【作品#0401】ブリッジ・オブ・スパイ(2015) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ブリッジ・オブ・スパイ(原題:Bridge of Spies)


【Podcast】 

 

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

2015年のアメリカ映画
上映時間は141分

【あらすじ】

1957年、アメリカでソ連のスパイであるアベルがFBIによって逮捕される。保険の弁護を担当するドノヴァンは連邦裁判所の推薦によりアベルの弁護を依頼される。

【スタッフ】

監督はスティーヴン・スピルバーグ
脚本はマット・チャーマン/イーサン・コーエン/ジョエル・コーエン
音楽はトーマス・ニューマン
撮影はヤヌス・カミンスキー

【キャスト】

トム・ハンクス(ジェームズ・ドノヴァン)
マーク・ライランス(ルドルフ・アベル)
エイミー・ライアン(メアリー・ドノヴァン)
アラン・アルダ(トーマス・ワターズ)

【感想】

1962年に実際に行われた人質交換の交渉役を務めたジェームズ・ドノヴァンを中心に描いた作品。アカデミー賞では6部門でノミネートされ、マーク・ライランスが助演男優賞を受賞した。トム・ハンクスはスティーヴン・スピルバーグの監督作品には4度目の出演となった。

結論から言うと、ケチのつけようのない作品だと感じる。仮に減点法で評するなら減点する箇所が見当たらない作品である。

まず、本作はアメリカに潜むアベルが自画像を描いているところから始まる。アベルが自分のことを客観的に見ることのできるキャラクターであることを示すにも相応しい始まりであると感じる。以降は、画家に化けてスパイ活動をする様子を淡々と、でも興味深く映していく。そして、スパイであることがバレてFBIが押しかけてきても毅然とした態度でいるところは後に、ドノヴァンから「不安はないか?」と聞かれて「役に立つか?」と聞き返しているところとも通じている。

以降は、アベルと弁護士ドノヴァンのやり取りを中心に展開していく。スパイとしてプロに徹したアベルに対し、ドノヴァンも弁護士としてプロに徹する。たとえ敵国のスパイであったとしても、アベルが祖国を裏切らなかったことに対して、ドノヴァンは弁護士として最善を尽くしていく。その合間にスパイと弁護士としてだけではなく、人と人として交流している様子をさりげなく映していくところも確実にドラマとして積み上げられている印象だ。

ドノヴァンが敵国のスパイを形式的に弁護していないのは、後に彼が自国のスパイが捕まった時のことまで考えていることを口にするところにも表れている。もしアメリカがソ連のスパイを絞首刑にしたらアメリカのスパイがソ連に捕まった場合、同じ目に遭うだろうと。この働きかけによりアベルは絞首刑を免れることになり、ドノヴァンが恐れていたアメリカのスパイがソ連に捕まるという事態に発展していく。ここで人質交換なら国が動くところだが、言い出しっぺのドノヴァンが交渉の窓口になる。アメリカとソ連のスパイを交換するだけならまだしも、アメリカの学生プライヤーが東ベルリンに捕まった話まで舞い込んでくる。不確定要素が加わり、3者による交渉劇は確実に話を面白くする要素になっている。ドノヴァンが同時に2人のアメリカ人を取り戻すべく、ソ連側と東ドイツ側に交渉していく様子も決して退屈しない。慣れない異国での交渉劇やふとした日常にじれったさを感じさせる展開も緊張感を維持する要素として機能していた。

そして、ドノヴァンは何とか3者の交換の約束を取り付けることに成功する。これは同時に行わなければならない。グリーニッケ橋でアベルとパワーズが向かい合い、チェックポイントチャーリーでプライヤーが解放されたことを確認するのを待つのみである。このただ待つだけという動きのない状況をシンプルなカット割り、トム・ハンクスやマーク・ライランスの表情などで見事に演出している。そしてドノヴァンとアベルの人と人として築いた信頼関係も、寒さの伝わるグリーニッケ橋であってもどこか心温まるものがある。

ラストはドノヴァンが乗る電車からの景色が映る。ベルリンでは壁を乗り越えようとして射殺される男を目撃したが、ラストでは子供たちがフェンスを乗り越える様子を目撃することになる。ちょっと狙い過ぎな演出ではあるが、何かを乗り越えることが意味するところは幾重にも解釈できるし、ドノヴァンを見つけた乗客がかすかに微笑むところも良い。主人公に反対する市民をもっと描けば(学校で子供がドノヴァンの子供であるが故にいじめられる等)もっと劇的になっただろうが、そういった演出をくどくどやっていないところも好印象である。

 

また、本作にはコーエン兄弟が脚本製作に携わっている。コーエン兄弟作品には、「相手に話が通じない」状況がよく出てくる。これぞ、本作でいくら交渉してもソ連側や東ドイツ側に相手にされない状況とリンクする部分はあるし、絞首刑を望む国民を尻目に弁護を引き受けるドノヴァンへの冷たい視線を送る市民とも重なる。さらに、アベルの家族と言われる人物たちの明らかな「嘘」感もコーエン兄弟らしさだろう。

脚本にしても音楽にしても演技にしてもくどさが全くなく、映画の教科書とも言うべき優雅さがある。スティーヴン・スピルバーグ監督の作品群の中でも間違いなく上位に来る出来の作品。




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【予告編】

 

 

【配信関連】

 

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【ソフト関連】

 

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<BD>

 

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映像特典

├冷戦時代の1つの真実 ~ブリッジ・オブ・スパイ
├1961年 ベルリン 分断された都市の再現
├U-2偵察機 撮影秘話
├スパイの交換 ~息詰まる最終局面の追憶
├クレジット