【作品#0190】マイ・フェア・レディ(1964) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

マイ・フェア・レディ(原題:My Fair Lady)

 

【概要】

 

1964年のアメリカ映画

上映時間は173分

 

【あらすじ】

 

言語学を専門にするヒギンズ教授は、下品な言葉遣いをしているイライザが生徒にしてくれと頼んで来たので、彼女をレディに仕立て上げられるように取り組んでいく。

 

【スタッフ】

 

監督はジョージ・キューカー

音楽はアンドレ・プレヴィン

撮影はハリー・ストラドリング

 

【キャスト】

 

オードリー・ヘブパーン(イライザ・ドゥーリトル)

レックス・ハリソン(ヒギンズ教授)

スタンリー・ホロウェイ(アルフレッド・ドゥーリトル)

ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(ピカリング大佐)

グラディス・クーパー(ヒギンズ夫人)

 

【感想】

 

製作前から撮影中まで様々トラブルのあったことで有名なアカデミー賞作品賞含む8部門を受賞した作品。主演したのに歌をマーニ・ニクソンに吹き替えられたオードリー・ヘブパーンはアカデミー賞にノミネートすらされなかった。

 

この映画は構成に問題があるように思える(原作があるのは承知だが)。映画の割と序盤にイライザはヒギンズ教授のところへやってくるが、下町の花売りをしていた彼女が、ちょっと甘い言葉をかけられたくらいで翌朝にはヒギンズ教授のもとへやって来るという心境が掴みづらい。彼女が「素敵な花売りになりたいが、粗野で下品な言葉遣いからそうなれない」などと思っている描写がほとんどなく、これだけ貧しそうなんだからで済ませるのは映画の礎としてははっきり言って失敗だと思う。

 

そしてこの主人公を演じたのは撮影当時34歳になっていたオードリー・ヘブパーンである。当時大スターだった彼女が田舎育ちの貧しい花売りの町娘を演じるにはやや無理を感じるため、実生活でも貧しい田舎育ちの無名の女優なんかの方が良かった気もする。

 

ところが、このオードリー・ヘブパーンは他の映画ではなかなか見せない粗野な言動やおかしな発音で、上の階級の威張り散らす男たちに負けん気が強い女性を演じているのだが、これがなかなか新鮮ではある。なので皮肉なことに、映画としても登場人物としても、イライザが上品な淑女になっていくにつれて、その魅力が徐々になくなっていくのだ。

 

結局、年上の男性と恋仲になる(匂わせ程度だが)という、「ローマの休日(1953)」「麗しのサブリナ(1954)」「昼下りの情事(1957)」「パリの恋人(1957)」などで見たいつものオードリー・ヘブパーンなのである(それが良いという人にはなんの問題もないだろうが)。ただ、彼女が淑女になっていく過程も尺を取って描いている割に、突然発音がうまくなったり、ドレスを着こなしたりしているように見え、内面にしても振る舞い等の外から見える部分にしてもあまり努力の成果という感じがしない。

 

そしてもう1人の主人公と言えるヒギンズ教授。彼に至っては映画の最初から最後までほとんど変わっておらず、ただ彼女が好きになって自分のものにしたくなっただけにしか見えない。金持ちの道楽の如く、イライザを淑女に仕立て上げられるかを大佐と賭け、それを知った彼女が怒っても「自分は感謝される側だ」と主張している。そんな彼女が出ていってしまうと、「今度は寂しい」ってなかなかの自分勝手な男だ。そんなほとんど中身の変わっていないヒギンズ教授のところへイライザが帰ってくるというラストも到底理解し難い。

 

やはり本作はイライザの背景も、イライザが淑女になっていく過程も、明らかに物足りず、さらに淑女になる前のオードリー・ヘブパーンに魅力があった分、映画が進むに連れて映画内の魅力は削ぎ落とされ、さらにヒギンズ教授は最初から最後まで自分のことしか考えていないキャラクターである。更にミュージカル映画であるにもかかわらず歌もダンスもほとんど印象に残らなかった。時代錯誤であるという点を差し引いても、これらの点からあまり評価する気になれない作品。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語)

音声特典

├ジーン・アレン(美術監督)、マーニ・ニクソン(オードリー・ヘプバーンの一部の歌唱吹替)、ロバート・A・ハリス(復元チーム)、ジェームズ・C・カッツ(復元チーム)による音声解説

映像特典
├1963年 クランクイン・ディナー
├女王陛下役 ロスチャイルドを指導するジョージ・キューカー監督(静止画と音声)
├撮影の裏側
├ロサンゼルス プレミア試写
├レックス・ハリソン ゴールデン・グローブ賞受賞スピーチ
├アカデミー賞授賞式 ハイライト
├インタビュー集(アンドリュー・ロイド・ウェバー/マーティン・スコセッシ)
├オードリー・ヘプバーンの歌声(“証拠を見せて!”/“ステキじゃない?”)
├スケッチ集
├スチール写真集
├資料集
├ポスター&ロビーカード※レックス・ハリソンヘのインタビューとともに

├1964年公開時 予告編
├1994年リバイバル公開時 予告編

 

<BD>

 

収録内容

├上記DVDと同様

 

<4K Ultra HD+BD>

言語
├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え(TBS版)

特典関係

├上記DVD/BDと同様