【作品#0813】ハルク(2003) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ハルク(原題:Hulk)

【概要】

2003年のアメリカ映画
上映時間は138分

【あらすじ】

学者のブルース・バナーは実験中に大量のガンマ線を浴びたことで怒りの感情を抱くと緑色の巨大なモンスター「ハルク」に変身してしまうことになる。

【スタッフ】

監督はアン・リー
音楽はダニー・エルフマン
撮影はフレッド・エルムズ

【キャスト】

エリック・バナ(ブルース・バナー/ハルク)
ジェニファー・コネリー(ベティ)
サム・エリオット(ロス将軍)
ジョシュ・ルーカス(タルボット)
ニック・ノルティ(デヴィッド・バナー)

【感想】

ハルクのファンであるエドワード・ノートンは本作のオファーを受けたが脚本が気に入らずに断っている。そして、後にマーベル・シネマティック・ユニバースの2作目「インクレディブル・ハルク(2008)」に彼はハルク役で出演することになった。

批判を浴びたように非常に暗い物語。本当に暗いだけであり、孤独に苛まされる主人公の物語という感じではない。アン・リー監督は「フランケンシュタイン(1931)」などの物語を参考にしたと語っているが、だとしたら主人公のハルクは悲しきモンスターでなければならないはずだ。なのに、ハルクが市民からもベティからも嫌われたり距離を置かれたりする描写が皆無なのはおかしい。ブルース・バナーは両親ともに死んだと聞かされて大人になり、そして死んだはずの父親は生きておりその父親のせいで怒りを制御できなくなると巨大なモンスターであるハルクになってしまうのだ。これほどまでに悲しきモンスターの条件が揃っているのに、一般市民に迷惑をかけて過剰に嫌われたり、善意のつもりでしようとしたら襲われたと勘違いされたりといったことはない。また、ブルースに思いを寄せるベティも割と早々にハルクを受け入れている。彼女も最初はブルースへの思いはありながらもなかなか受け入れられないといった内面を描くべきだったと思う。

主人公のブルースと親しくしていたベティ、それから彼の父親の物語として描きたかったのは伝わってくる。ところがこの辺りもちゃんと描けたように感じない。そもそも父親も色々と抱え込みすぎだわ。息子のブルースからは死んだと思われており、かつては自分の体を実験台にしたほどの男である。そんな男が息子のために体を張るわけだが、こうなりゃ父親のデヴィッドを主人公にした物語にでもすればよかったのにと思うほどである。

それから本作の悪役のNo.2はタルボットである。ベティーの元恋人でベティーをスカウティングするなど鬱陶しいキャラクターである。映画的には殺されて然るべきキャラクターであるが、この暗いテイストなのタルボットの死に方はコメディそのものである。あの描き方はてっきり生きているものと思ったわ。

また、コミックのイメージを映像に落とし込もうとしたであろうスプリットスクリーンも特段映画を面白くしたり盛り上げたりする要素にはなっておらずむしろ雑音である。また、場面転換時の演出のバリエーションもかなり鬱陶しい。ある程度統一すべきだった。

あれもこれもキャラクターを描いて138分も費やした割には薄っぺらい印象に残らない作品になってしまった。タルボットは途中退場するくらいなら最初から出さなくても良かったくらい。ブルースに心を開いてもらえなかったベティ、ナノメッドを浴びて怒りと同時にモンスターと化してしまうブルース、ブルースには死んだと思い込まされている父親のデヴィッド。この3人共が孤独を抱えるという共通点がありながらもその観点はほとんど無視されたような作りになってしまっている。そもそもこういったところを描く気すらなかったのだろうか。何一つうまくいかなかった失敗作。

【関連作品】


「ハルク(2003)」
インクレディブル・ハルク(2008)



取り上げた作品の一覧はこちら



【ソフト関連】

<BD>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え
音声特典
├アン・リー(監督)による音声解説
映像特典
├マイ・シーンズ
├未公開シーン
├メイキング
├ハルクの変遷
├超人アン・リー
├ドッグ・ファイト

├編集技術
├“怒りが生まれる時”


<4K Ultra HD+BD>

収録内容
├上記BDと同様