【作品#0719】イコライザーTHE FINAL(2023) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

イコライザーTHE FINAL(原題:The Equalizer3)

【概要】

2023年のアメリカ/イタリア合作映画
上映時間は109分

【あらすじ】

イタリアのシチリア島でマフィアを襲撃したロバート・マッコールは敵の子供の放った銃弾に倒れるが、なんとかイタリア本島まで辿り着き、心ある医師によって助けられる。傷の癒え始めた頃、マッコールはCIAのエマにシチリア島のワイナリーを調べるように連絡する。

【スタッフ】

監督はアントワン・フークア
音楽はマーセロ・ザーヴォス
撮影はロバート・リチャードソン

【キャスト】

デンゼル・ワシントン(ロバート・マッコール)
ダコタ・ファニング(エマ・コリンズ)

【感想】

アントワン・フークア監督、デンゼル・ワシントン主演による「イコライザー」シリーズの3作目は、彼らにとって5度目のタッグ作品となった。また、デンゼル・ワシントンとダコタ・ファニングは「マイ・ボディガード(2004)」以来、19年ぶりの共演となった。また、前作を上回る7千万ドルの製作費に対して、全世界で1億7千万ドルと全2作品から若干売上を落としたことになる。

まず、前作から5年が経過してデンゼル・ワシントンは68歳を迎えているが、見た目の大きな変化はなく、彼が主演することでこのシリーズらしさはしっかり担保されている。一般的に白人よりも黒人のほうが肌がきめ細やかで老けにくいことで知られているが、にしてもデンゼル・ワシントンはとにかく若々しい。それが彼の強さにもしっかり直結していると思う。

上述のようにデンゼル・ワシントンとダコタ・ファニングは「マイ・ボディガード(2004)」以来の共演となった。デンゼル・ワシントンはそれほど見た目に変化はないが、当時10歳だったダコタ・ファニングは29歳になり、子役から大人の女優に変貌している。

本作が「マイ・ボディガード(2004)」に関連する箇所は探せば見つかる。まず、「マイ・ボディガード(2004)」の原作「燃える男」は映画のメキシコと違いイタリアが舞台であり、最初の映画化作品「燃える男(1987)」も同様にイタリアが舞台である。また、ロバート・マッコールが自身に銃を向けるのと同様の場面は「マイ・ボディガード(2004)」の中にもある。

ただ、ダコタ・ファニングが演じたCIAのエマは登場させる意味があったのかと思えるほどにあらゆる意味で存在感が薄い。別に彼女が登場しなくたって物語は進められたはずである。映画の最後に、前作亡くしたマッコールの友人スーザンとブライアンの間の娘であることが明かされたことで、「だからマッコールはエマを指名したんだ」と明かされることになる。その観点で映画を振り返っても、エマがマッコールの旧友スーザンの娘である以外に特段意味はなく、エマが登場したことで物語が展開することも特にない。

マッコールはわざわざスーザンの娘であるエマに情報をリークして現場経験のない彼女を現場に引っ張り出した。その結果、エマは爆破に巻き込まれて入院するほどの大怪我を負った。更にはマッコールから本を渡されており、これはマッコールが亡くした妻が読んでいた「読むべき100冊の本」に挑戦していたことからも分かるように、マッコールの役割を引き継がせようとしているようにも見える。だとしたら、マッコールは現場経験のないエマを現場に引きずり出して、危険な目に合わせて引退を促しているのか。ちょっと何がしたかったのかがよくわからんぞ。

映画はイタリアのシチリア島で始まり、イタリア本島で終わる。CIAのエマのパートでアメリカの様子が描かれることはあっても、主人公のロバート・マッコールは終始イタリアにいることになる。なぜ彼がイタリアにわざわざやってきたのかは映画の最後まで分からないが、前2作品が基本的にアメリカで完結する物語だったことを考えるとややモヤモヤした気持ちのまま映画が進んでいくように感じた。

瀕死の重傷を負った流れ者の主人公がその地で心ある住人に助けてもらい、その地で起こっているトラブルを解決していくというのは西部劇でよく見かけた設定である。また、本作のようなハードボイルドさは、舞台となるイタリアで流行ったマカロニウエスタンのようである。現代劇でマカロニウエスタンっぽい雰囲気や設定というのは良かったと思う。

ただ、本作がシリーズの中で最も物足らないのはアクションシーンである。本作にはアクションシーンと言える場面はせいぜい3場面である。しかも、そのどれもがあっという間に完結してしまう。これはもちろんロバート・マッコールが超人だからなのだが、それでもまだ前2作品にはアクションを見せようという気概を感じられた。本作のアクションを見ると、ロバート・マッコールが進化したというより、俳優デンゼル・ワシントンの体の衰えをまるで隠したのではないかと思うほどにあっさりしている。彼のアクション目当てで見に来た観客にはさぞガッカリされたことだろう。

この点を敢えて好意的に解釈すると、70年代アクション映画への回帰ではないかというところである。かつての時代のアクション映画もアクションシーンだけを切り取れば案外少なかったものだ。そういうところが狙いだったのだとしたら狙い通りうまくいっているかもしれないが、過去2作品のアクションの質と量を考えると物足らないと思われても仕方がない。

また、前作の悪役がかつての同僚になったことで「いつもの」アクション映画になってしまっていた。その点、本作は1作目と同様に地元の街のチンピラになっているところは良い。

映画の最後になって、ロバート・マッコールがわざわざイタリアにやってきた理由、CIAのエマを指名した理由が明かされる。ここまで引っ張る必要があったのかと思う。少なくともイタリアに来た理由は序盤に示しておいたほうがすんなり物語に入れたと思う。

流れ者の男がその地で事件を解決するなんて西部劇のお約束ではあるが、ロバート・マッコールは最後にその地にとどまる決断をしているように見える。彼はなぜここを安息の地としたのか。観客の想像に任せるにしてはちょっと見えてこないな。

劇場では公開初日に鑑賞したのだが、数組が映画中盤で劇場を後にし、エンドクレジットに入ると多くの観客が劇場を後にした。私の勝手な印象だが、映画が面白かったり感動したりと満足度が高いと観客はエンドクレジットまで付き合ってくれるが、そうでもないと早々に劇場を後にするように思う。その点において、観客満足度も低かったんじゃないだろうか。世界的な売上もまずまずで、評価もそこまで悪くないようだが、この路線なら続けるのは厳しいのではないだろうか。

 

【関連作品】

 

イコライザー(2014)」…シリーズ1作目

イコライザー2(2018)」…シリーズ2作目

「イコライザーTHE FINAL(2023)」…シリーズ3作目

 

 


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