【タイトル】
白い恐怖(原題:Spellbound)
【概要】
1945年のアメリカ映画
上映時間は111分
【あらすじ】
精神病院の新しい院長に赴任したエドワーズ医師だったが、奇妙な発言や行動を取ったことで病院の医師たちから怪しい目で見られてしまう。その後、彼はエドワード医師と別人であることが判明し、仲を深めたコンスタンスとともに真相究明に動く。
【スタッフ】
監督はアルフレッド・ヒッチコック
音楽はミクロス・ローザ
撮影はジョージ・バーンズ
【キャスト】
イングリッド・バーグマン(コンスタンス)
グレゴリー・ペック(ジョン・バランダイン)
レオ・G・キャロル(マーチソン院長)
マイケル・チェーホフ(ブルロフ博士)
【感想】
アカデミー賞では作品賞含む6部門でノミネートされ、ドラマ・コメディ音楽賞を受賞した。ちなみに、主人公が幻想を見る場面の演出にはサルヴァトール・ダリが協力している。
ヒッチコック作品の多くにロマンスは登場するが、しっかりロマンスを描ける作家であるとは感じない。本作においても、もしかしたら人を殺したことのあるかもしれない男に、イングリッド・バーグマン演じるヒロインのコンスタンスがあっさり惚れてしまうところにはドラマはない。精神病院で働く医師という立場を捨ててまでこの男のために行動するほどのものは感じなかった。
ちなみに、精神科医の女性が犯罪者の男性(実は違う)と真相解明のために動き、途中から女性の側が積極的に動いていく様子は、後の「12モンキーズ(1995)」と同じである。「12モンキーズ(1995)」は「めまい(1958)」の影響も大きいが、基本プロットは本作の方が近しいかもしれない。
また、精神分析というもの自体がそれほど浸透していなかったからか、冒頭には精神分析が何をもたらすのかの説明文が表示される。当時の観客には目新しいものだったのかもしれないが、2023年現在に見ると、患者のトラウマとなるものを強引に触れさせ、気合と根性で治療するように見えるところはどう見てもおかしい。IMDbによると、本作には精神分析のアドバイザーも参加しているようなので、これが当時の治療の当たり前だったのだろうか。なんなら冒頭のコンスタンスが診察室に患者を招く場面でタバコまで吸っているのだから、まだまだ患者に寄り添う姿勢がなかった頃なのだと感じる。
そんなこんなで、グレゴリー・ペック演じる謎の男が抱えるトラウマをコンスタンスが強引にほじくり返したことで事の真相に辿り着いていく。サルヴァドール・ダリが参加したという夢の場面はなかなか印象的ではあるが、夢で見たものやトラウマを辿っていったからといってそんなに真相が見つかるものかと思う。というか、自分の職が奪われたからと言ってその男を背後から銃殺するかね。事の真相も拍子抜けするし、そんなことを平気でできる男が最後に自殺するとも思えない。この辺りの物語の運び方はかなり強引に感じる。
結局のところ、女医(精神科医)という地位の高い職業で行動的な女性キャラクターを主人公に据えたのに、魅力的な男が現れたらたとえ精神科医であったとしても女性はいとも簡単に男の虜になってしまうと言いたげにも見える。もしかしたら殺人を犯したかもしれない男に惚れて、その男のために自らが医師であることを忘れてしまう。たとえグレゴリー・ペックが良い男であったとしても、たった半日程度の付き合いでそこまで思えるかね。どうも女性が軽く見られている気がしてならない。
精神分析という当時の観客にはあまり馴染みのないものをサルヴァドール・ダリの世界と共に提示したのはなかなか興味深いが、主演の2人にしても犯人にしても彼らの人間がきっちり描かれた気はしない。
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