【作品#0672】ビューティフル・マインド(2001) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ビューティフル・マインド(原題:A Beautiful Mind)

【概要】

2001年のアメリカ映画
上映時間は135分

【あらすじ】

ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュの生涯を描く。

【スタッフ】

監督はロン・ハワード
音楽はジェームズ・ホーナー
撮影はロジャー・ディーキンス

【キャスト】

ラッセル・クロウ(ジョン・ナッシュ)
ジェニファー・コネリー(アリシア・ナッシュ)
エド・ハリス(パーチャー)
クリストファー・プラマー(ローゼン)
ポール・ベタニー(チャールズ)
アダム・ゴールドバーグ(ソル)
ジョシュ・ルーカス(ハンセン)
ジャド・ハーシュ(ヘリンジャー)

【感想】

ノーベル経済学を受賞したジョン・ナッシュを描いた本作は、アカデミー賞で作品賞含む4部門を受賞するなど大きな評価を得た。また、ラッセル・クロウが演じやすくするために、映画制作では珍しい順撮りの手法が用いられた。

中盤になって初めて観客には、ジョン・ナッシュが幻覚を見ており、パーチャーやルームメイトのチャールズと姪っ子は彼にしか見えていないことが分かる。以降は、ジョン・ナッシュがこの病気とどう付き合っていくか、またその間に結婚して生まれた子供をどう育てていくかというドラマパートに移行していく。

本作はジョン・ナッシュと妻のアリシアのラブストーリーでもある。女っ気のないジョンにアリシアは最初から興味を示しており、気付けば両想いになっていたような印象を受ける。彼らがお互いのどこに惚れ合ったのかは本作を鑑賞しただけでは伝わってこなかったな。その割に彼らのパートは時間をかけて描かれているとは思うが、ジョンの抱えた病気の重さを考えるとラブストーリーとしてはかなり淡泊であったように思う。

また、大学在学中にライバル視していたハンセンはジョンが病気になって以降は登場することなく、終盤になってようやく久しぶりに画面に顔を出す。ハンセンはジョンのことを「友達」だと言っていたが、ジョンと友達らしく交流していた様子が描かれたのはソルくらいだった。実際がどうだったかまでは分かりかねるが、ハンセンが重要な役割を担う終盤のパートに突然現れてもなぁと思う。これだったら病気の彼を見舞う場面でも入れておけば良かったと感じる。

そして、ラストには史実通りジョン・ナッシュにノーベル賞が授与される。ラストで主人公に浴びせられる拍手。同じアカデミー賞作品では「タイタニック(1997)」と同様だ。本作の描き方だと「病気を抱えながらもよく頑張りました」という印象を受ける。ちなみに、ジョン・ナッシュ本人は幻聴の症状はあったそうだが、幻覚はなかったようなのでこれは映画用に作られた話である。

また、ジョン・ナッシュはバイセクシャルであり、反ユダヤ主義の思想の持主であった。そして、アリシアはヒスパニック系にもかかわらず白人のジェニファー・コネリーがキャスティングされている。この辺りは公開当時から批判の声もあったそうだが、もし本作が20年遅く製作されていれば逆にその辺りをテーマにした作品になったのだろうと思う。もし映画賞目当てで、ある事情にあえて触れずに製作したのだとしたら、製作陣は「ビューティフル・マインド」を持った人間と言えるのだろうか。少なくとも20年以上経過したことで古びた作品になってしまったのは否定できない。

で、タイトルの「ビューティフル・マインド(原題:A Beautiful Mind)」である。単数形であることからこの「美しい心」の持ち主はジョン・ナッシュであろう。「病気や障害を抱えている人」=「良い人」みたいな安易な表現になっていないだろうか。

また、見た目で気がかりなのはラッセル・クロウの太い腕である。特にランニングシャツで授業をする場面では彼の鍛えたからこその太い腕が丸出しである。ジョン・ナッシュ本人の写真を見ると割と華奢な方だし、スポーツと縁のなさそうな彼の腕が太いのは気にはなる。これはもちろん本作の前年に演じたラッセル・クロウが「グラディエーター(2000)」に出演していたからに他ならないのだが。

ロン・ハワードの監督作品で実話ベースと言えば「アポロ13(1995)」がある。あちらも本作と基本的には同じで、主人公が苦しみながらも頑張りましたという話であった。また、あちらも本作同様に映画用の脚色は多数ある。それでも「アポロ13(1995)」には素材の良さがあり、あれだけのキャストやスタッフが集結すればそれなりのものができるだろうというのが私の感想だった。

本作に関しては実話としての面白さは「アポロ13(1995)」ほどではないし、バイセクシャルや反ユダヤ主義の思想を持っていたことを描かず、「病気と闘いながらも頑張りました」という話にしちゃった以上、どうしても美談に見えてしまった。やはりもっと正直に描くべきだったし、特に彼らが惚れ合う過程はもっともっと丁寧に描くべきだったと思う。良い演技も良い撮影も良い音楽もあるのに、製作陣のアプローチの時点で腰が引けていたらダメだわな。仮に実際がどうったかを知らずに本作を見て感動したとしても、後に事実を知ってガッカリするタイプの映画はやっぱり駄目な映画なんだと思う。

【音声解説1】

参加者
├ロン・ハワード(監督)

監督のロン・ハワードによる単独の音声解説。ラッセル・クロウや他の若手俳優の演技、順撮りに関連する話(プリンストン大学に何度も足を運ぶことになったことなど)、実際と映画との違い、ナッシュが幻覚を見る際は必ずそのキャラクターの声から場面が始まること、削除するつもりだったが残した場面の話、ジェームズ・ホーナーの音楽などについて語ってくれる。

【音声解説2】


参加者
├アキヴァ・ゴールズマン(脚本)

脚本を担当したアキヴァ・ゴールズマンによる単独の音声解説。脚本家からの視点で、物語の再構成、脚本を書いて撮影もしたが削除した場面の話、俳優の印象、音楽の魅力、物語の転換点、病気の話の中に盛り込んだユーモアなどについて語ってくれる。



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【配信関連】

 

 

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言語

├オリジナル(英語)

 

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言語

├日本語吹き替え

 

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├ロン・ハワード(監督)による音声解説

├アキヴァ・ゴールズマン(脚本)による音声解説

映像特典

├未公開シーン

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え