【作品#0535】ゲッタウェイ(1972) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ゲッタウェイ(原題:The Getaway)


【概要】

1972年のアメリカ映画
上映時間は123分

【あらすじ】

刑務所を妻キャロルの裏取引で出所したドクは、それと引き換えに銀行強盗をするように命じられる。

【スタッフ】

監督はサム・ペキンパー
脚本はウォルター・ヒル
音楽はクインシー・ジョーンズ
撮影はルシアン・バラード

【キャスト】

スティーヴ・マックィーン(ドク・マッコイ)
アリ・マッグロー(キャロル・マッコイ)
ベン・ジョンソン(ジャック・ベニヨン)
アル・ルッティエリ(ルティ・バトラー)

【感想】

当初はピーター・ボグダノヴィッチが監督する予定だったが、同年「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦(1972)」でもタッグを組んだサム・ペキンパーが監督を務めた。また、当初の音楽はジェリー・フィールディングが作曲したものを使用する予定だったが、スティーヴ・マックィーンの意向でクインシー・ジョーンズによる音楽に切り替えられた。

本作は何と言っても、サム・ペキンパー監督らしいスローモーションを用いた暴力表現と、それを実現する上で申し分ないスティーヴ・マックィーンというキャスティングが見事だろう。

サム・ペキンパー監督得意のスローモーションは要所で用いられ、まず印象に残るのは出所したドクが水場にやって来た時にキャロルとの妄想をする場面だろう。ドクにとって久しぶりに味わう自由。愛するキャロルと水場で遊ぶ妄想は、男が抱く女性とのまさに「妄想」だろう。

それから、ショットガンを撃つ際に用いられるスローモーションも印象に残る。特に、ショットガンを手にしたドクが、パトカーが追って来られないようにパトカーに何発もショットガンを撃つ場面は、マックィーンの撃ち方、ショットガンの音なども相まって本作で最も印象深い場面になっている。

また、本作はドクとキャロルという2人の夫婦の再生の物語でもある。ドクが捕まっても別れることなくやってきたキャロルは、役人との取引によりドクを釈放させることになるのだが、そこでキャロルはその役人と体の関係を持ったことが示唆される。それを知ったドクはキャロルにビンタして怒る(ちなみにビンタするのは脚本になくキャロルを演じたアリ・マッグローのリアクションは素の驚きらしい)。愛する女性が自分の釈放のために他の男性と体の関係を持つことに対するリアクションとしては子供っぽさも感じるが、分からないでもない。自分が刑務所にいる時間が長くなってでも、愛するキャロルには清純であってほしいというのは我がままだが、その相反する感情や行動があってこそ人間らしくて良いとは思う。

そんな事情を知ったドクが不機嫌になってから2人での逃亡劇もどんどん殺気立っていく。その一方で、彼らを追うアル・ルッティエリ演じるルディという男は、獣医を脅してドクに撃たれた箇所の治療をさせる。さらに、ルディは獣医とその妻の3人でドクを追うことにする。すると、夫の獣医に頼りなさを感じている妻のフランは、ルディにどんどん惹かれていき、ついに夫の前でルディとセックスまでしてしまう(映画内ではそれが示唆されるだけだが)。その状態に耐えかねた獣医の男は首をつって自殺してしまう。こちらの夫婦は完全に崩壊してしまったのだ。

そして、ドクとキャロル夫妻は逃げ場を失い、ごみ収集ボックスの中に隠れると、そのボックスごと収集車に回収され、ごみ処理場に放り出されてしまう。まるでこんな人間は世の中に必要ないと言わんばかりであるが、この落ちた夫妻はここから仲を取り戻していく。落ちるところまで落ちた夫婦。これ以上落ちるところはないだろうとどこか吹っ切れたようにも見える。ちなみにこのごみ処理場から男女が歩いていく光景は、後の「007/慰めの報酬(2008)」での砂漠からダニエル・クレイグとオルガ・キュリレンコが歩いてくる場面を連想する。

最期の戦いの場はホテルとなる。ちょっと安心して笑い合っているところから、敵を察知して緊張感は増していく。ここでの銃撃戦もサム・ペキンパー監督らしい確かな演出でクライマックスらしい見せ場になっている。やはりマックィーンの銃を構える姿、撃つ姿は他に代えがたい優雅さがある。

ラストは、メキシコに資材を運んでいる男の車に乗せてもらい、メキシコに逃亡することになる。その運転する男から最近の男女の乱れについての話を聞かされる。ドクとキャロルが夫婦であると聞いて安心する姿に、修羅場をくぐり抜けてこそ夫婦であると言わんばかりである(ここまでの修羅場をくぐり抜ける必要はないと思うが)。ドクもキャロルもこの経験でとんでもない修羅場の数々をくぐり抜けたのは確かだ。他の人間とは到底味わうことのできない経験をした2人はもう離れることができないだろう。ごみ箱にも入った腐れ縁。犯罪アクション映画の仮面を被った2人の夫婦を描いたドラマでもあった。

【関連作品】


「ゲッタウェイ(1972)」…オリジナル
ゲッタウェイ(1994)」…上記作品のリメイク

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【ソフト関連】

 

本作のソフトはDVDが数種類発売されており、最後に発売されたのはおそらく下記のデジタル・リマスター版が最後。

後に発売されたBDは「吹替の力」シリーズであり、吹替だけで3種収録されている。

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え(テレビ朝日新録版)

※日本語吹き替えの欠落箇所はオリジナル音声/日本語字幕に切り替わります

音声特典

├ペキンパー評論家による音声解説

映像特典

├バーチャル音声解説

├オリジナル劇場予告編

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

  ├フジテレビ版(約116分)

  ├テレビ朝日旧版(約93分)

  ├テレビ朝日新版

    ※テレビ朝日新版はWOWOW放映時に欠落箇所を追加録音した吹替補完版

音声特典

├ペキンパー評論家による音声解説

映像特典

銀行強盗シーン

ペキンパーとゲッタウェイ

ジェリー・フィールディングによる音楽

├予告編集

※下線部は上記DVDに収録されていないもの