【タイトル】
ハムレット(原題:Hamlet)
【概要】
1996年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は243分
【あらすじ】
デンマーク王の息子ハムレットは、現れた亡くなった父の亡霊が、父の兄クローディアスが自分を毒殺したのだ真相を教えてくれる。ハムレットは狂ったふりをしながら父を殺した真相を暴き出そうとする。
【スタッフ】
監督/脚本はケネス・ブラナー
音楽はパトリック・ドイル
撮影はアレックス・トムソン
【キャスト】
ケネス・ブラナー(ハムレット)
ケイト・ウィンスレット(オフィーリア)
リチャード・ブライアーズ(ボローニアス)
ジュリー・クリスティー(ガートルード)
デレク・ジャコビ(グローディアス)
ルーファス・シーウェル(フォーティンブラス)
ジョン・ミルズ(ノルウェー王)
ティモシー・スポール(ローゼンクランツ)
ロビン・ウィリアムス(オズリック)
ジョン・ギールグッド(ブライアム)
ジュディ・デンチ(ヘキュバ)
ローズマリー・ハリス(劇中劇の王妃)
チャールトン・ヘストン(劇中劇の王)
ジャック・レモン(マーセラス)
【感想】
言わずとしれたウィリアム・シェイクスピアの名作「ハムレット」の映画化。今までに幾度となく映像化されてきたが、舞台を19世紀に変更している以外はかなり原作に忠実なようで異例の243分という4時間超えの上映時間となっている。シェイクスピア俳優としても知られるケネス・ブラナーが念願の「ハムレット」を映画化し、かつてテレビ映画でハムレット役を演じ、ケネス・ブラナーが俳優を志す契機となったデレク・ジャコビが宿敵クローディアスを演じた。ケネス・ブラナー監督の前作「フランケンシュタイン(1994)」が興行的に失敗したこと、メル・ギブソン主演の「ハムレット(1990)」が製作されてからそれほど期間が空いていないこと、4時間を超える上映時間の作品になることなどから資金提供してくれる映画会社がなかなか現れなかったが、キャッスルロックエンターテイメントと折り合いがついたことで、ケネス・ブラナー監督念願の企画が実現した。
特に英国出身のビッグネームが多数出演しており、オスカー受賞者(本作以降含む)が9人もおり、その数は「ザ・プレイヤー(1992)」の12人に次ぐ数字らしい。ただ、ジュディ・デンチやリチャード・アッテンボローなどのキャストは驚くほどに出演時間は少なく、非常に贅沢なキャストとなっている。また、本作撮影中に「タイタニック(1997)」への出演が決まったケイト・ウィンスレットの瑞々しさも忘れがたいものである。
言わずとしれたシェイクスピアの代表作の何度目か分からない映像化。私はローレンス・オリヴィエ監督/主演の「ハムレット(1948)」、フランコ・ゼフィレッリ監督/メル・ギブソン主演の「ハムレット(1990)」は鑑賞しており、「ハムレット」映画としては本作が3本目になる。ローレンス・オリヴィエ版が153分、フランコ・ゼフィレッリ版が143分と比べても圧倒的な長さとなる243分という4時間超えの上映時間とあり、やはり描写としては非常に丁寧で、各キャラクターの心情描写も分かりやすくなっている。しかもほとんどが城内の場面でありながら、この243分という上映時間を感じさせないのは本当に凄い。ハムレットがイギリス行きとなって城内から離れる場面にやや退屈する印象こそあるが、これこそシェイクスピア俳優ケネス・ブラナー念願の企画とあり、その情熱は作品からひしひしと伝わって来る。また、少ないながらもパトリック・ドイルによる音楽の使い方も非常に効果的で、独白などの城内の場面の多くが長回しが使われるなど、どこか舞台劇の様相を呈しながらもしっかり映画として成立させているその手腕は確かなものである。
また、本作は70mmで撮影されており、Blu-rayで見るその美しい画面にはうっとりさせられる。口や目などのクローズアップ、城内での鏡を映した場面、城内から飛び出した美しい情景など見事である。城内の内装も豪華絢爛で、特にデンマーク国旗にも使われる赤色(服、カーペット、血など)が非常に映える。
「ヘンリー五世(1989)」で20代ながら監督デビューしたケネス・ブラナーが、シェイクスピア原作の映画化としては3作目となった本作。以降もシェイクスピア原作の映画化はしているが、どう見ても彼のシェイクスピア俳優として、作家として本作が集大成とも言えるだろう。多くの制約のある映画製作の中で、243分もの上映時間の映画を監督することができ、しかも主役まで演じることができたわけだし、その演じる姿(特に独白の場面)には役者としての楽しさ、情熱まで伝わってくる。長尺の映画ゆえ敬遠されがちな部類の作品だと思うが、一見の価値はあると思う。
【音声解説】
参加者
├ケネス・ブラナー(監督/脚本/ハムレット役)
├ラッセル・ジャクソン(教授)
監督/脚本/主演を兼ねたケネス・ブラナーと、シェイクスピア研究の権威であり、ケネス・ブラナーのシェイクスピア作品で台本監修を担うバーミンガム大学のラッセル・ジャクソン教授の2人による対話形式の音声解説。4時間に渡る作品でありながら、撮影時の苦労、カメラの意図、セリフの作り方、今までのハムレット映画との違い、俳優の印象など多くを語ってくれる。特にシェイクスピアの作品に多く触れている人や、詳しい人ならより興味深い音声解説ではあるだろう。ただ、ケネス・ブラナーの話しているところを遮ってまでラッセル・ジャクソンが話す場面が多々あり、字幕で見ていたとしても非常にノイズに感じられるものであるのは残念なところ。
【関連作品】
「ハムレット(1948)」…シェイクスピアの原作をローレンス・オリヴィエが映画化
「ハムレット(1964)」…シェイクスピアの原作をグレゴリー・コージンツェフ監督が映画化したソ連映画
「ハムレット(1969)」…シェイクスピアの原作をトニー・リチャードソン監督、ニコル・ウィリアムソン主演で映画化したイギリス映画
「ハムレット(1990)」…シェイクスピアの原作をフランコ・ゼフィレッリ監督、メル・ギブソン主演で映画化したアメリカ映画
「ハムレット(1996)」…シェイクスピアの原作をケネス・ブラナー監督、主演で映画化したイギリス/アメリカの合作映画
「ハムレット(2000)」…シェイクスピアの原作をマイケル・アルメレイダ監督、イーサン・ホーク主演で映画化したアメリカ映画
「女帝[エンペラー](2006)」…シェイクスピアの原作をチャン・ツィイー主演で映画化した香港/中国の合作映画
取り上げた作品の一覧はこちら
【ソフト関連】
<BD>
言語
├オリジナル(英語)
音声特典
├ケネス・ブラナー(監督/脚本/ハムレット役)、ラッセル・ジャクソン(教授)による音声解説
映像特典
├ケネス・ブラナーによるイントロダクション
├ “ハムレット”ができるまで
├カンヌ映画祭用プロモーション映像
├オリジナル劇場予告編