【作品#0827】イングリッシュ・ペイシェント(1996) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

イングリッシュ・ペイシェント(原題:The English Patient)

【概要】

1996年のアメリカ/イギリス/イタリア合作映画
上映時間は162分

【あらすじ】

第二次世界大戦末期のイタリア。看護師のハナは火傷を負い自分の名前を思い出せない患者をとある修道院で看病していた。そこへドイツ軍に両手の親指を切断される原因となった写真を撮影した男を追うカラヴァッジョがやって来る。

【スタッフ】

監督/脚本はアンソニー・ミンゲラ
音楽はガブリエル・ヤレド
撮影はジョン・シール

【キャスト】

レイフ・ファインズ(アルマシー)
ジュリエット・ビノシュ(ハナ)
ウィレム・デフォー(カラヴァッジョ)
クリスティン・スコット・トーマス(キャサリン)
コリン・ファース(ジェフリー)

【感想】

マイケル・オンダーチェが1992年に発表した「イギリス人の患者」の映画化。アカデミー賞では作品賞含む計9部門を受賞した。

結局のところ、本作で何を描きたかったのかはピンとこなかった。この感覚や上映時間の長さは「愛と哀しみの果て(1985)」を思い出させる。監督が音声解説で語っているように主役が何人もいる映画という感じである。なので、アカデミー賞やゴールデングローブでレイフ・ファインズが主演賞にノミネートされるのは理解できるが、ジュリエット・ビノシュが助演賞で、クリスティン・スコット・トーマスが主演賞なのかという感じである。逆でも良いし、どっちも主演でも良いし、どっちも助演でも良いような。少なくとも主演と準主演を入れると最低でも4人はいるような印象である。

また、映画は現代と過去の回想シーンを交互に描きながら進んでいく。この構成自体は悪いと思わないが、交互に描かれた二つのドラマがそれぞれ決して力強くはなく、最後に結実する印象はまるでない。

特に映画的な現在ではアルマシーとハナ、回想シーンではアルマシーとキャサリンの恋や愛を描いていく。映画の序盤の地点ですでに、アルマシーはキャサリンを、ハナは前線に行った恋人を亡くし、車での移動中に友人も亡くしているという設定だ。全身やけどで記憶をなくしているというアルマシーが動きに乏しいのは当然として、ハナは次々に大切な人を失う経験が立て続いたことで、見捨てられそうになったアルマシーを何とか助けてあげようという気持ちになったのだろうと推測することはできる。実感は後から湧いてくるように、ハナが感情的になって涙するのは映画的には少し後である。

上述のように本作では二つのロマンスを交互に描いていったわけだが、どちらのロマンスも共感したり感動したりといった印象はまるでない。キャサリンに関しては既婚者なので不倫だし、ハナとの関係は傷ついた者同士が肩を寄せ合っているような印象だ。特に本作で時間を割いて描いたアルマシーとキャサリンの不倫はよく分からなかったな。美男美女同士が惚れ合っただけにしか見えなかった。

キャスティングについては皆が印象的だった。火傷痕のアマルシーから急に数年前に遡った火傷前のレイフ・ファインズの男前さよ。本作以降、レイフ・ファインズは確実に本作のイメージからキャスティングされた映画はいくつもある(「ことの終わり(1999)」や「ナイロビの蜂(2005)」など)。

撮影や音楽などは素晴らしかったと思うが、肝心の物語が…というのは繰り返しになるがやはり「愛と哀しみの果て(1985)」に近い印象である。また、アカデミー賞作品賞受賞作だが、この年は決定打に欠ける年だったのかもしれない。

【音声解説1】

参加者
├アンソニー・ミンゲラ(監督)

監督のアンソニー・ミンゲラによる単独の音声解説。7~8年ぶりに鑑賞したと語っているのでDVD特典用に収録されたものだろう。

当初の編集版の話、オープニングが決まっておらず急遽決めた話、アフレコを使ったロングショットの場面の話、出演したクリスティン・スコット・トーマスの親が飛行機事故で亡くなっていたという過去を持っていたという話、本作には色んな主役がいるといった話など饒舌に語ってくれる。本作が気に入ったのなら聞いてみるべき音声解説だろう。

【音声解説2】

参加者
├アンソニー・ミンゲラ(監督)
├ソウル・ゼインツ(製作)
├マイケル・オンダーチェ(原作)

上記3名による対話形式の音声解説。映像化する上での原作からの改変箇所について監督、製作、原作者という異なる3者の立場から意見を聞くことができ
る。撮影の順番、ロケ地にセットを作った話、キャスティングや俳優が拘っていた箇所の話、公開後の反応などについて聞くことができる。



取り上げた作品の一覧はこちら



【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語/ドイツ語/イタリア語/アラビア語)
├日本語吹き替え
音声特典
├アンソニー・ミンゲラ(監督)による音声解説
├アンソニー・ミンゲラ(監督)、ソウル・ゼインツ(製作)、マイケル・オンダーチェ(原作)による音声解説


<BD>

言語
├オリジナル(英語/ドイツ語/イタリア語/アラビア語)
├日本語吹き替え
音声特典
├アンソニー・ミンゲラ(監督)による音声解説
├アンソニー・ミンゲラ(監督)、ソウル・ゼインツ(製作)、マイケル・オンダーチェ(原作)による音声解説
映像特典
├原作者マイケル・オンダーチェに迫る
├キャスト&スタッフ インタビュー
├製作のソウル・ゼインツについて
├実在のアルマシー伯爵について
├製作スタッフが作品を語る:アンソニー・ミンゲラ(脚本/監督)/
ソウル・ゼインツ(製作)/マイケル・オンダーチェ(原作)/ウォルター・マーチ(編集)
├プロダクション・デザイナー スチュアート・クレイグが語る
├スチール・カメラマン フィル・ブレイが語る
├未公開シーン集(アンソニー・ミンゲラによる解説付き)
├CBSドキュメンタリー:メイキング・オブ「イングリッシュ・ぺイシェント」
├キャスト