【作品#0594】ザ・タウン(2010) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ザ・タウン(原題:The Town)


【概要】

2010年のアメリカ映画
上映時間は124分
※エクステンデッド・バージョンは150分

【あらすじ】

ボストンで生まれ育ったダグはホッケーの選手になる夢を断念して、父親と同じく銀行強盗の道を歩むことになっていた。ある日、襲った銀行の女性支店長を人質に取り、後に開放するが、免許証の住所から近所に住む女性であることが分かり、ダグは正体を隠して近付く。

【スタッフ】

監督はベン・アフレック
音楽はハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影はロバート・エルスウィット

【キャスト】

ベン・アフレック(ダグ)
レベッカ・ホール(クレア)
ジョン・ハム(アダム・フローリー)
ジェレミ・レナー(ジェム)
ブレイク・ライヴリー(クリスタ)
ピート・ポスルスウェイト(ファーギー)
クリス・クーパー(スティーヴン)

【感想】

ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007)」に続くベン・アフレックの監督2作目は、同じく彼の出身地ボストンを舞台にした作品となった。ジェレミ・レナーの演技は評価され、アカデミー賞でもゴールデングローブでも助演男優賞にノミネートされた。

ベン・アフレックはボストン生まれであり、監督デビュー作「ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007)」の舞台もボストンであった。「ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007)」でもボストンの何気ない日常を切り取る場面があったが、本作の始まりもそんな感じである。また、「ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007)」で娘を誘拐される母親はジャンキーであり、本作のブレイク・ライヴリーが演じるクリスタに重なるところもある。

そんな本作はどう見てもマイケル・マン監督、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ主演の「ヒート(1995)」に影響を受けた作品であり、クレアの困りごとを解決するためにダグがジェムに協力を依頼する場面でジェムがテレビで見ている映画が「ヒート(1995)」である(この場面では映像こそ映らないが、下記の音声解説でベン・アフレックが言及している。また、下記のエクステンデッド・バージョンではその前の場面でダグがテレビで鑑賞している場面がある)。「ヒート(1995)」は本作と同様に犯罪に手を染める男が女性に恋をしてその犯罪から足を洗おうとする物語である。そういった色眼鏡で見ているからか、どうもベン・アフレックの演技はロバート・デ・ニーロのそれに近いものを感じる(私の思い込みかもしれないが、もしかしたらジョン・ハムもアル・パチーノっぽいかも)。

主人公のダグは、一度はホッケー選手を夢見るも、父親から受け継いだ遺伝子に抗えず銀行、現金輸送車強盗を繰り返す犯罪者になってしまった。冒頭に襲う銀行の支店長クレアを調べようとすると彼女と恋に落ちてしまう。ボストンで育ち、身の回りにいる人間は皆が幼馴染。一度犯罪に手を染めるともう抜け出せない(クリスタがドラッグを辞められないのも同様だし、後にダグが知る母親の行く末はクリスタが辿るかもしれない)。父親、ボストン、仲間という呪縛から逃れることのできない主人公が、過去をすべて投げ捨てて新たな場所へ逃げることに成功する。その過程でダグは今まで一切やってこなかった殺人も犯してしまう(花屋の2人)。その観点で見れば、主人公の成功を応援したくなるかもしれないが、ただあまりにも迷惑をかけた主人公だけが逃げられるオチはやや受け入れがたい。下記の音声解説でベン・アフレックは「ダグはいずれ捕まる」と言っていたので、主人公にとって必ずしもハッピーエンドという訳ではないのだろう。これなら分かりやすいバッドエンドの方が共感しやすかったかもしれないというのが正直なところだ。

一度その世界に入って後に自分だけ辞めるという考えは通用しないのだろう。勝ち逃げは許されず、一度犯罪に手を染めたら一生抜け出すことはできない。ダグはジェムに「この仕事が終われば足を洗え」と言うが、ジェムは「他に出来ることがない」と言う。他に出来ることなんていくらでもあるだろうと思うが、「自分にはこれしかない」と思い込んでおり、生まれた街に育って覚えた仕事しかやらないという考えを変えることはさらさらなさそうである。そして、そう考えるのが普通であり、この生き方が悪いなんて微塵も思っていない。

