【作品#0319】わが谷は緑なりき(1941) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

わが谷は緑なりき(原題:How Green Was My Valley)


【概要】

1941年のアメリカ映画
上映時間は118分

【あらすじ】

年老いたヒューは生まれ故郷のロンダの谷を離れようとしていた。かつてこの谷が緑だったころを思い出す。

【スタッフ】

監督はジョン・フォード
音楽はアルフレッド・ニューマン
撮影はアーサー・C・ミラー

【キャスト】

ウォルター・ピジョン(グリュフィード牧師)
モーリン・オハラ(アンハード)
ロディ・マクドウォール(ヒュー)
ドナルド・クリスプ(ギルム)
サラ・オールグッド(ベス)
バリー・フィッツジェラルド(サイフォース)

【感想】

かの名作「市民ケーン(1941)」を差し置いて、アカデミー賞では作品賞含む計5部門を受賞した作品。また、生涯4度のアカデミー賞監督賞を受賞したジョン・フォードにとって3度目の監督賞受賞となったが、作品賞を受賞したのは本作の1度きりであった。

年老いた主人公が過去を回想するタイプの映画が当時は多く、「チップス先生、さようなら(1939)」や後にジョン・フォードが監督する「長い灰色の線(1955)」なんかも同様だ。この形こそ、当時のハリウッドを感じさせる一つの定石だったのだろう。

本作の原題は「How Green Was My Valley」であり、直訳するなら「私の谷はどれほど緑だったか」といった意味だろうか。タイトルに「緑」という色が入っているのに本作はモノクロ映画である。モノクロの中でその「緑」らしさをいかに感じさせるかという話だが、モノクロらしい味わいの中に人物模様を描くことで色合いを感じさせるところはさすがジョン・フォード監督と言ったところだろう。

本作はプロデューサーのダリル・F・ザナックが「風と共に去りぬ(1937)」に匹敵する4時間越えの叙情詩を思案していたが実現しなかったという経緯があるらしい。確かに本作はテンポは良く、小学生くらいだったヒューが中学を卒業して炭鉱で働くまでがメインストーリーである。その割には演じているのがずっとロディ・マクドウォール(後の「猿の惑星」シリーズのコーネリアス役)であり、話が進んでいるのか止まっているのかよく分からなくなる。学校に入学したと思ったら、父親から「首席で卒業とは大したものだ」と言われ、「えっ!?もう卒業したんかい」となってしまう。アンハードの嫁いでから離婚までの話もほとんど描かれていない。よくまとまった映画ではあるが、モーガン一家の一代記を描くにはあまりにも時間が少なかった印象である。

たとえ離れ離れになっても、最強なのは家族である。母のベスがとにかく力強い。外野の人間はちょっとした噂を耳にしただけで事実を確認せずに陰口を叩いたり攻撃したりする。ギルムが炭鉱主側に付いたと噂されると石を家に投げ込まれ、離婚して帰って来たアンハードとグリュフィード牧師はあらぬ噂をされてしまう。人って自分で事実を確認せずに、他人から聞いた話を鵜呑みにすることはよくある。残念ながらそれは長い時を経た現在も同じである。

ただ、そんな中でも最も強いのが家族の絆である。ジョン・フォード監督は家族愛をテーマに映画をたくさん撮ってきた。本作もその代表作であると感じるし、たとえどんな困難があっても家族の絆で乗り越えていく。もちろん時代の流れで離散することはあっても、「地図なんか見なくても、子供たちは家の中よ」と母が言う。「緑」が「永遠」を象徴する色であることから、この家族が永遠に続いていくようなそんな気がする。もっとじっくり見せてほしかったというのが正直なところだが、素晴らしい作品であることは間違いない。




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