【作品#0267】漫才ギャング(2010) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

漫才ギャング

 

【概要】

 

2010年の日本映画

上映時間は137分

 

【あらすじ】

 

漫才コンビでボケ担当の黒沢飛夫は、ツッコミの相方から解散を告げられてしまう。その相方に説得へ行った際に手違いで逮捕されてしまい、留置所行きになってしまう。飛夫その留置所で同室だった鬼塚龍平という男と話していると、笑いのセンスがあることに気付き、思い切ってコンビにならないかと誘う。

 

【スタッフ】

 

監督/原作/脚本は品川ヒロシ

音楽は林祐介/御供信弘

撮影は北信康

 

【キャスト】

 

佐藤隆太(黒沢飛夫)

上地雄輔(鬼塚龍平)

石原さとみ(宮崎由美子)

綾部祐二(石井保)

新井浩文(城川)

笹野高史(門倉)

秋山竜次(小渕川)

宮川大輔(金井)

 

【感想】

 

お笑い芸人がの品川ヒロシによる監督2作目。東日本大震災の翌週公開という事情も影響したか、前作の半分にも満たない8億円程度のヒットに留まった。

 

お笑い芸人が監督する作品で、漫才コンビを描くとなるとそのハードルを自ら上げていることになり、挑戦であると言える。ただ、本作も前作同様、コメディ要素はほぼ全くと言っていいほど笑えない。漫才の部分は明らかに品川庄司の漫才を思わせるところがある。彼らの漫才の実績はあまり記憶にないのだが、品川庄司のファンなら楽しめたのだろう。ただ、飛夫と鬼塚のやり取りはあまりにも台本っぽいし、用意された笑い感が強い。もちろん漫才にも台本があるのだが、たとえ台本があったとしてもその漫才だからこそ通じるものがある。その漫才を映画っぽくではあるが、ただ映画内で見せ続けられたとしても、それは映画内の漫才という、台本として用意された漫才を映画の台本通りにやっているという違和感が先行して笑えなくなっているのだと思う。そんなに漫才を見せたいのなら品川庄司で漫才をやれば良い。なぜこの題材を映画でやりたいのかという動機は見えてこない。

 

それから、漫才以外の箇所のコメディは前作「ドロップ(2008)」でも使っていた、「テレビ的な笑い」のメソッドを引き継いでいる。皮肉なことに、漫才の場面よりかは、漫才以外の「テレビ的な笑い」の箇所の方が幾分かマシである。ただ、マシなだけで、前作露呈した映画内に「テレビ的な笑い」をそのまま持ち込んでも面白くないという部分はそっくりそのままである。漫才にも言えることだが、台本があることを観客に感じさせてはいけないと思う。その意味で本作はあまりにも台本感が強い。

 

また、「お笑いを舐めるな」というセリフがある割には、即興コンビとも言える飛夫と鬼塚のコンビはちょっと練習しただけで初舞台にして笑いを取ることに成功している。ここで苦労するも成功するも脚本次第なわけで、原作/脚本の品川ヒロシ監督の考えた設定なわけだから、「ちょっと努力すれば笑いくらい簡単に取れる」と言っているように聞こえる。実際に本作中で笑いが取れずに主人公が困る場面はない。

 

そして、主人公は前作の無敵キャラとは違い、芸人仲間に挨拶すらしないくせに実力で頂点を取れると考えている思い上がってたキャラクターである。10年も芸人生活を続けていても謙虚さすら身につけることができず、自分のわがままで彼女とも別れているのだ。その軸で本作を見ていると、主人公はあまり成長しているようには見えず、周囲の環境に恵まれているだけに思えてしまう。冒頭で挨拶をしないことをしてきた芸人の先輩(成宮寛貴)が終盤に再登場して、主人公に「お前最近変わったよな」と言う場面があるが、こういうのをセリフで言わせてしまうのはあまり好みではない。その後はお笑い的な着地にしているが、もっとスマートで映画的な見せ方ができたと思う。またラストでは、飛夫が養成所で講師を頼まれて現場に向かう途中で鬼塚に出会うわけである。ここでは飛夫と鬼塚の再開がメインとして描かれる。ところが周囲には養成所に入った新人たちがただ彼らの会話が終わるのを待っている。わざわざ周囲の人間が待つ状況にするなら、飛夫が周囲を待たせることを一言断る描写を入れる必要がある。せっかく成長した風に描いているのに、結局周囲に迷惑をかけていることにすら気付けていないという駄目なキャラクターに見えてしまう。ほんの一言だけでも言わせるだけで大きく印象が変わるのに、それにすら製作者側が気付けていないのだとしたらそれは残念としか言いようがない。

 

それからヒロインの扱いも悪い意味で前作と変わっていない。前作の本仮屋ユイカはなんのために登場したのかよくわからないキャラクターであったが、本作の石原さとみが演じた由美子は飛夫を終始支えるキャラクターとなっている。ブレイクした芸人が下積み時代から彼女に支えてもらっていたなんて話はよく耳にするのでリアリティに欠けるとは思わない。ただ、かなり身勝手な主人公に対して、そのほとんどを受け入れる姿にはやや違和感がある。もちろんこのような女性もいるだろうが、理想の女性像として美化しすぎている印象はある。

 

あと、どう考えても本作は137分もの尺を取って描く内容には見えない。せいぜい1時間半程度で描く内容だろう。その割には一度組んだコンビを解消して元のコンビでまた活動していこうという動機はさっぱり見えないところであった。芸人仲間のカメオ出演も多すぎるし、その芸人仲間の登場シーンが本筋と関係ないところが多いのも前作とほとんど変わっていない。

 

 

 

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├佐藤隆太(出演)、上地雄輔(出演)、品川ヒロシ(監督)による音声解説

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├特報・予告編・TVスポット

 

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├オリジナル(日本語)

音声特典

├佐藤隆太(出演)、上地雄輔(出演)、品川ヒロシ(監督)による音声解説

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├特報・予告編・TVスポット

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