【作品#0844】コラテラル・ダメージ(2001) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

コラテラル・ダメージ(原題:Collateral Damage)

【概要】

2002年のアメリカ/メキシコ合作映画
上映時間は108分

【あらすじ】

テロによって妻子を失った消防士のゴーディは、アメリカがテロを起こしたコロンビアのゲリラ組織と和平交渉を優先する姿勢を見せたことから、単身コロンビアへ向かうことを決意する。

【スタッフ】

監督はアンドリュー・デイヴィス
音楽はグレーム・レヴェル
撮影はアダム・グリーンバーグ

【キャスト】

アーノルド・シュワルツェネッガー(コーディ)
イライアス・コティーズ(ピーター)
フランチェスカ・ネリ(セリーナ)
クリフ・カーティス(ウルフ)
ジョン・レグイザモ(フェリックス)
ジョン・タートゥーロ(ショーン)

【感想】

当初は2001年10月5日に公開予定だったが、アメリカ同時多発テロを受けて2002年2月8日に延期された。また、その影響でソフィア・ベルガラが演じたテロリストが旅客機をハイジャックするシーンはカットされた。また、当初の脚本では主人公の家族を殺したテロリストがアラブ系でリビアが舞台となる予定だったらしい。8,500万ドルの製作費が投じられたが、全世界で7,800万ドルの売り上げに留まった。

アーノルド・シュワルツェネッガーは「(息子にとっての)良き父親像」を自らプロデュースしてきた。「ターミネーター2(1991)」で子供を命懸けで守るキャラクターを演じて大成功を収め、以降も「ラスト・アクション・ヒーロー(1993)」で自らのファンを名乗る少年との掛け合いを描き、「ジュニア(1994)」では身籠り!?、「ジングル・オール・ザ・ウェイ(1996)」では息子へのプレゼントを買うために奔走し、「シックス・デイ(2000)」でも幸せな家庭を築いていた(やっと娘!!)。

本作では冒頭に愛する妻と息子をテロによって亡くしている。そして、ラストでは死んだテロリスト夫妻の息子を預かっている(「フェイス/オフ(1997)」と似たようなオチ)。アーノルド・シュワルツェネッガーは体の大きな父なる存在として映画内で君臨したいようだ。

そんな本作はコロンビアの組織だけを悪として描いておらず、アメリカも同罪であるという描かれ方である。タイトルの「コラテラル・ダメージ(副次的な被害)」は冒頭のアメリカの場面だけでなく、コロンビアでのアメリカによる攻撃も含まれるはずだ。テロに対する報復として同等のダメージを与えるというのは間違っていないようにも思えるが、やはり民間人にまで被害者を出すのは違うだろう。テロリストの息子を主人公が助けるというオチから考えると本作は政治的な内容になるはずだったのだろう。

ところが、上述のように公開直前に発生したアメリカ同時多発テロの煽りを受けて、内容は修正されている。それでも、メインプロットは変わらないだろう。テロで妻子を失った主人公が単身テロリスト退治に行き、テロリストの妻を連れて帰ってくるがそれが罠でアメリカ国内で危うく大きな犠牲者を出すところだった。最後に主人公がテロリストをやっつけるというオチを用意しているから辛うじて成立しているが、テロの犠牲者遺族の暴走によって再びアメリカが危機に陥る可能性があったのだ。本作の主人公を見ていると、「騙された俺が馬鹿だった」と思うような描写はない。物語の展開から考えるとそんなことを考えて落ち込んだり悩んだりする余裕がないのは分かるが、一時の感情で暴走した結果がこれである。これが表沙汰になれば主人公に同情していた世論も変化することだろう。

一応主人公に同情しておくのなら、アメリカ政府が報復ではなく和平交渉を望んでいたことだろう。政府のことを生温いと思って「それなら俺が」と思う人がいてもおかしくはない。ただ、テロの被害者遺族がテロ組織に何を望むのかは分かりかねる。報復を望むものもいれば、これ以上人の命が犠牲になることを望まない人もいるだろう。その点から考えるとテロの被害者遺族が主人公だけというのはいかがなものか。せめて他の犠牲者遺族の意見が映画内で描かれるべきではないか。

こんな内容になるのなら主人公がアーノルド・シュワルツェネッガーで正解だったとは思えない。派手なアクション映画にしてしまうのなら、こんな政治的な内容は排除すべきだと思うし、アーノルド・シュワルツェネッガーが人気の衰えから役の幅を広げるために出演したのだとしたら失敗だと思う。また、仮にアメリカ同時多発テロの影響を本作が受けない状態で公開されていたとしても成功したとは言えないだろう。




取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語)


【ソフト関連】

<BD>


言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え
音声特典
├アンドリュー・デイヴィス(監督)による音声解説
映像特典
├メイキング
├ドキュメンタリー:新しい時代のヒーロー
├未公開シーン
├オリジナル劇場予告編