【作品#0261】ガチ☆ボーイ(2008) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ガチ☆ボーイ

 

【概要】

 

2008年の日本映画

上映時間は120分

 

【あらすじ】

 

大学のプロレス研究会に入ってきた秀才として知られる五十嵐だったが、実は事故が原因で寝てしまうとその日の記憶をなくす障害を抱えていた。

 

【スタッフ】

 

監督は小泉徳宏

音楽は佐藤直紀

撮影は葛西誉仁

 

【キャスト】

 

佐藤隆太(五十嵐良一)

サエコ(朝岡麻子)

向井理(奥寺千尋)

仲里依紗(五十嵐茜)

泉谷しげる(五十嵐恒雄)

 

【感想】

 

「タイヨウのうた(2006)」で若干26歳ながら監督デビューした小泉徳宏の監督2作目。ただ、公開初週初登場7位で、比較的甘めの評価でおなじみのキネ旬でも酷評されてしまった。

 

主人公は事故により、寝てしまうとその日の記憶をなくしてしまう障害を抱えている。その事実を観客向けに示すのは映画的に1幕が終わる40分過ぎからである。そして翌日、五十嵐は部室に来る際に初めてこの場所へ来たような描かれ方がしていた。となると、入部してから前日まではどうしていたのか。五十嵐が朝起きてすぐに日記を見るようにと妹が工夫してくれるが、今更かよ。この障害の設定も甘々で、もしこの障害を抱えているなら、記憶のない日が積み重なり、日記を読む量もどんどん増えていくが、そういった苦労が描かれることはない。

 

そしてこの五十嵐はこの障害については一部の部員にだけ白状したまま話が進み、メモがなかったことで体育館を押さえられなかった件が発覚したときに全部員に白状することになる。安全第一でプロレスに取り組む奥寺の言っていることが正しく、障害が知られたくないとしても五十嵐のわがままにしか見えず、結果的にそれが原因で周囲に迷惑をかけてしまっている。また、事情を知っている部員とそうでない部員がいることで生じるドラマもほとんどない。というか、その障害を抱えたまま、人気を得るためとは言え、やらせプロレスの勝者に仕立て上げるのはあまりにも鬼畜だし、主人公にとってあまりにも酷な話である。

 

こんな障害を抱えてしまったからこそ、主人公が毎日を「ガチ」で生きていきたいという考えには一定の理解は示すが、それが勝負の決まっているプロレスでも「ガチ」で勝負するというのは違う気がする。たとえ台本通りで負けが決まっているプロレスの試合であったとしても、「ガチ」で取り組んで楽しんだり、人気者になったりすることはできる。実はこの設定はプロレスだから成立している話である。主人公が野球なりサッカーなりに興味を持っていたらこの設定は破綻してしまうのだ。私はプロレスファンではないが、この映画を見たプロレスファンはあまり良い気分がしないのではないだろうか。

 

さらには、体格でも技術でも劣る主人公が人気レスラー相手に挑み続けるところで感動させようとしている。「帰ってきたドラえもん」で体格で劣るのび太がジャイアンに立ち向かい、ジャイアンを根負けさせるのと同じように見える。ここに着地するなら「試合前から勝負が決まっているプロレス」はもはや関係なくなってくる。主人公は最後に負けるのだが、これは「ロッキー(1976)」がやりたかっただけだろう。当時20代の監督だが、結局のところ「気合」とか「根性」といった古臭い話なんだね。

 

それから、コメディのセンスは絶望的と言って良い。見ているこっちが恥ずかしくなる。いわゆる「滑り芸」的な笑いの取り方をしているが、笑わせようとしているのが露骨すぎて醒めてしまう。また、ベタな演出も多く、バスで居眠りするという誰もが想像できる展開の上、携帯電話の充電が切れて連絡が取れないって、2008年当時でも古臭いんじゃないか。というか、こんな状態になりかねない息子に対して、主人公の親があまりにも冷たすぎる。最後に試合を見に来たからOKとは思えない。

 

改めて振り返っても、主人公にわざわざ障害を背負わせて苦しませるという設定に疑問しか感じない。主人公は堕落した若者という訳でもなかった。若者が何かに熱中しその日を一生懸命に生きる姿を描きたいとしても、別に主人公に障害を負わせる必要はない。障害×スポーツ×青春×家族=感動みたいな安易な構造と取れる。興行的にも批評的にも失敗したことはもはや当然と言える。

 

 

 

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├メイキング特番「WELCOME TO GACHI★BOY WORLD!」

├「身体に刻まれた記憶 映画「ガチ☆ボーイ」メイキング・スペシャル~「物語」と「現実」が交わる瞬間」

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