【作品#0543】魔法にかけられて2(2022) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

魔法にかけられて2(原題:Disenchanted)

 

【Podcast】


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【概要】

2022年のアメリカ映画
上映時間は121分

【あらすじ】

ジゼルとロバートの間には新たな命も誕生したが、ロバートの娘モーガンは思春期を迎えていた。家庭の難しい状況に一家はニューヨークから郊外のモンロービルに引っ越すが…。

【スタッフ】

監督はアダム・シャンクマン
音楽はアラン・メンケン
撮影はサイモン・ダガン

【スタッフ】

エイミー・アダムス(ジゼル)
パトリック・デンプシー(ロバート)
ガブリエラ・バルダッキーノ(モーガン)
マーヤ・ルドルフ(マルヴィナ・モンロー)
ジェームズ・マースデン(エドワード王子)
イディナ・メンゼル(ナンシー・トレメイン)

【感想】

「魔法にかけられて(2007)」の続編の企画は早々から立ち上がっていたが、再撮影などの紆余曲折を経た2022年に15年の時を経てようやく完成した。ただ、試写の不評などもあり劇場公開されず、Disney+での配信という形となったようである。

日本のみならず、本国アメリカでも劇場公開が見送られるという事態になった大ヒット映画「魔法にかけられて(2007)」の待望の続編。なるほどそれも頷ける出来と言えよう。極めてシンプルな筋書きだった前作に対して、本作は作品の中心にしっかりとした柱がなく、どのキャラクターの物語も中途半端だったと言わざるを得ない。

まず、前作結ばれたジゼルとロバートの間には新しい命が誕生し、4人家族となっているところから始まる。ところが、ジゼルはニューヨークでの暮らしをよく思っておらず、かつて自分が暮らしたアンダレーシアの国のような郊外での暮らしを望み、家族の反対を押し切り引っ越しに踏み切ったという形になっている。それによってロバートは朝5時に起きて通勤する日常を余儀なくされ、そしてロバートの娘モーガンは不満に思っていなかったニューヨークでの暮らしを諦めざるを得なくなっている。また、モーガンは思春期の難しい時期を迎えているという紹介だが、ちょっとした反抗期くらいにしか見えない。別に悪友と付き合っている訳でもなく、違法行為に走っている訳でもないし、割と素直な女の子にしか見えない。

結局のところ、ジゼルのわがままで郊外での生活をすることになっている。このジゼルのわがままという視点を軸に物語を展開させることもできたと思うが、どうもそんな感じでもない。郊外に来ただけでは物足りないジゼルは、エドワード王子とナンシーが訪れてきてプレゼントしてくれた「願いを叶える杖」を使って、アンダレーシアの国をこのモンロービルで再現しようとする。すると、ジゼルは徐々に魔女のような悪い人間になっていってしまう。前作でおとぎの国の決められた相手と結婚するというプリンセス像をぶち壊し、そして本作ではその悪役像をぶち壊そうとしたのか。最終的に、映画のタイトルにあるように「魔法が解ける」と、悪役もみんな良い人になる。

その後、ジゼルによってアンダレーシアの国に落とされたモーガンをエドワード王子とナンシー夫妻が助けてくれる。ジゼルとロバート、モーガンの危機に、前作で振られた者同士であるエドワード王子とナンシーが命を張って助けてくれる。というか、その発端となる願いを叶える杖をジゼルに手渡したのはこの2人なわけで、どうもマッチポンプのような話になっている。そもそもこの願いを叶える杖を渡した理由も分からん。前作で振られた者同士の2人が、振った相手同士の2人相手に何のわだかまりもなく接するのは、前作で感じた疑問や違和感と同じものを感じる。

ちょっとしたわがままを願ったことから前作で言うところの魔女になっていくジゼルは、別に自分の力でその魔法を解くわけではない。そもそもこんなところに魔法なんて使うべきではない。自分のわがままで自分の好きな世界を作り上げようとするジゼルが、周囲のキャラクターと真剣に向き合うことで「それは間違っていた」と気付き、モーガンや他の人にとって居心地のいい場所をどうやったら作ることができるかを主体的に考えて行動するキャラクターにすべきだった。魔法という設定に頼ったせいでジゼルのキャラクターが自主性を完全に失い、ジゼルのわがままに振り回される周囲のキャラクターが何の疑問も抱かずにジゼルのために奮闘するというどう見ても不自然な展開になっている。

そもそもマルヴィーナという悪役が必要だったとはどう考えても思えない。悪役はジゼル1人に任せて、モーガンを主役に据えた物語にすべきだったと思う。ジゼルは魔法を解くために何の努力もしていないし、モーガンは助けてくれたエドワード王子とナンシーの力を借りて、歌を歌っただけ。ジゼルが実の母親ではなく継母である件もあまり生かされていない。ジゼルとロバートの間に赤ちゃんが生まれているという設定もまるで意味がないかの如く赤ちゃんの場面は限りなく少ない。

「居場所」というキーワードがたくさん出てきたが、最終的にはその本人次第という着地になるのが王道だと思うが、この「居場所」に関する話もなかったかのように終盤には触れられない。結局、ジゼルの思い通り、郊外で自分のやりたいことを実現して、そこに周囲のキャラクターも満足して、またもや「みんなが幸せに暮らしました」的な終わり方となる。ロバートは会社を辞めてモンロービルに事務所を開くことになり、モーガンには気になる男の子がいるという設定だ。都合の悪いことは極力描かず、ロバートが会社を辞めたことなんてたったの一言で済ましている。結局、わがままは言った者勝ち。主人公はこの物語を通じて何も成長したと思えないし、こんな話を良い物語として子供に見せるんだからたちが悪い。

【関連作品】


魔法にかけられて(2007)」…シリーズ1作目
「魔法にかけられて2(2022)」…シリーズ2作目



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【予告編】

 

 

【配信関連】

 

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