【作品#0266】ドロップ(2008) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ドロップ

 

【概要】

 

2008年の日本映画

上映時間は122分

 

【あらすじ】

 

私立の中学に通う信濃川ヒロシは、憧れの不良になるため、不良が多いであろう公立高校へ転校することにする。

 

【スタッフ】

 

監督/原作/脚本は品川ヒロシ

音楽は沢田完

撮影は藤井昌之

 

【キャスト】

 

成宮寛貴(信濃川ヒロシ)

水嶋ヒロ(井口達也)

本仮屋ユイカ(みゆき)

波岡一喜(森木隆)

綾部祐二(ルパン)

中越典子(信濃川ユカ)

上地雄輔(木村ヒデオ)

遠藤憲一(達也の父)

哀川翔(江藤)

 

【感想】

 

芸人コンビ品川庄司の品川ヒロシが2006年に発表した小説「ドロップ」を自ら監督して映画化した監督デビュー作。原作の人気、人気若手俳優の出演もあって19億円以上を売り上げる作品となった。また、品川ヒロシと同じ芸人仲間も多く出演している。

 

そもそもの話だが、いくら当時の若手俳優といえど、当時20代半ばの「大人」として認識される俳優が中学生の役を演じるにはいささか無理がある。中学を卒業するところまで、彼らが中学生であることをすっかり忘れて見ていたが、「大人」として完成されたルックスを持つ彼らを青春モノの映画に出演させるにしても、せいぜい高3くらいが限界じゃないだろうか。この時点で映画のリアリティを大きく欠いてしまうことになっている。また、当時20そこそこの本仮屋ユイカでさえも、さすがに中学生役は無理があるし、如何せん映画のヒロインとしてはあまりにも扱いが雑であると感じるわ。

 

私は学生時代に不良ではなかったし、周囲に不良もいないような環境で育ったのだが、まぁ不良への憧れというのは理解できないものではない。ただ、それをほぼ説明なしに本題突入というのはどうかと思う。彼が不良に憧れる描写は冒頭に1つだけでも示しておくだけで印象は変わるものだ。繰り返しになるが、やはり演じる俳優が「大人」なだけに、「いい大人が何やってんだよ」というような冷めた視点になってしまう。こういうノイズを避けるためにも映像化するならそれ相応のリアルな役者にすべきだった。

 

それから、「人間はそう簡単に死なない」というテーマに対して、実はそうではないということを主人公が知る形となっている。主人公は不良になって暴力ばかりの人生を送ってきた(と言ってもちょっとあざとかができる程度)。そんな自分を大切に思ってくれていたヒデの死で、主人公は「人間は実は簡単に死んでしまうんだ」ということに気付けたはずだ。なのに、街を出ていくと言った主人公に達也がタイマンを挑んでくると、主人公はあっさり暴力で応えている。ここは成長した主人公が暴力以外の方法でここは解決させなければならないと思う。テーマに対する回答や考えがあまりにも浅はかで、とても解決したり成長したりしたようには見えない。

 

そして、本作はいわゆる「テレビ的な笑い」を映画内に取り入れている。品川庄司として漫才もやっており、多くのバラエティ番組にも出演している品川ヒロシの脚本作品だから、当然ながら本作内でコメディとしてやっている部分もすべて彼の演出になるわけである。「テレビ的な笑い」をそのまま映画に取り入れたとしても、取り除かなければならないものがあり、それは「テロップ」と「誘い笑い」であろう。バラエティ番組では効果的に「テロップ」や「誘い笑い」を使っている(良いか悪いかは別にして)。「テロップ」はそれを出すタイミング、文字の大きさや「!」などの記号を使うことで、ゼロから笑いを生み出したり、ちょっとした笑いを大きな笑いに変えることができる。また、ボケた人が誘い笑いをしたり、あるいは周囲が笑い出したりすることで、面白くなくても面白い雰囲気にすることができるし、また観覧のお客さんがいれば彼ら、彼女らの笑い声で面白く演出することもできる。これらの演出に慣れた観客に対して、「テロップ」や「誘い笑い」といった援軍なしの笑いを映画内でやったとしてもつまらないものになるのは割と目に見えていたはずである。もちろん面白いものであれば「テロップ」も「誘い笑い」もいらないのだが、残念ながら本作では笑ってしまうほどの場面は皆無である。このテレビ的な笑いをそのまま映画内に取り入れること自体はある意味実験的だと思うが、完全に失敗だと言えるだろう。ただ、品川監督は次回作以降もこの手法を取り続けている。また、品川ヒロシ監督の仲間のお笑い芸人がカメオ出演的に登場する場面は、突如としてその芸人による「ショートコント」が始まるようなもので、話の本筋にほとんど関連していないところは1か所程度ならまだ良いが何箇所もあるのはかなり気にかかる。

 

それから原作は著者の品川ヒロシの自伝的なものらしい(主人公の名前だけ見れば大体想像がつくが)。つまり主人公を演じた成宮寛貴に自分を投影させているのだろう。もちろんキャスティングはマーケティングを見込んでのものであろうが、成宮寛貴をわざわざ主役に持ってきたところに監督のナルシズムを感じてしまう。品川ヒロシという芸人が監督したという色眼鏡で見ると、「アクションはまずまずだな」という印象こそあるが、映画として見ると悪い意味で「普通」だし、描いたテーマやコメディに関しては何ならマイナスだと言える。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(日本語)

 

【ソフト関連】

<DVD(2枚組/スペシャル・エディション)>

言語
├オリジナル(日本語)

音声特典

├成宮寛貴(出演)、水嶋ヒロ(出演)、品川ヒロシ(監督)による音声解説
映像特典(Disc1)

├特報/予告編/TVスポット

映像特典(Disc2)

├メイキングドキュメンタリー『ドロップ撮影日誌』

├成宮寛貴・水嶋ヒロ・品川ヒロシ監督スペシャルインタビュー

├舞台挨拶キャンペーン映像集
├スピンオフ「ショートストーリー」

 

<BD(スタンダード・エディション)>

収録内容
├上記DVDと同様