盤に成人したクリストファー役で出演したザンダー・バークレイにとって初の映画出演となった。

 

ジョーン・クロフォードを演じたフェイ・ダナウェイは本作の演技でアカデミー賞を受賞できると考えていたが、映画の評判が悪く、彼女は後にインタビュー等で本作のことを話題にすると席を立ってしまうほどである。ちなみに、「No Wire Hangers‼」と叫ぶセリフは2005年にAFIが発表した名セリフベスト100で82位にランクインしている。

 

ラジー賞を受賞したとかそういう悪評が先行するが、いざ鑑賞してみると映画としてそこまでダメな作品ではないと思う(良い映画とも決して言えないが)。仮に事実通りだったとしても確かにフェイ・ダナウェイはちょっと演技過剰だと思う。暴露本を発表したクリスティーナ本人でさえ、「ここまでではなかった」と語っているほどだし、ジョーン・クロフォードのライバルにして数々の逸話を残したベティ・デイヴィスをしてもこの暴露本については批判している。

 

ジョーン・クロフォードは1904年生まれであり、最初に養女を迎えたのは1940年のことなので彼女が36歳の頃である。養女を迎えるまでに2度の結婚をしていたが、子供はいなかった。子宝に恵まれなかったのか、子供を作るつもりがなかったのか、はたまたそれ以外の何か理由があったのかは分からないが、子供が欲しくなったのは映画の冒頭で示される。

 

ただ、ジョーン・クロフォードの女優としての描写にも関連しているように、やはりトップであること、注目を集めること、認められることが彼女の最大の欲求だったように思える。「ギャラが高い割に稼げない女優」のレッテルを張られた時期もあった。それでも「ミルドレッド・ピアース(1945)」でアカデミー賞の主演女優賞を獲得するほどに復活を遂げるのだからその執念はすごいものがあったのだろう。

 

また、何事にも完璧を求め、お手伝いさんがいながら気になったら掃除を始めてしまうその性格は行っちゃ悪いが子育てには向いていない性格だったように思える。子供という不完全の塊みたいな存在に対してあれもこれも自分の求める「完璧」を常に要求する。自伝本のタイトルにあるように子供たちが「ママ」という度に「親愛なるマミー(Mommie Dearest)」と呼ばせている。そのイライラが頂点に達してジョーン・クロフォードが奇声を発し始めると、子供たちは布団を被ってしまうほどだ。特にクリーニング店から引き取った衣類がワイヤーハンガーにかかったままでブチ切れるシーンや、真夜中に庭のバラの花だけでなく木ごと切り始めるシーンはもはやコメディである。

 

ところが、家族そろってのインタビューシーンとなると、子供たちは完璧な受け答えをし、粗相のないように訓練されているのが伝わってくる。このギャップもどこか可笑しい。

 

そんな養子たちの幼少時代が終わると彼らが成人してからの時代に移行する。こんな育てられ方をして素直な人間に成長するわけもなく、養女クリスティーナは少しずつ反抗していく。家で大事なインタビューがあるからと釘を刺されてもクリスティーナはインタビュワーの前でも母親に反抗し、ついにジョーン・クロフォードはクリスティーナを殴り馬乗りになって首を絞めようとする。そこへお手伝いさんやインタビュワーが止めに入り、ジョーン・クロフォードはわめき散らす。

 

そして、娘が病気でドラマに出演できないとなると、20代の役を彼女の母親であるジョーン・クロフォードが演じてしまうのだ。しかも彼女は何度もカンペを見ており、休憩に入るとカンペの一の高さを気にしている。病気の娘のためにセリフを一生懸命覚える気はないようだ。娘の代わりに自分が目立てばそれでいいのだ。他人には完璧を求めておきながら、この仕事ぶりはどう見てもいい加減だ。

 

仮に実態がここまでではなかったとしても人間の「愛と憎しみ」とは何なのかと思わせる。これだけの仕打ちを受けてもクリスティーナは母のもとに戻ってきている。彼女なりにどこか愛を感じている部分もあったのかもしれない。また血の繋がった親子ではない養子でもある。彼らなりの歪んだ愛の形だったのだろう。クリスティーナは授賞式で母親への感謝を述べ、それをテレビで見るジョーン・クロフォードも涙を流して喜んでいる。

 

そして次のカットでジョーン・クロフォードは亡くなり、クリスティーナとクリストファーは弁護士から遺産についての話を聞くことになる。すると、ジョーン・クロフォードはクリスティーナとクリストファーには遺産を残さないというのだ。映画的にはさっきクリスティーナの感謝の言葉に涙して喜んでいたじゃないか。何というフリとオチ。そりゃクリスティーナも呆れて苦笑いしてしまうわ。

 

たとえ事実通りでなかったとしても、人によっては愛と憎しみが紙一重でありその受け止め方もそれぞれであると感じる。フェイ・ダナウェイはどう見てもやり過ぎなんだが、それ故にインパクトある一本にはなったと思う。ラジー賞という色眼鏡なしに鑑賞してみてほしい。あと、できればジョーン・クロフォードとベティ・デイヴィスが主演した「何がジェーンに起ったか?(1962)」の鑑賞とそれにまつわる裏話を知ったうえで見るのをお勧めしたい。

 

 

 

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