【タイトル】
ドリヴン(原題:Driven)
【概要】
2001年のアメリカ映画
上映時間は117分
【あらすじ】
華々しいデビューを飾ったレーサーのブライは、徐々に周囲の雑音が気になり調子を落とし、シーズン成績でブランデンバーグに追い上げられる。そこでチームオーナーのカールは、かつてのライバルだったジョーに連絡を取り、ブライのサポート役を依頼する。
【スタッフ】
監督はレニー・ハーリン
音楽はBT
撮影はマウロ・フィオーレ
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン(ジョー・タント)
バート・レイノルズ(カール・ヘンリー)
キップ・パルデュー(ジミー・ブライ)
ティル・シュヴァイガー(ボー・ブランデンバーグ)
ジーナ・ガーション(キャシー・モレノ)
【感想】
シルヴェスター・スタローンとレニー・ハーリン監督が「クリフハンガー(1993)」以来となるタッグを組んだレース映画。9,400万ドルの予算に対し、全世界で5,400万ドルしか売り上げられず、レニー・ハーリン監督にとっては後のキャリアを閉ざす一本になってしまい、後に「自身のキャリアで最大の過ち」と語ったほどである。
どのキャラクターも類型的で映画全体として見ても浅くて弱い映画と言える。また、特に女性キャラクターの配置などは2001年当時で見ても古臭い添え物みたいな扱いである。
当初のスタローンの脚本は220ページあり(1ページが映画の上映時間1分程度と換算される)、レニー・ハーリン監督の最初の編集版は4時間もあったそうだ。仮に4時間かけて本作を描いたところでドラマとしての厚みがもたらされたとは思わないが、本作において下らないロマンス要素はばっさりカットしても良かったくらいだ。ガールフレンドがチーム内に入って来てレース中のレーサーに指示を出すなんて、ただでさえジョーとカールで意見が割れているのに、雑音でしかない。
肝心のレースシーンだが、ところどころに見ごたえのあるカットはあるものの、特にクラッシュシーンなどになると急にちゃちなCGになり、映画の世界からいきなり現実世界に引き戻されるという酷いものになっている。というかあんなに現実のレースでクラッシュばっかり起こらないだろうに。しかも、同じチームのレーサーが事故を起こすと、その現場まで同じチームのブライとライバルのブランデンバーグだけが助けにやってくる。
それから一番の問題シーンは、一般道をレーシングカーでチェイスするシーンだろう。そもそもパーティ会場の近くにすぐに発進できる状態のレーシングカーが2台も置いてあるのか。仮に一般道をレーシングカーで走るアクションをやりたかったにしても映画的な段取りは踏まないとダメだろう。しかも、一般道でやりたい放題やったのに、警察に捕まることなくレース界の連盟からちょっと処分を受けるだけって。
そして、なんやかんやあってラストのレースシーン。ブライはライバルのブランデンバーグを僅差で打ち負かすことに成功する。この勝利に理屈なんてない。ブライがアクセルを踏み込めばばブランデンバーグ追い越し、ブランデンバーグがアクセルを踏み込めば無頼を追い越しというのをただ繰り返していく。というか、途中でジョーはチームメイトのブライを追い越して、何なら優勝を目指していた。ところが、ジョーのマシンはトラブルにより優勝を目指すことは不可能になり、ジョーはブライに後を託す形となっている。もしトラブルが起こらなければジョーは本気で優勝を狙っていたことになる。つまり、ブライが優勝したのは偶然にしか見えないのだ。ジョーの言葉や貰ったトロフィーを思い出す場面はあるが、だから何だって話ではある。ジョーのブライにかけた言葉なんかを観ると、後にスタローンが復活させた「ロッキー・ザ・ファイナル(2006)」のようなことがやりたかったのだろうとは思うし、その一端を観ることはできると思うが、如何せん全体的にお粗末としか言いようのない出来である。細かいところを言うと、4時間あったのを2時間くらいに削ったのに、各国のレース会場に場面が映った際の現地の様子を描くのはやや長い。
落ち目だったスタローンも本作で起死回生の一作を出したかっただろう。その気概は多少伝わるが、彼の本格的な復活は「ロッキー・ザ・ファイナル(2006)」まで待たなければならない。
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【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├オリジナル予告編
<DVD(コレクターズ・エディション)>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├レニー・ハーリン(監督)による音声解説
映像特典
├未公開シーン(シルヴェスター・スタローンのコメンタリー付き)
├サーキットの舞台裏~メイキング
├VFXの魔術師たち~VFXメイキング
├オリジナル予告編
※下線部は上記DVDに収録されていないもの