【タイトル】
断崖(原題:Suspicion)
【概要】
1941年のアメリカ映画
上映時間は99分
【あらすじ】
陽気な男ジョニーは、富豪の娘リナを口説き、彼らは駆け落ち同然で結婚することになる。新居に落ち着いたところでリナはジョニーが金も仕事もない男だと気付く。
【スタッフ】
監督はアルフレッド・ヒッチコック
音楽はフランツ・ワックスマン
撮影はハリー・ストラトリング
【キャスト】
ケイリー・グラント(ジョニー)
ジョーン・フォンテイン(リナ)
ナイジェル・ブルース(ビーキー)
【感想】
「レベッカ(1940)」に続いてヒッチコック作品に起用されたジョーン・フォンテインはアカデミー賞主演女優賞を受賞したが、ヒッチコック作品の演技部門での受賞は本作のジョーン・フォンテインが唯一である。また、ヒッチコックが合計4度起用することになるケイリー・グラントを初めて起用した作品でもある。
本作の主人公リナは、お調子者のジョニーと結婚したものの、ジョニーは金をほとんど持っておらずあちこちから借りており、リナが親からもらった椅子を勝手に売り飛ばし、会社の金を盗んでクビになり、やめたと言った競馬を続けるような男だと徐々に判明していく。
こんなジョニーでもリナが離婚しないのは、ジョニーに魅力があるからと言えばそうなんだろうが、冒頭の描写も考慮に入れる必要がある。彼女はそこそこお金持ちの家のお嬢さんである。ある日、家に入ろうとすると親が自分のことを悪く言っているのを聞いて、相手にしていなかったジョニーとの結婚を決断する形となっている。リナの親を悪く描いているようで、たとえリナからジョニーにキスしようとも、自発的な女性とは映らない。また、こんな形で結婚したから簡単に離婚することもできなかったとは思う。
そして中盤以降、ジョニーの友人ビーキーがパリで死亡した連絡を受けて、リナはジョニーが殺したのだと疑い始める。また、友人からサスペンスのアイデアをジョニーが聞いていることや食事の席で毒の話題になった時に、リナは「ついに私は殺される」と思ってしまう。ラストは、本作で何度も登場したあの「断崖」でリナは車から落ちそうになる。殺されると思っていたが、ジョニーから命を救われる。そして、ジョニーがビーキーを殺していなかったこと、毒はジョニーが自殺用に考えていたことが発覚し、すべてリナの誤解だったことが分かってい映画が終わる。さらに、誤解していた自分にすべての責任があるとまでリナは言っている(どれだけお人好しなんだかと言いたいところだが、目を覚ませと言いたい)。
ヒッチコック映画は女性蔑視だと言及されることもよくあるが、本作はそれが顕著だと感じる。かつての映画やドラマでも、「女性の言い分を信じない男性」というキャラクターや、「女性はヒステリーを起こす」という場面は山ほど登場した。たとえリナが誤解していたことが事実だったとしても、ジョニーがたくさんの嘘をついていたこと、椅子を勝手に売り飛ばしたこと、会社の金を使い込んでクビになったことは紛れもない事実である。こんな男が「正しく」て、こんな男と結婚した女性が「間違っていた」として映画が終わるのはかなり不快である。
振り返れば、ジョーン・フォンテインが前年に主演したヒッチコック映画「レベッカ(1940)」では、本作と逆のようなお話だった。自分が悪いのだと思っていたら、実は自分が正しかったというオチだった。それを同じキャストで反転させたと考えれば面白いのは確かだが。
また、本作で一番有名なのは「あのミルク」だろう。ミルクの入ったグラスの中に電球を入れているので、モノクロ映画でもそのミルクに大きな存在感がある。あそこでジョニーが白いミルクを持っていることで、「彼は実はシロだ」ということを示しているのだろう。そういうヒッチコック映画らしさは本作にもたくさんあるのだが、女性キャラクターの描き方はちょっと見ていられない。さすがに古びている。
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