【作品#0489】疾風スプリンター(2015) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

疾風スプリンター(原題:破風)


【概要】

2015年の香港/中国合作映画
上映時間は125分

【あらすじ】

自転車ロードレースのチーム「ラディアント」で活躍するミンとティエンは互いに切磋琢磨しながらレースに勝利していくが…。

【スタッフ】

監督はダンテ・ラム
音楽はヘンリー・ライ
撮影はパーキー・チャン

【キャスト】

エディ・ポン(チウ・ミン)
ショーン・ドウ(チウ・ティエン)
ワン・ルオダン(ホアン・シーヤオ)

【感想】

自転車ロードレースを真正面から描いたダンテ・ラム監督のスポーツドラマ。

自転車ロードレースのシーンに関しては、非常に見応えがある。実際のレース場での撮影であり、都心部から山岳地帯、ラストには砂漠と映像的な変化もあり、どのレースシーンも退屈することはない。

ただ、人間ドラマの部分の描き方はスマートではないし、足りない要素も多い。もう1シーンくらいあるかなと思ったらあっという間に次の場面へ行ってしまい、ドラマパートは非常に駆け足な印象も覚えた。特に資金難によるチームの解散、ミンが他チームに行ってからの唐突な暴力沙汰、ティエンが急に薬物に手を出してしまうところなど、明らかに足早である。ミンは他のチームに行ってからうまくいかずにいらだちを覚える場面がレースシーンの前に必要だったと感じる。また、ティエンもなぜ薬物に手を出してしまうのかの理由が映画的には全く見えてこない。その後、落ちぶれた彼らが再結集するのだが、前半部分での描き方が不足しているのでやや感情移入しにくいと感じた。

また、ホアンをミンとティエンで取り合うロマンスパートも2015年の映画にしてえらく古臭い演出である。ミンとティエンは恋敵でもあるのだが、どこかさっぱりした関係である。ホアンはミンに愛想を尽かしてティエンに乗り換えたと思えば、ミンのことが忘れられないと言うなど色んな意味で見ていられない展開が続く。スポーツマンとして人としてミンとティエンが尊敬するホアンこそ、映画的にはもう少し優等生キャラとして描いても良かったのではないかと思う。そして、中盤のレースシーンでホアンはアキレス腱断裂の大怪我を負い、腱の移植をしなければ競技復帰は難しい状況になる。その話を聞いたミンはホアンに話すことなく腱の移植をするという急展開になる。自分のせいで別れた女性のために自分の腱の一部を差し出すことはドラマとしてうまく機能しそうだが、ここも前置きが少ないし、そもそも本人に話すことなく移植するというのが非現実的過ぎて話が入ってこない。その後、必死のリハビリを経て、ホアンは自転車ロードレースの世界からボートの世界に身を移す。ここも、なぜ自転車ロードレースの世界から身を引くのかや他の何でもないボートの世界に身を投じる理由も説明が必要だと思う。さらに、その後映画的には主演の2人に次ぐ重要なキャラクターであるホアンが映画内に登場することがなかったのはあまりにも不誠実に感じる。エピローグでホアンのその後をほんの少しでもフォローは入れるべきだろう。

チーム戦となるロードレースではエースを勝たせるために、アシストの役割を担う選手たちはエースの前に走って風を遮ったり、他チームの追い上げを妨害したりする。この要素は映画内のキャラクター描写にもなっていたし、キャラクターの成長を描くうえでも十分に機能していただけに、ドラマパートの不足感や垢抜けない感じが非常にもったいない作品。



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映像特典

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├プロダクションノート(静止画)