【作品#0569】インビジブル(2000) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

インビジブル(原題:Hollow Man)


【概要】

2000年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は112分

【あらすじ】

動物実験で生物の透明化に成功していたセバスチャンは元に戻す方法に苦慮していた。ある日、ひらめきにより透明になったゴリラを元の状態にすることに成功したセバスチャンはついに人体で実験をしようと言い始める。

【スタッフ】

監督はポール・ヴァーホーヴェン
音楽はジェリー・ゴールドスミス
撮影はヨスト・ヴァカーノ

【キャスト】

ケヴィン・ベーコン(セバスチャン・ケイン)
エリザベス・シュー(リンダ・マッケイ)
ジョシュ・ブローリン(マット)
ウィリアム・ディヴェン(ハワード・クレイマー)

【感想】

H・G・ウェルズの「透明人間」から着想を得たSF映画。ポール・ヴァーホーヴェンにとっては前作「スターシップ・トゥルーパーズ(1997)」が物議を醸したため、従来のヒット作を目指して製作したと語っており、全世界で1億9千万ドルのヒットを収めた。ただ、後にポール・ヴァーホーヴェンは本作を「誰でも作ることのできる作品だった」と回顧しており、彼は次回作を故郷のオランダで撮っている。

題材だけ見ればポール・ヴァーホーヴェン監督らしさは感じるのだが、映像的にも展開的にも「ロボコップ(1987)」や「スターシップ・トゥルーパーズ(1997)」なんかに比べると遥かに大人しく感じてしまう。

ただ、本作にも興味深い点はある。例えば、本作は生物を透明にするところからではなく、透明になった生物を元通りにするところから始まる。ゴリラでは成功するのだが、セバスチャンが自ら実験マウスとなって透明になってもなかなか元通りに出来ない。これはかつて交際していたリンダとの関係が元通りにならないところとも重ね合わせられているし、また透明になって元通りにならないことは幾重にも解釈することができる。注射で血清を体内に流し込むわけであり、やはりドラッグは連想するし、透明ということで当時浸透し始めていたインターネットなんかも連想する。ただ、このメタファーは表現の奥行きとしては非常に弱く、何となくそう感じるレベルである。

そんな本作の主人公セバスチャン・ケインはやや単純な人間に見えてしまう。人前に立つのが好きで、頭も良くて運動神経も良い。頭の良さは図抜けており、人の上に立とうとする人間である。また、常に性的衝動に駆られており、透明になったことを生かして向かいの家の女性をレイプまでしてしまう。ケヴィン・ベーコンが演じているから辛うじて成立しているだけであり、キャラクターとしては単純化し過ぎた印象はある。かなり細かい描写だが、ラボの同僚がコーヒーを入れる時にポッドを落とすと、別のポッドを誰よりも早く渡すシーンがある。こういう気遣いのできる描写なんかがあるわけだし、もっとこのキャラクターを深堀してほしかった。

そのセバスチャンと戦うことになるのがラボの同僚で元恋人のリンダである。彼女のキャラクターも単純化されており、能力的には圧倒的に優れるセバスチャンに放浪されつつ、最後には立ち上がって戦う女性キャラクターというところである。その他のキャラクターも割と類型的で、映画的な面白みには欠ける登場人物たちであった。

終盤になると、セバスチャンは次々に人を殺し始め、最後はリンダがセバスチャンをやっつけることで映画が終わる。特に中盤以降は完全にジャンル映画化してしまった。この手のジャンル映画として見れば十分だと感じるが、ポール・ヴァーホーヴェンが監督を務めたとなると、「その割には」と思ってしまうのが正直なところだ。

【音声解説】

参加者

├ポール・ヴァーホーヴェン(監督)

├ケヴィン・ベーコン(セバスチャン・ケイン役)

├アンドリュー・W・マーロウ(脚本)


上記3名による対話形式の音声解説。視覚効果や特殊効果の場面、撮影現場でポール・ヴァーホーヴェンがゴリラの声を演じていた話、ラボの大型セットの話、程度や加減を議論しながら演じた話、国防総省の前で実際に撮影できた話、セバスチャンが向かいの家の窓を除くシーンでは「裏窓(1954)」の映像から距離を測って同じ距離感にした話など細かく話してくれる。

【関連作品】


「インビジブル(2000)」…シリーズ1作目
「インビジブル2(2006)」…シリーズ2作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

 

本作のソフト関連は消費者にとって好ましい状況ではない。

まず音声特典はDVDにしか収録されておらず、映像特典もDVDの方が若干ながら充実している。

ただ、BDには劇場公開版から6分追加したディレクターズ・カット版が収録されている。

 

<DVD(コレクターズ・エディション)>

 

本編

├劇場公開版

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├ポール・ヴァーホーヴェン(監督)、アンドリュー・W・マーロウ(脚本)、ケヴィン・ベーコン(セバスチャン・ケイン役)による音声解説

映像特典

├ミュージック・スコア(ジェリー・ゴールドスミスの音声解説付)

├メイキング・ドキュメンタリー:透明人間誕生

├特殊視覚効果シーンの裏側(15種)

├VFX映像の比較(ビフォア&アフター)

├未公開シーン(監督の音声解説付)

├タレント・ファイル予告編集

 

<BD>

 

本編

├ディレクターズ・カット版

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├メイキング・ドキュメンタリー:透明人間誕生

├特殊視覚効果シーンの裏側(15種)

├VFX映像の比較(ビフォア&アフター)

├予告編集