【作品#0289】四日間の奇蹟(2005) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

四日間の奇蹟


【概要】

2005年の日本映画
上映時間は118分

【あらすじ】

留学先の事件でピアニストの夢を絶たれた敬輔は、その事件に巻き込まれて両親を失った知的障害を患う少女の千織を引き取る。サヴァン症候群によりピアノの才能を発揮した千織は各所に招待されてピアノの演奏をしており、敬輔のかつての高校時代の後輩であった真理子の働く療養センターに招待される。

【スタッフ】

監督は佐々部清
音楽は加羽沢美濃
撮影は坂江正明

【キャスト】

吉岡秀隆(如月敬輔)
石田ゆり子(岩村真理子)
尾高杏奈(楠本千織)
西田敏行(倉野順次)
松坂慶子(倉田和枝)

【感想】

2003年に朝倉卓弥が発行した同名小説の映画化。吉岡秀隆、西田敏行は佐々部清監督の前作「半落ち(2004)」に続いての出演となった。

事故に遭った女性の心が他の女性の身体に憑依する話って、東野圭吾の小説「秘密」ないしはその映画化作品「秘密(1999)」と同じだな。「秘密(1999)」は憑依するのが母から娘であり、それによって生じるドラマの意義はそれなりにあったが、本作は千織の身体に全くの他人である真理子の心が憑依する意義が見当たらない。また、信頼を寄せる医師の倉田がそばにいるのに、憑依していることを当初は敬輔と真理子だけの秘密にする理由も見当たらないし、そもそも敬輔はこのファンタジーを簡単に受け入れ過ぎだわ。しかもその憑依する期間が3日でも5日でもなく、なぜ4日であるのかも「そう言われたから」で済ませるのはどうかと思う。ファンタジーであることに乗じて世界観の創っていくのもご都合主義的だ。

そもそもだが、敬輔が千織を引き取る理由が分からない。留学先の事故で両親を失った千織を血縁関係もない敬輔が引き取るのは無理があるだろう(いくら海外とはいえ、ひったくりくらいで銃を使うかな)。両親を失ったとしても、千織には親族が誰か1人くらいはいるだろう。子育ての経験もない独身の男が少女を引き取るって、「よっぽどのこと」だぞ。これを冒頭のちょっとした回想シーン程度で説明されてもさすがに説明不足が過ぎるわ。

千織の身体に真理子の心が憑依してから、当初は画面内に映るのは千織を演じた尾高杏奈の姿なのだが、何度となく石田ゆり子の姿も登場する。尾高杏奈が千織と真理子をうまく演じ分けているのに、そこへ石田ゆり子を何度も出す必要性が感じない。仮に出すにしてもせめて1箇所だけだと思うわ。これだと好演した尾高杏奈が報われないわ。

また、真理子の描写で違和感のある箇所がある。冒頭近く、療養センターで真理子が食事を運んでいる最中、入所者の男性が食事を喉に詰まらせて食事を地べたにまき散らしてしまうシーンがある。そこで真理子はその喉を詰まらせた男性を対応するのではなく、地べたに落ちた食事を拾うことを優先する。しかも、隣に座っている入所者の女性がその男性へ対応していると、その男性へ大したフォローをすることもなくその場を立ち去る。そこは、まず入所者へのフォローが優先で、それが終わってから落ちた食事を片付けるという順番でしょう。入所者からも慕われる真理子の最初の場面にしては、色んな意味であまりにも気が利いていない。さらに真理子は千織と外で遊んでいると、急な天候の悪化により避雷針に雷が落ち、その衝撃で避雷針が壊れて真理子と千織のところへ落ちてくる。天候が悪化したならなぜすぐに施設内に戻って来ないのか。これだったら、千織のわがままに付き合ってちょっと離れた場所まで行ってしまい、悪天候に気付いて施設まで戻って来るが、その途中に被害に遭うとかにすれば良いのに。この2点だけでも細かい演出に気が利いていないし、その結果、真理子があまりできない職員に見えてしまうのは残念だ。

結局、ラブストーリーに着地する話なのだが、真理子が敬輔に惚れる理由も見当たらない。高校時代に片想いだったとしても、その後真理子は結婚はしている訳だし、10年以上ぶりに再会して、たったの4日で「好きだ」と言えるほどの愛があるようには到底見えなかった。ラストにかけて、今度は敬輔と千織(心は真理子)がキスをすると、千織の身体に敬輔の心が憑依する展開になる。そもそも真理子の心が千織の身体に憑依するのは落雷事故が原因だったが、それも「なんじゃそりゃ」って話である。仮にこの設定を受け入れたとして、今度はキスすると憑依するってなっても、「いや、そんなルール一切聞いていない」状態だわ。描き方や尺の取り方からどう考えてもクライマックスなんだが、ポカーン状態。ファンタジーは序盤にルール説明をしたら、後でゴールポストを動かしてはいけないと思うわ。

倉田夫妻の描き方もあまりにも中途半端だし、この映画、物語は果たして観客に何を伝えたかったのかがさっぱりだった。




取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(日本語)

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(日本語)

映像特典

├メイキング

├ツアーガイド角島

├インタビュー集

├尾高杏奈オーディション

├クランクアップ会見

├特報/劇場予告/TVスポット

├DATA FILE

├PHOTO GALLERY/POSTER GALLERY

 

【書籍関連】

<四日間の奇蹟>

形式
├紙

├電子

出版社

├宝島社文庫

著者

├朝倉卓弥

長さ

├413ページ