【作品#0163】北の零年(2004) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

北の零年

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

2004年の日本映画
上映時間は168分


【あらすじ】

江戸時代末期、淡路島から北海道への移住を命ぜられた稲田家らは新たな生活を始めることになるが…。

【スタッフ】

監督は行定勲

脚本は那須真知子

音楽は大島ミチル

撮影は北信康

 

【キャスト】

 

吉永小百合(小松原志乃)

渡辺謙(小松原英明)

豊川悦司(アリシカ)

香川照之(持田倉蔵)

柳葉敏郎(馬宮伝蔵)

石原さとみ(小松原多恵)

吹越満(長谷慶一郎)

石田ゆり子(馬宮加代)

石橋蓮司(堀部賀兵衛)

 

【感想】

 

「霧の子午線(1996)」でも脚本を担当した那須真知子の脚本を気に入った吉永小百合が、当時の若手監督だった行定勲を監督に指名した意欲作。169分という長尺ながら興行収入27億円というヒットを記録した。

 

大河を映画でやることの難しさを証明した一本。結論から言うと連続ドラマ向きの題材。いくら169分という長い上映時間を使ってしても、エピソードの羅列でドラマの積み上げが感じられない。そもそも稲田家が淡路島を追われることになった事件を冒頭に字幕で説明するだけになっている時点でこの映画は負けが確定したようなもの。映画の冒頭に字幕で長々説明するのもきつい。映画が始まってまだ20分くらいで、吉永小百合が渡辺謙に「あなたはここへ来て変わりましたね」なんて言われても観客はここへ来る前の姿を知らないし。

 

北海道で新たな生活を始めた稲田家らは第二陣を乗せた船が難破するなどの不幸に見舞われ、淡路島から持ってきた稲も北海道の地では育たない。渡辺謙がこの地で育つ稲を求めて札幌まで出向くが一向に帰って来ない。「彼は裏切った」という人たちによって妻の吉永小百合と子供がこの村を出ていかなければならないほどの集中砲火を浴びる。来る予定だった人たちが来ないという不幸を経験した人たちが、渡辺謙一人帰って来ないだけでここまでするだろうか。吉永小百合にこの村から出ていかせるシナリオにしてはなかなか強引である。

 

そして舞台は5年後にジャンプし、そこでの生活が描かれ、なんやかんやあって渡辺謙は政府の役人としてこの地に戻って来る。出ていったきりになった理由は、「札幌で病気になり、そこでは治せないから東京へ運ばれ、その時の恩返しで今の仕事をしているのだ」とか。そもそもどこの誰かも分からない人間が病気になったことでわざわざ札幌から東京へ時間とお金をかけてまで運ぶだろうか。札幌で治せないような病気なら東京までもつのか。何か事情があったことはもちろん観客も察しているが、それを病気の一言で済ますとは。原作のないオリジナル脚本でこの設定はさすがに杜撰だし、脚本家はこの話が明治時代の話であることを理解しているのか。

 

ラストは馬の徴用に来た役人から村を守るため、渡辺謙が出ていってから吉永小百合を敵視していた人たちも味方した睨み合いになる。アシリカが英雄的な行動を取ろうとすると吉永小百合が飛び出して撃たれてしまう。ところが、吉永小百合は撃たれたにもかかわらず、難なく立ち上がって演説し、皆で土地を耕して映画は終わる。撃たれたことがまるでなかったことにされるなんてこれはセガール映画なのか。

 

「北の三部作」すべてに通じることだが、この役を吉永小百合がやることにまず無理がある。還暦前の女優が30代から40代くらいの役を演じる必要性はないし、苦労した女性を演じるには色んな意味できれい過ぎる。例えば、娘と雪の中でうなだれるシーンでは、服や髪には雪が積もっているのに、顔には一片の雪すら積もっていないし、撃たれたシーンでは血すら見せない。渡辺謙に「手がごつごつしてしまった」と見せるシーンくらいだし、その手も吉永小百合のものかすら怪しく見えてくる。

 

長々と何を描きたかったのかもあまり見えて来ず、おそらく「時代に翻弄されつつ力強く生きる女性」というところは想像がつくが、色んな意味で「きれい」な吉永小百合が演じたことで、それ自体が嘘っぽくなってしまったと言わざるを得ない。

 

【関連作品】

 

「北の零年(2004)」…北の三部作の一作目

北のカナリアたち(2012)」…北の三部作の二作目

北の桜守(2018)」…北の三部作の三作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

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├オリジナル(日本語)

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(日本語)

 

<DVD(2枚組/特別限定版)>

言語
├オリジナル(日本語)

映像特典(Disc2)

├吉永小百合が綴る「北の零年」の思い出と北海道ロケ地紹介

├行定勲監督インタビュー

├メインキャストインタビュー

├未使用映像集

├セレモニー集

├プロモーション映像

├フォトギャラリー

├ポスターギャラリー