【作品#0382】大いなる西部(1958) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

大いなる西部(原題:The Big Country)


【概要】

1958年のアメリカ映画
上映時間は166分

【あらすじ】

1870年代のアメリカ西部にあたるテキサス州。そこへアメリカ東部からジェームズ・マッケイがパットと結婚するためにやって来た。

【スタッフ】

監督はウィリアム・ワイラー
製作はウィリアム・ワイラー/グレゴリー・ペック
音楽はジェローム・モロス
撮影はフランツ・F・プラナー

【キャスト】

グレゴリー・ペック(ジェームズ・マッケイ)
ジーン・シモンズ(ジュリー・マラゴン)
キャロル・ベイカー(パトリシア・テリル)
チャールトン・ヘストン(スティーヴ・リーチ)
バール・アイヴス(ルーファス・ヘネシー)

【感想】

ウィリアム・ワイラー監督とグレゴリー・ペックが「ローマの休日(1953)」以来となる2度目のタッグを組んだ西部劇。バール・アイヴスがアカデミー賞とゴールデン・グローブの両方で助演男優賞を受賞した。

ジェローム・モロスによるテーマ音楽は日本でもCMなどで使用されており、現代の日本人にも耳馴染みあるメロディであろう。本作の壮大な大地を収める映像に相応しい音楽である。ただ、本作はジェローム・モロスによる音楽ばかりに頼ることなく、ジムとスティーヴの決闘の場面など多くの場面を音楽なしで演出している。映像が何よりも物語る本作において、音楽の使い方もメリハリが効いており、ここぞという場面でその威力が発揮されていると感じる。

東部から来たジムが西部にやって来て洗礼を受けることになる。それでもジムは「手荒い歓迎だ」なんて言ってまともに相手にすることはない。ところが、パットも彼女の父も「許すことができない」と言って翌日には威嚇に出向く。このテリル一家とヘネシー一家は牛の水場の取り合いをしていることが後に判明する。ところが、その水場のあるビッグ・マディの土地所有者はパットの親友でもあるジュリーが代々引き継いでいる。どちらかの一家に譲ることは両家の争いを刺激しかねないことを理解しており、ジムがビッグ・マディを買い取って両家に水を平等に分ける案を提案することになる。

「やられたらやり返す」これが西部の世界の鉄則である。西部劇でよく見られる銃での決闘も、相手が先に銃に手をやったことに対する正当防衛と言う形になる。また、アメリカという国で考えると、基本的に先に仕掛けるのではなく、仕掛けてきた相手にやり返すというのが基本である(真珠湾攻撃など)。ただ、どちらが先に仕掛けたのかすらも分からない両家の争いは、小競り合いを繰り返しているだけになっており、解決の糸口は全く見えてこない。その二者の間を仲裁するのがこの両家の人間ではない第三者のジムである。そしてジムは力ではなく対話での解決を望んでおり、そこが西部の人間には気に食わないところであり、彼らのコンプレックスでもあるのだろう。

アメリカという強大な力を持つ国において、本作は力で解決を望まないジムの望む通りの結末を迎える。ルーファスとテリル少佐がお互いを撃ち合って死んでしまうという、みんなにとって邪魔な存在が同時にいなくなってくれる結末はやや都合が良すぎる気はする。どちらかが生き残ればしこりは残ったはずだろう。

ただ、ジムは力自体を否定している訳ではない。ジムは実際に腕っぷしも強くて、荒馬を乗りこなす勇気と根気も兼ね備えている。結局のところ、力を見せびらかす必要はないが兼ね備えておく必要があり、それがいざという時の助けになるのだ。だからジムが力を持っていなければ、あるいはその力を発揮する勇気がなければ、事態の収拾は図れなかっただろう。力を前面に押し出すジョン・ウェインとは全く違うキャラクターだが、力は必要であることに変わりなく、それをいつ発揮するかというところが問題である。

この広い大地で繰り広げられているのは、両家の牛の水場の取り合いという極めて下らないことである。広々とした大地に雄大なスコアが流れることで、この両家の争いがいかに下らないかを強調しているように思える。また、いくら大地が広大でも、ジムはかつて船で航海していた経験から、その大地の広大さには全く圧倒されていない。

この当時の時代で映画内に対立する二者が出てくると、冷戦を想起せずにはいられない。その対立する両者に対して、平等に資源を分け与えようという考え自体に特に当時のアメリカ人はどう反応したのかは興味深いところではある。

テレビに対抗して当時は多くの超大作映画が作られ、本作もそのうちの1つに数えることができるだろう。できるなら映画館で鑑賞しておきたい映画の1本である。また、シンプルながら「大いなる西部」という邦題もかつての名作という雰囲気に合っている。

【関連作品】


アウトロー(2012)」…クリストファー・マッカリー監督、トム・クルーズ主演のアクション映画。主人公が侵入する家のテレビに本作が流れている場面がある。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

映像特典

├オリジナル劇場予告編

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

映像特典

├Fun in the Country(日本語字幕未収録)

├TVスポット

├オリジナル劇場予告編

 

【音楽関連】

 

<テーマ曲(コンサート映像より)>