【作品#0033】レベッカ(1940) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

レベッカ(Rebecca)

 

【Podcast】

 

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

 

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【概要】

 

1940年のアメリカ映画

上映時間は130分

 

【あらすじ】

 

南フランスに叔母とやって来た主人公は、イギリスの富豪であるマキシムと結婚することになる。マキシムには1年前に海難事故で亡くなった妻がいて、その名前はレベッカだった。

 

【スタッフ】

 

監督はアルフレッド・ヒッチコック

プロデューサーはデヴィッド・O・セルズニック

音楽はフランツ・ワックスマン

撮影はジョージ・バーンズ

 

【キャスト】

 

ジョーン・フォンテイン(ド・ウィンター夫人)

ローレンス・オリヴィエ(マキシム・ドウィンター)

ジョージ・サンダース(ファベル)

ジュディス・アンダーソン(ダンバース夫人)

 

【感想】

 

アルフレッド・ヒッチコックが「巌窟の野獣(1939)」に続いてダフネ・デュ・モーリエの原作を映画化した本作は、アカデミー賞で作品賞と撮影賞の2部門を受賞した。

 

主人公の名前は最初から最後まで明かされることはない。何者でもないホッパー夫人の付き添いだった女性が、気付けば大富豪マキシム・ド・ウィンターの夫人となる。そこでも彼女はド・ウィンター夫人と呼ばれるため、彼女は終始、他ではない誰かではなく、マキシムの妻、ド・ウィンター夫人でしかないのだ。

 

母親は早くに亡くし、仲の良かった父親も1年前に亡くなった。そんな彼女の唯一の趣味は画家だった父親から教わった「スケッチ」である。父親とやっていることが同じであることも、彼女が所詮は真似事しかできない「子供」みたいな存在である。後にマキシムと結婚しても子ども扱いされているし、母親くらいに年の離れたダンバース夫人からも一人前の大人として扱ってもらえない。

 

ホッパー夫人の付き添いをしながら知り合った大富豪のマキシムと交流を重ね、彼女はホッパー夫人が南フランスから出発する日にマキシムに会いに行くとそこでプロポーズされ、ホッパー夫人の呪縛から解放されることになる。そして、マキシムの住む屋敷マンダレイに招かれることになる。

 

マキシムも1年前に妻の「レベッカ」を亡くしており、その「レベッカ」のいた形跡はマンダレイにいくつも残っていた。おそらく「レベッカ」と共にマンダレイにやってきたダンバース夫人が一番大きな存在だろう。事あるごとに「レベッカ」と自分が比べられているのではないかと心配になってくる。不在の存在にどんどん追いつめられていく演出も素晴らしい。

 

決して育ちの良くない彼女はそのマンダレイでも居心地の悪さを感じ続けている。それを誤魔化すことができるのは彼女が唯一できること「スケッチ」だ。屋敷内に飾られる肖像画のごとく、自分の描いた画でもって自分を安心させていく。また、少しでもマキシムの望む妻になろうとすべく彼女は奮闘するがやはりうまくいかない。つい落としてしまった物を壊してしまうと隠してしまうところはやはり子供っぽいところである。

 

この「レベッカ」が亡くなった真相や「レベッカ」がどんな女性だったかは誰の口からも基本的に語られることはない。「レベッカ」の死を連想させる言葉が出てくるとマキシムの顔色は曇り、タブーに近い状況である。さらに、マキシムは頭に血が上りやすい性分であり、怒らせたくない彼女はどんどん追いつめられていく。

 

中盤を過ぎると事態は急変する。「レベッカ」の乗っていたヨットが沖で見つかったというのだ。「レベッカ」はすでに死体を確認し、お墓に入っている。では、見つかったヨットにいた遺体は誰のものなのか。実は「レベッカ」の死はマキシムによって偽装されたものだったことが判明する。彼女が真相を聞くと、マキシムは常に「レベッカ」から馬鹿にされ、さらには不倫もしていた。それに耐えられなくなって殺してしまったというのだ。

 

そして、それだけに留まらず、実は「レベッカ」がダンバース夫人の名前を借りて医師の診察を受けており、癌により余命僅かであったことが判明する。警察は自殺か他殺かの線で捜査を進めていたが、この真相が明らかになったことでマキシムの疑いは晴れる。殺しに加担した人物が裁かれずに済むというのも初期のヒッチコック作品でよく見れらた傾向である。妻から馬鹿にされ、不倫された男がその妻を殺しても「許してあげよう」という優しさなのか。ちょっと優しすぎる気もするが。

 

その真相が明らかになり、マキシムがマンダレイに戻ろうとすると、マンダレイが火に包まれている。あのダンバース夫人が火を放ったのだ。不在の「レベッカ」とダンバース夫人による心中だ。本作でのダンバース夫人の描かれ方を見ると、亡くなった「レベッカ」に従事していた単なるメイドという存在には見えない。むしろ、このダンバース夫人も「レベッカ」を愛していたのではないかと考えることもできる。当時のハリウッドにヘイズコードがあったことを考えると、これ以上「それ」を匂わす演出は不可能だったと思うが、かつての映画の同性愛描写について取り上げたドキュメンタリー映画「セルロイド・クローゼット(1995)」取り上げられているので、そういうことなのだろう。

 

本作のタイトルにもなっている「レベッカ」は本作に一切姿を現すことはない。タイトルになっているキャラクターが一切登場しないのに、主人公がその存在にどんどん追いつめられていく様子は素晴らしい。物語の構造や顛末は、本作で主演したジョーン・フォンテインを再び起用した翌年の「断崖(1941)」と表裏のような作品であると感じる。ぜひセットでご鑑賞を。

 

【関連作品】

 

「レベッカ(1940)」…オリジナル

「レベッカ(2020)」…本作のリメイク

 


 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

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