【作品#0534】ブリット(1968) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ブリット(原題:Bullitt)


【概要】

1968年のアメリカ映画
上映時間は113分

【あらすじ】

サンフランシスコ市警のブリット警部補は、チャルマース上院議員から裁判の証言者の保護を命じられるが、スタントン刑事がホテルの一室でその証言者を保護していると、何者かに銃撃を受けてしまう。

【スタッフ】

監督はピーター・イェーツ
音楽はラロ・シフリン
撮影はウィリアム・A・フレイカー

【キャスト】

スティーヴ・マックィーン(フランク・ブリット)
ジャクリーン・ビセット(キャシー)
ロバート・ヴォーン(チャルマース)

【感想】

サンフランシスコの坂道を利用したカーチェイスが大きな話題を呼んだ作品で、アカデミー賞では編集賞を受賞するなど評価を受けた作品。

本作は何と言ってもカーチェイスが大変有名な作品。当初スペンサー・トレイシーが老刑事を演じる予定だった本作の脚本は、マックィーンが主演になることで書き換えられ、またプロデューサーのアイデアで当初予定になかったカーチェイスが追加されたらしい。そして、元レーシングドライバーという異色の経歴の持ち主ピーター・イェーツがイギリスで監督した「大列車強盗団(1968)」のカーチェイスシーンの出来に感銘を受けたマックィーン直々のご指名でピーター・イェーツが監督に抜擢された。

本編が1時間ほど経過してから約10分間に及ぶカーチェイスがサンフランシスコの坂道から展開する。最初は追われる側だったマックィーンの車が、追手の車のルームミラーに映る場面は下記の音声解説でも監督が自画自賛する素晴らしいショットである。また、追手側が終われる側になると、助手席に乗る男がシートベルトを締め(これはプロデューサーのアイデアらしい)、車が急発進して本格的なカーチェイスが始まる。それまではラロ・シフリンによる楽曲が流れていたが、シートベルトを締める音と急発進によるタイヤのスリップ音が鳴り響くと、ラロ・シフリンによる楽曲は鳴り止み、音響のみとなり、カーチェイスから目が離せなくなる。確かに後にもっとすごいカーチェイスシーンのある映画はあるだろうが、CGもない時代にサンフランシスコの坂道を封鎖して行われたカーチェイスは十分に見応えがある。

物語全体で見ると、本作はセリフでの説明も極力排除されており、登場人物の行動原理を理解できないものもあるので、疑問が残らない作品ではない。冒頭のクレジットの出る間にシカゴで繰り広げられる強盗劇に登場する男とホテルで保護される男が別人なので替え玉であることは簡単に分かるのだが、これは別に観客向けにわざわざ説明しておくべき場面だとは感じない。そして後に替え玉だと分かり、本当の証人を探すことになるのだが、最後に空港でその男を主人公は殺してしまう。本作ではこの証人の保護を依頼する上院議員がまるで悪役の如く描かれているが、この裁判の証人を保護することは犯罪撲滅に繋がるわけで、上院議員への反抗がこの証人殺しになっているのだとしたらやや理解できない結末であり、これによってスッキリするわけでもない。

また、本作は中盤で主人公の携わる仕事の残虐さに辟易したキャシーのいる家に帰るシーンで終わる。そのラストカットは、主人公が身に着けていた銃と銃弾が置かれたところを映している。この銃弾こそ「Bullet」であり、主人公の名前が「Bullitt」であるところとも重ね合わせられている。家に帰り、この銃弾を置いたというところにキャシーとの仲直りの意味を感じるし、またこの銃弾を映し続けるところで終わるところにはこの銃弾から逃れられないことを意味しているようにも感じる。ただ、このキャシーというキャラクターが取って付けたように浮いていたし、彼女のセリフだけ本作の少ないセリフの中でどうも説明的すぎた印象はある。

とはいえ、本作はマックィーンを堪能する作品である。当時の映画らしい、セリフの少ない作品で、俳優の存在感や間の取り方で持たせる映画において、このマックィーンという存在はあまりにも大きい。アカデミー賞こそ、「砲艦サンパブロ(1968)」でのノミネート1回に終わったが、目の演技、ちょっとした仕草、少ないセリフだからこそ際立つ彼の声など、枚挙にいとまがない。

【音声解説】


参加者

├ピーター・イェーツ(監督)


監督のピーター・イェーツによる単独の音声解説。本作を引き受けた経緯、当時警察が信頼されていない世の中であった話、マックィーンという俳優への評価、一度は監督を撮影中にクビになりかけた話、イギリス出身の監督が初めてアメリカで撮ったが故の苦労話、カーチェイスシーンでは車の後部座席に乗ってレンズを覗いていた話、閉鎖した夜の空港での撮影秘話など語ってくれる。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

 

DVDのスペシャル・エディションとBDは基本的に収録内容は同じだが、BDに収録される吹替はWOWOW放映時の欠落箇所を保管したバージョンである。

 

<DVD(2枚組/スペシャル・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え(テレビ朝日版)

  ※吹替の欠落箇所はオリジナル音声/日本語字幕に切り替わります

音声特典

├ピーター・イェーツ(監督)による音声解説

映像特典(Disc1枚目)

├オリジナル劇場予告編
映像特典(Disc2枚目)

├スティーブ・マックィーン:男の神髄 (約86分)

├ブリット:リアリティーへの挑戦(約10分)

├編集技術の魔法 (約99分)

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹替(テレビ朝日版)

WOWOW放映時に吹替の欠落箇所を補完したものを収録

音声/映像特典

├上記DVDと同様