【作品#0477】ドゥ・ザ・ライト・シング(1989) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ドゥ・ザ・ライト・シング(原題:Do The Right Thing)


【概要】

1989年のアメリカ映画
上映時間は120分

【あらすじ】

黒人、イタリア系アメリカ人、韓国人など多くの民族がクラスニューヨークのブルックリン。そんな彼らの様子をイタリア系アメリカ人サルのピザ屋を中心に描く。

【スタッフ】

監督/脚本/製作はスパイク・リー
音楽はビル・リー
撮影はアーネスト・ディッカーソン

【キャスト】

ダニー・アイエロ(サル)
スパイク・リー(ムーキー)
オジー・デイヴィス(メイヤー)
ルビー・ディー(マザー・シスター)
ジャンカルロ・エスポジート(バキン・アウト)
ビル・ナン(ラジオ・ラヒーム)
ジョン・タートゥーロ(ピノ)
ロージー・ペレス(ティナ)
サミュエル・L・ジャクソン(ラブ・ダディ)

【感想】

LA批評家協会賞では作品賞や監督賞などを受賞したが、アカデミー賞では助演男優賞と脚本賞の2部門のノミネートに終わり、アカデミー賞授賞式で、プレゼンターのキム・ベイシンガーは本作がノミネートされていないことを疑問視する発言をしたことが話題になった。また、元大統領のバラク・オバマは夫人のミシェルと最初のデートで本作を見たと後に語っている。

監督のスパイク・リーはサルの店が破壊されたことを悲しむ観客の声に対して、「ラヒームが亡くなったことを考えないのか」と反論している。そういう観客の感想って、ラヒームが亡くなったことは良しとしている訳ではないと思う。その事実があったうえで、サルの店が破壊されたことが悲しいのだと思う。サルはこの黒人が多く住む街でピザ屋を営んでいる。サルなりに黒人への接し方も心得ていただろう。そして、黒人ばかりだからと言って彼らに媚びている訳でもないし、差別している訳でもない。黒人の客が「なぜ店に黒人の写真がないのか」と執拗に詰め寄る場面がある。黒人が白人から差別されてきた歴史を考えたとしても、このサルの店に黒人の写真が飾っていなかったとしてもサルに詰め寄るほどには感じない。サルが店に飾っている写真は自分と同じイタリア系のアル・パチーノやフランク・シナトラの写真である。もし同じイタリア系の客が来て黒人の写真が飾ってあればそれはそれで文句言われるだろうから難しいところではあるが、サルの姿勢は間違っているようには思えない。

また、暴動のきっかけとなるのはラヒームが持ち込んだステレオを爆音で鳴らしたことである。他人の土地にはその土地の所有者に権限があるのは当然だ。ルールを守れないのならこの店に来なければ良い。それでもこの店には「良い客」も「悪い客」もやってくる。ピザがうまいからというだけで人気というわけではないだろう。サルにも、お店にも魅力があるから多くの人がやってくるのだろう。ただ、サルの息子は黒人街で仕事をすることを嫌がっており、明らかに黒人差別をしている。「他のイタリアン人がイタリア人街でピザ屋をしているのになぜうちだけ黒人街で仕事をしているのか」という純粋な疑問もあっただろう。そういった鬱憤が溜まった結果として差別しているのかもしれないし、そういった内なる感情は徐々に相手に伝わっていたかもしれない。

そんなサルの店で配達の仕事をしているのが監督のスパイク・リー演じるムーキーである。彼は配達をするたびに寄り道をしていおり、とても真面目に働いているとは思えない。というか本作に登場する黒人でまともに働いているのはサミュエル・L・ジャクソン演じるDJのラブ・ダディぐらいじゃないか。ムーキーがどれだけサボろうが、サルに文句を言おうが、サルは決して彼をクビにすることはなく、まるで息子のように厳しい態度で接している。

ラヒームがサルの店でステレオを爆音で流し、ついにブチ切れたサルがそのステレオをバットで叩き潰してしまう。さらにムーキーがサルの店にゴミ箱を投げつけたことで完全に暴動になってしまう。ムーキーがサルの店にゴミ箱を投げつける理由は見当たらないが、ムーキーからすればちょっと仕事をさぼったくらいでグチグチ言われ、ティナとの関係もうまくいっていない。また、仲間のラヒームのステレオがぶっ壊されたし、そして「暑い」のだ。どこか不安定な中におぼろげに存在していたサルの店。何かの拍子に爆発してもおかしくない状況下でついに暴動に発展してしまった。普段ため込んでいる不満はどこで爆発するかは分からない。これは関係が表向きは良好な場所や地域にはある種の刺激になりかねないものだっただろう。

駆け付けた白人警官は暴動に加担する人間を次々に取り締まり、ラヒームは警棒で首を絞め殺されてしまう。「暴動に加担していたのが白人だったら」、あるいは「黒人警官だったら」死人は出なかっただろうか。それはもちろん分からない。ただ、本作が製作されて30年以上が経過しても白人警官が不当に黒人を殺したニュースは後を絶たない。ムーキーからすれば、たとえ暴動の遠因となるステレオを爆音で鳴らしたのがラヒームであったとしても、その後の暴動でラヒームも加担していたとしても「殺さなくても良いじゃないか」と言うことだろう。過去から現在、そして以降の歴史を見たって、丸腰の黒人が白人警官に殺されているじゃないか。

ムーキーはラヒームの死を悲しんだだろうが、サルの店が暴動によって破壊されたことを何も悲しんでいない。暴動の翌日にムーキーがサルの店に行き、サルから未払いの給料を支払うように言い、サルからお札を投げつけられる。こんなことをしたって黒人差別も暴動もなくならない。だからこそ「Do the right thing=正しいことをしろ」と言う訳なのだろう。

多くの指摘があるように、後のロス暴動を連想しないわけがないパワフルな一作。特に冒頭のパブリック・エネミーの「Fight the Power」をバックにロージー・ペレス演じるティナが躍る場面は印象に残る。

【音声解説】

参加者

├スパイク・リー(監督/脚本/製作)

├アーネスト・ディッカーソン(撮影)

├ジョイ・リー(ジェイダ役/スパイク・リーの妹)

├ウィン・トーマス(美術)


上記4名による音声解説だが、それぞれ別に収録した音源を合わせたものである。スパイク・リーが冒頭に話しているように、1995年3月に収録されたものである。本作を製作するに至る事件、本作に寄せられた批判への反論、ダニー・アイエロと話し合いながら築き上げたサルのキャラクター、エンドクレジット前のキング牧師とマルコムXの言葉に対する勘違い、撮影や美術によって表現した世界などについて話してくれる。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/イタリア語/スペイン語/韓国語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語/イタリア語/スペイン語/韓国語)

映像特典

├メイキング

├ビハインド・ザ・シーン

├ロケーション

├ストーリー・ボード

├劇場予告編集

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/イタリア語/スペイン語/韓国語)

音声特典

├スパイク・リー(監督/脚本/製作)、アーネスト・ディッカーソン(撮影)、ジョイ・リー(ジェイダ役/スパイク・リーの妹)、ウィン・トーマス(美術)による音声解説

映像特典

├「ドゥ・ザ・ライト・シング」の20年後

├未公開シーン

├撮影の舞台裏

├メイキング

├編集 バリー・ブラウン

├静止画

├カンヌ 1989年

├トレーラー集

 

【音楽関連】

 

<Public Enemy「Fight The Power」>