【タイトル】
パッチギ!LOVE&PEACE
【概要】
2007年の日本映画
上映時間は127分
【あらすじ】
前作から5年後。息子の病気を治すために東京に移ったアンソンとその一家を描く。
【スタッフ】
監督は井筒和幸
脚本は井筒和幸/羽原大介
音楽は加藤和彦
撮影は山本英夫
【キャスト】
井坂俊哉(アンソン)
中村ゆり(キョンジャ)
藤井隆(佐藤)
西島秀俊(野村)
【感想】
大きな評価を得た「パッチギ!(2004)」の続編。前作で高岡蒼佑が演じたアンソンを井坂俊哉が、沢尻エリカが演じたキョンジャを中村ゆりが引き継いだ。舞台を東京に移したためか前作の主人公であった康介は登場しないが、桐谷健太、キムラ緑子は続投。
前作のメインキャラクターの1人は登場せず、2人はキャスト替えの時点で別の話にした方が良かったんじゃないかと思える。しかも前作から5年が経過して舞台は東京に移っている(子供の治療のための移住らしいが、舞台変更の理由としてはあまりピンとこない)。前作のラストのキョンジャと康介の会話は何だったのか。この時点でかなり残念である。
前作では日本人と在日韓国人の間にあった溝を、康介が「イムジン河」を歌うことで個人のレベルで埋めようとしていた話だったが、本作はそういう溝を埋めようという話ではなく、在日韓国人が日本人から酷い仕打ちを受け続けていることを訴えている映画に見える。確かに、日本人の中にも在日韓国人と聞くだけで避けたり、罵ったりする連中はいるだろう。だが、アンソンの息子が筋ジストロフィーになることも、芸能界で枕営業させられることも在日韓国人であることとは一切関係のないことである。在日韓国人であることで受ける弊害と、在日韓国人でなくても受ける弊害を一緒くたにして「韓国人なんかに生まれたくなかった」と言わせるのはどうかと思う。
また、主人公たちと仲良くなる日本人としては藤井隆演じる佐藤という人物が登場する。前作の康介の苦労は何だったのかと思うくらいに彼らと当たり前に交わる。ただ、佐藤が彼らのために命を張ったり、何かを主張したりするまでのドラマは描かれていなかったし、ラストでキョンジャを連れ出しに来るところもそれまで彼らがほとんど関わっていなかったのでピンとこないところがある。
そして、前作では若者の有り余るエネルギーを「パッチギ(頭突き)」などで開放していたが、本作は冒頭の駅の場面とラストに少しあるだけである。本作はそのエネルギーをキョンジャによる舞台挨拶でのカミングアウトのところに使っているのだと思うが、監督の言いたいことがドストレート過ぎてただの主張にしかなっていない。
本作はどう考えても蛇足だったし、駄作だと言える。在日韓国人というだけで味わう苦労についても、それを理解しようとする日本人が在日韓国人からも日本人からも冷たくあしらわれるドラマは前作で十分に描かれたと言ってよい。現在進行形の問題だからこそ、時が経っても同じテーマで映画は作られるものだと思うが、前作を潰してしまうようなキャスティング、登場人物、強すぎる主張によって前作の評価さえ落としかねないものとなっている。ただ、中村ゆりの好演は素直に褒め称えたい。
【関連作品】
「パッチギ!(2004)」…シリーズ1作目
「パッチギ!LOVE&PEACE(2007)」…シリーズ2作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(日本語)
音声特典
├井筒和幸(監督)、李鳳宇(プロデューサー)、井坂俊哉(出演)、中村ゆり(出演)による音声解説
映像特典
├キャスト&スタッフプロフィール 一言コメント付き
<DVD(2枚組/プレミアム・エディション)>
言語
├オリジナル(日本語)
音声特典
├井筒和幸(監督)、李鳳宇(プロデューサー)、井坂俊哉(出演)、中村ゆり(出演)による音声解説
映像特典(Disc1)
├キャスト&スタッフプロフィール 一言コメント付き
映像特典(Disc2)
├井筒監督ロングインタビュー
├李鳳宇プロデューサーインタビュー
├メイキング1「勝ち獲れ!パッチギせよ」
├メイキング2「アニョハセヨ パッチギ!」
├パッチギ!の音楽
├プロモーションドキュメント
├予告&TVスポット集
封入特典
├特製台本(決定稿)
├特製ブックレット