【作品#0520】世界最速のインディアン(2005) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

世界最速のインディアン(原題:The World's Fastest Indian)


【概要】

2005年のニュージーランド/アメリカ合作映画
上映時間は127分

【あらすじ】

1960年代のニュージーランド。67歳になるバート・マンローは、40年以上も乗っているオートバイの「インディアン・スカウト」を改造して乗り続けている。彼はアメリカのボンネビルで行われるオートバイの世界最速記録を出すことであり、なけなしの金をはたいて船でアメリカへ向かう。

【スタッフ】

監督/脚本/製作はロジャー・ドナルドソン
音楽はJ・ピーター・ロビンソン
撮影はデヴィッド・グリブル

【キャスト】

アンソニー・ホプキンス(バート・マンロー)
クリス・ローフォード(ジム・モファット)
ダイアン・ラッド(エイダ)
ブルース・グリーンウッド(ジェリー)

【感想】

ニュージーランド人のバート・マンローの伝記映画を、同じくニュージーランド出身のロジャー・ドナルドソンが監督を務めた。ロジャー・ドナルドソン監督とバート・マンローを演じたアンソニー・ホプキンスとは「バウンティ/愛と反乱の航海(1984)」以来、21年ぶりのタッグとなり、大会の整備係の男を演じるブルース・グリーンウッドは、ロジャー・ドナルドソン監督の「13デイズ(2000)」以来のタッグとなった。ちなみに、タイトルにもある「インディアン」とは、アメリカに住む原住民のことではなく、オートバイの名前である。

監督のロジャー・ドナルドソンは、若いころからバート・マンローについて知っており、実際に会いに行って後にドキュメンタリーも製作するほどで、1979年には最初の脚本を書き上げていたらしい。以降も、映画化の話は度々あったそうだが、なかなか映画化に踏み切れず、「リクルート(2003)」を撮り終えた後に決心してインディーズ映画として本作を製作したと語っている。娯楽作がメインではあるが、職人監督の印象の強いロジャー・ドナルドソン監督作品の中ではやや特殊な作品と言える。ただ、良くも悪くも淡々としている感じはロジャー・ドナルドソン監督らしいのではないだろうか。

何と言っても本作は冒頭から非常にテンポよく進んでいき、ニュージーランド内の描写も最小限にアメリカへ旅立ってしまう。序盤は見ていると噛み応えがなく、物足らない印象は拭えない。ただ、アメリカに到着してからはそれらの細かい描写が徐々に積み重ねられていくのがじわじわと伝わってくる。

さらに、本作はいわゆる悪人が登場しない。強いて言うなら、モーテルの受付をしていたティナというゲイの男と食事をしている場面で周囲から冷たい目で見られる場面があるくらいだろう。悪人らしい人物が全く出てこないので、こちらも噛み応えがないと思われる要素とも言えよう。ただ、たまにはこういった悪人の出てこない世界を堪能するのもありだろう。

バート・マンローは相手と話す時に必ず自己紹介をして自分を晒し、どんな相手にでも素直に接しており、偏見を持っていないことが分かる。特にアメリカに到着してからはいわゆる白人らしい人たちよりも、中南米出身の人間や黒人、同性愛者、ネイティブアメリカンなどあらゆる人種の人たちが登場するのも意図的なものだろう。

こんな感じで進んでいくのでピンチらしいピンチもなく映画は終わる。世界記録を更新し、横転したインディアンから這い出たバート・マンローを俯瞰で捉えるショットのすぐ後で故郷のニュージーランドの場面に移行するが、バート・マンローを助けてくれた人たちとのもう一交流くらい描いても良かったんじゃないかなとは思う。

ニュージーランドに帰ると、住民が総出で迎えることなんてない。旅立つ時も見送る人なんてほとんどいなかった。バート・マンローにとってインディアンで世界最速記録を打ち立てることは、誰かのためにやったことではなく、自分のためにやったことである。何かに対する並々ならぬ努力や打ち込みがとんでもなく大きな何かをもたらすことがあり、それを見た観客にも十分に刺さるものはあると感じる。

アンソニー・ホプキンスも見事ななりきりぶりで、映画自体も十分に楽しめるが、やや物足らなさは感じた。でも、濃い味付けの映画を観た後だったり、さっぱりした映画を観たくなったりしたら本作はもってこいだろう。

【音声解説】

参加者

├ロジャー・ドナルドソン(監督/脚本/製作)


このロジャー・ドナルドソン監督単独の音声解説は、DVDでは通常盤には収録されておらず、ゴッド・オブ・スピード・エディションには収録されている。ロジャー・ドナルドソンがバート・マンローを知ってから映画化に至るまでの紆余曲折、バート・マンローに関する逸話、アンソニー・ホプキンス起用に関する話、1960年当時のアメリカを再現する上での工夫、バート・マンローを知る関係者との交流、実話とフィクション、アンソニー・ホプキンスが自らスタントを申し出た場面の話、ロジャー・ドナルドソン自身に関する話など多くを語ってくれる。本作の理解を深めるにはこのゴッド・オブ・スピード・エディションの特典映像と共にこの音声解説を聞くことをお勧めしたい。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【ソフト関連】

 

2023年4月現在、本作は日本でBDは発売されていない。輸入盤なら取り寄せることは可能である。

 

また、DVDですら廉価版が発売されておらず、ほとんど特典のないスタンダード・エディションですら中古でも数千円はかかる。さらに、音声/映像特典の充実した2枚組のゴッド・オブ・スピード・エディションはさらに値が張る。

 

<DVD(1枚組/スタンダード・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├日本版劇場予告編

├オリジナル劇場予告編

├キャスト&スタッフ プロフィール(静止画)

 

<DVD(2枚組/ゴッド・オブ・スピード・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├ロジャー・ドナルドソン(監督/脚本/製作)による音声解説

映像特典(Disc1)

├日本版劇場予告編

├オリジナル劇場予告編

├キャスト&スタッフ プロフィール(静止画)

映像特典(Disc2)

├バート・マンロードキュメンタリー“Offerings to the God of Speed”

├監督来日時インタビュー

├メイキング

├インタビュー集

├インディアン号映像解説/TVスポット