辞めたいと思っていても続ける強盗行為。少しでも抗おうと体を鍛える場面はかつてのホッケー選手としての姿を取り戻すことで今の自分とは違う存在になろうとしているように見える。一時的に人質にとったクレアという女性に出会ってその思いが強くなったのだろう。彼らが距離を縮める過程は劇場公開版よりもエクステンデッド・バージョンの方がより丁寧だが、やや共感しづらいところ。出会ったコインランドリーでクレアの方から声を掛けるという展開は予想外で良かったが。

クレアにとっては最悪の人生になったことだろう。強盗が入って来て無音警報器を鳴らしたことで副支店長はボコボコにされ、自分も人質に取られ死ぬかもしれないという恐怖を味わった。そして、その後にそんな自分を慰める存在となるダグが現れ、銀行も辞めた。ところが、そのダグが自分を人質にした強盗犯であり、協力していたFBIにはその関係を隠したことで共謀まで疑われることになってしまった。たとえ自分を銀行の支店長だと知りながらダグが近づいて来て次第に本気で好きになったとしても、これほどの裏切り行為もないだろう。そんな彼女にはダグが盗んだ多額のお金が残された。ダグにとってできる唯一の事だったとは思うが、これで彼女の気持ちが少しでも晴れるとは思えない。彼女はそのお金をスケート場に氷を張るという慈善活動に充てている。大金を使えばFBIから共謀で疑われるかもしれない。多くの人に多大な迷惑をかけ死人も出た一連の犯罪行為とクレアへの行為を考えるとやはり主人公にはもっとわかりやすい罰を受けるべきだったと思う。町を出られたのはある種の本望だったとして、幼馴染の連中が次々に殺されて愛するクレアと二度と会えなくなり本当の意味で孤独になったとしてもだ。

それでも、父親の遺伝子を受け継いだ銀行強盗の息子が、故郷、家族、友人、腐れ縁の女友達とおそらく自分の息子、そして好きになった女性を捨ててまでどこか来たことのない場所まで辿り着いた。そういえば、前作「ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007)」で主人公のとる最後の選択は賛否が分かれる、観客の意見も分かれるところだった。本作のこの結末もそういったところを鑑みたものかもしれない。そうだとしたら多少は合点がいく。ベン・アフレック監督にとって監督2作目だが、やはりその才能は確かだ。

【エクステンデッド・バージョン】

劇場公開版から約26分追加した150分あるバージョン。BDや4K ULTRA HDといったソフトで鑑賞可能。追加箇所は前半から中盤がメインであり、終盤はほとんど劇場公開版と同じである。数分間追加された箇所もあれば、会話が一言追加されただけの場面もある。

ダグとクレアが距離を縮める過程が足早に感じた劇場公開版に比べると、彼らの物語を丁寧に描こうとした意図は伝わって来る(ただ、これだけ追加してもやや物足らないが)。ただ、わざわざエクステンデッド・バージョンにしなくても観客が補完したり想像したりして十分に理解できる物語である。好みの問題かもしれないが、これなら劇場公開版で十分。

【音声解説】

参加者

├ベン・アフレック(監督/脚本/ダグ役)


ベン・アフレックによる単独の音声解説。原作やベン・アフレック自身が出身のボストンに関する話、レベッカ・ホールやジェレミ・レナーの撮影初日に関する話、自身のアドリブ演技を酷評しながらも仕方なく残した箇所の話、最初は3時間半あった編集をカットしていった話、フェンウェイ・パークの中の話など饒舌に語ってくれる。

 

 


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【予告編】

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

 

【ソフト関連】

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

本編

├劇場公開版

エクステンデッド版
音声特典

├ベン・アフレック(監督/脚本/主演)による音声解説(劇場公開版/エクステンデッド版)
映像特典

├“タウン”に生きる人々

├監督・主演ベン・アフレック

├銀行強盗事件の再現

├チャールズタウン:強盗の温床

├ノースエンドでの銃撃戦

├ボストンの”大聖堂”フェンウェイ・パーク

 

<4K ULTRA HD+BD>
 

収録内容

├上記BDと同様
※映像特典はBDにのみ収録