【作品#0402】すべては君に逢えたから(2013) | シネマーグチャンネル

 

  タイトル

 

すべては君に逢えたから

 

  概要

 

2013年の日本映画
上映時間は106分

 

  あらすじ

 

クリスマスを間近に控えた東京駅を中心に6つのストーリーを描く。

 

  スタッフ

 

監督は本木克英
音楽は池瀬広
撮影は橋本尚弘

 

  キャスト

 

玉木宏(黒山和樹)
高梨臨(佐々木玲子)
木村文乃(山口雪奈)
東出昌大(津村拓実)
本田翼(大友菜摘)
市川実和子(岸本千春)
時任三郎(宮崎正行)
大塚寧々(宮崎沙織)
倍賞千恵子(大島琴子)
小林稔侍(松浦泰三)

 

  感想

 

テレビドラマ「僕の生きる道」などの脚本で知られる橋部敦子の映画脚本デビュー作。東京駅開業100周年記念企画であり、JR東日本の協力の元、深夜などに東京駅で撮影が行われた。

まず映画が始まってからすぐに違和感を覚える。それは本作の映像から全く冬感、クリスマス感が一切感じられないことである。調べたところ撮影は6月頃だったそうで、時折差し込む日差しはまさに夏のそれである。本作は冬、もしくはそれに近しい時期に撮影できなかった時点で負けが確定したようなものだ。たとえ照明や衣装、美術が努力したとしても、6月の屋外でクリスマスの雰囲気を出すのは到底無茶な話である。

それから、東京駅開業100周年記念企画として作られた割には、東京駅がそんなに関係していないし、何なら無理やり東京駅と関連するエピソードを創作している印象である。また、どのエピソードも東京駅以外の駅でも通じる話ばかりであるところも気にかかる。

また、ただでさえ薄っぺらいエピソードの羅列のような映画の中に、「東北復興」の話を入れるのも違和感がある。「東北復興」を願うのも応援するのも個人の自由だが、「こういう時代なので入れました」という取って付けた感しかない。津村が宮城で復興に関する仕事をしている設定も後付けだろう。この上っ面だけ「東北復興」を謳うのも逆効果だと思う。

特に男性陣のキャラクターが軒並み悪い奴ばかりである。津村は付き合っている彼女の仕事を馬鹿にし、黒山は部下の仕事に満足できないと怒鳴り散らして資料を投げつけるようなパワハラ人間である。そんな彼らが最後に少し良いところを見せたくらいで良い人間みたいに着地させるのはどうかと思う。

そして、中でも一番湿っぽいのが「二分の一の成人式」というタイトルが付けられたエピソードである。親に反抗的な息子を持つ父親が病気により余命いくばくもない状況である。口うるさい父親に反抗した息子が実は父親の仕事をカッコいいと思っていて自分も車掌になりたいという場面はどう考えても説明不足である。実は父親の仕事をかっこよく思っている場面なんて一度もなかった。そんな話の後に、父親が息子に病気であと僅かしか生きられないと伝える場面になるが、母親も同じ場所にいるべきだろう。なぜ隣の部屋でその様子を聞きながら泣いているのか。そこは一緒にいて抱きしめるなりすべき場面だろう。それに、病気がちな父親が大島琴子(倍賞千恵子)の営むケーキ屋にケーキを注文に来たり受け取りに来たりというのもリアリティがない。横の繋がりを演出するのが最優先に見えてしまう。

ラストは30分くらいかけて各エピソードのクライマックスが展開していくのだが、クライマックスに30分はさすがに長い。黒山はタクシーの中で、秘書に頼んでいるレンタルDVDのチョイスをしていた店員と佐々木が同一人物を知る展開が用意されているが、「だから何だよ」って話である。本作にはこういったちょっとした横の繋がりがあるのだが、それが映画の面白みにも、感動にも繋がっておらず、ただちょっと関係があるという程度の話である。それから、津村と雪奈が結婚するところも話が飛躍しすぎだわ。津村がプロポーズしようと思えるほどの感情描写はまるでなかった。また、大島琴子の失恋相手がたまたま店に現れるってどういう展開だよ。さっぱりわからん。

そして、黒山と佐々木が最後に映画館で見ているのは「カサブランカ(1942)」である。もし仮にクリスマスの夜に映画館でリバイバル上映をしているという設定なら、クリスマスものの映画なんだから「素晴らしき哉、人生!(1946)」を選ぶべきだと思うな。日頃の行いが最後に奇跡を起こす話は黒山に響くはずだと思う(この人間なら無理か!?)。しかも、「カサブランカ(1942)」は主人公とヒロインが離れ離れになる結末ですよ!?

エンドクレジットに入るタイミングで、実は各エピソードに名前が付けられていて、そのエピソードごとに登場人物のクレジットが表示されていく。本田翼が演じた大友菜摘のエピソードは単体として捉えるにはあまりにも弱いだろう。「アタックする」とは「告白する」ことを意味すると、ケーキ屋の大島琴子から教えてもらう場面があるが、さすがに当時の20代でも意味くらい分かるだろう。彼女との年の差を感じさせる小ネタとしては非常に弱い。

和製「ラブ・アクチュアリー(2003)」を目指したのだろうが、せめてエピソード全体を明るくすべきだと思うわ。病気で人が死ぬ話を入れる必要を感じない。演者としては山口雪奈を演じた木村文乃はそこそこ好印象だが、却って東出昌大の棒演技が際立つだけになってしまったのは可哀そうだ。

 

 

 

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